47 / 57
第二部
あの背中は……
しおりを挟む
「タカ、大丈夫か?」
「はい、動けます」
「だが毒があるはずだ。一刻も早く処置をする必要がある。連絡を取るので待っていてくれ」
「いえ、私もまだ戦えます」
「だめだ。君は大事な仲間だ、今後もいてもらわないと困る」
「――あっ、ありがとうございます」
イリュダの兵士の、自分を犠牲にしての献身。ルークが王太子ということもあるが、この人柄によるのだろう。
そのルークは大蛇に注意しつつ、頭の中でやり取りしているようだ。
「他の兵士達がこちらに来られそうだ。タカ、それまで隠れていて」
「はい」
「ジルベール君。レオン君はニナ王女をお護りしていて無事だ」
「はい。ですがローズ王女は?」
「残念だがまだ見つかっていない」
また背後に大蛇が現れ、口からネバネバした液体を吐き出した。ルークと左右別方向に逃げ、そのまま蛇の後ろに周り込む。蛇はルークに視線を合わせ、再度飛び込まれたがこれも回避した。
やはりルークを狙っている。ヴァランの来襲で、理由は原石の輸出に対する不満だろうか。
今夜すでに何度も能力を使っているためか、炎を出しても蛇を瞬時に焼くまでには至らず、胴体をくねらせ土と草で消炎されてしまう。王太子は攻撃系の異能ではないようで、武器は手にしている短剣のみだ。毒を吐かれるため容易に近付けない。
何回かの攻防の後、やっと会場の方角から足音が聞こえてきた。
「ルーク王太子殿下、お待たせいたしました。状況は?」
五人の兵士だ。
「毒蛇がいてタカが腹を噛まれた。それを操っている人物が近くにいるはずだが探し出せない」
「はい」
隊長らしい兵士は部下に指示を出し、一人の兵士がタカを支えながら戻り、二人が蛇に向かい合った。一人は目を瞑り立っている。
「隊長、中の様子はどうですか?」
ルークが訊く。
「今対応していますが、混乱に乗じて四人の男が剣で人々を切りつけました」
「え、異能者が出たと聞いていましたが……」
「はい、剣自体が能力によって持ち込まれたようで。他の異能者は確認中です」
「――被害状況は?」
「十数名以上の負傷者が出ており、現在治療班が対応しています」
ニナ王女は? レオンが守っているならば大丈夫だと思うが。もし怪我をして、それで正式な護衛任務を与えられていたわけでもないレオンが責められたりでもしたら納得がいかない。
というか敵がヴァランだった場合、自作自演で王女を傷付け、レオンに責任を取らせるために結婚を要求する……というのは俺の考え過ぎか?
二人の兵士と共に大蛇と対峙しているが、なかなかとどめを刺せない。目を閉じて少し離れたところにいた兵士が一点を示しながら叫んだ。
「隊長、あそこの木陰に操っている人物が隠れています」
それを聞いた隊長が瞬時に動き、続けて王太子が後を追った。隊長が剣で木を伐り払うと、一人の男が飛び出しこちらに向かってきた。大蛇の横に立ち、男もまた剣を手に持ち間合いを取っている。男は全身を黒色の服で包み、顔も隠すように帽子を被っているため人相が分からない。男が動くと、隊長と兵士達も男から王太子を遠ざけるように動く。
俺は別に護ってほしいとか思っているわけではない。だが、人徳なのかそう周りに思わせるルークが羨ましい。レオンがいる、それは十分理解しているのに……なぜいつまでも満たされない?
大蛇が顔を上げ、毒を吐いた。その隙に男は一人の兵士に斬りかかる。兵士は後ろに下がって避けたがそれは罠だったようで、回り込まれた蛇の二回目の毒は躱せなかった。みるみるうちに服が溶けていく。
「うぐっ」
「急いで服を脱げ」
毒は兵士の肌にも直接かかっていたらしく、隊長が緊迫した様子で対応している。
「あなたは何が目的でこんなことを?」
ルークが訊いたが、返事はない。
「僕に不満があるのなら直接言えばいい。他の者を傷つける理由にはならない」
「…………」
ルークが次に発した言葉は聞いたことがない言語で、俺には理解ができなかった。
「露見してるなら仕方ない」
男が口を開いた、イリュダ語だ。
「やはりあなた達はヴァラン人、何が理由でこんな真似を?」
「それは訊いても無駄だ。俺も知らないからな。俺は言われた通りにお前さん達を襲っただけだ」
男が言ったことは本当だろう。捕まったらすぐに口を割るような実行役に教えているはずがない。
「そうでしょうね。ではあなたを捉えてから調べることにいたしましょう」
再び会話は止み、辺りには蛇が発する声と遠くの方から聞こえてくる音のみになった。緊迫し重い空気が立ち込めるのを断ち切るかのように、隊長が構えていた剣の先を上に向けた。剣身が明るく光っているように見える。隊長は男がその異能を纏った剣に驚いた一瞬を利用し、 素早く踏み込んだ。逃げられないと察した男は大蛇を動かし自身の盾にする。蛇は胴体をくねらせてながら隊長に襲いかかった。
相打ち――いや、刺し違えだ。剣は蛇の胴体の一部を横に切り裂き、赤い液体がドロドロと流れ出ている。一方の隊長は脚に突き立てられた牙のせいで顔を歪め、抉れた肉からは血が吹き出し、毒の影響か黒く変色し始めているようだ。その隊長にとどめを刺そうと男が回り込んだのを見て、俺とルークが止めにいく。男は勢いそのまま剣で横から薙ぎ払うように、目の前に入り込んだ俺に矛先を変えた。
俺は間一髪それを避けたが、防御体勢を崩し尻もちをついてしまった。次の攻撃が来る前に、残っている力を使い男の体に炎をあて反撃する。
だが……すでに能力を使いすぎていたせいか致命傷を与えらず、再度男が俺に向かってきた。
逃げられない……
胸に剣を突き立てられる。そう覚悟した刹那、いや、事後だったのかも分からない。とにかく気が付いた時には男との間に何かが立ちはだかっており、それに剣が突き刺さったようだ。
そのすぐ後に二回の金属音が辺り一帯に響き渡り、「ぐああーっ」という、聞くだけでこちらも苦痛を感じるような叫び声が充満した。
地面には朽ちた物体となった大蛇と、操っていた男が足を抑えながら蹲っているのが見えた。
『何か』だと思ったものは外套を着た人間で、この人物が敵を倒したのだと理解した。
「ルーク王太子、この後の処理は頼みます。私は一度離れますが、また戻ってきますので 」
声の主はフェリーだ。ルークも慇懃に礼を言った後、集まってきた兵士達に指示を出した。
立ち上がろうとしたが使い過ぎた能力のせいで足が上がらない。フェリーに手を差し伸べられ、申し訳ない気持ちで手を握り返したら、「そのままで大丈夫だ」と優しく言われた。フェリーのもう一方の手には先ほどの、背中を向けた人物の手。
あの人は――と思った瞬間、体が今までにない感覚に陥った。違う……前にも同じ経験をした気がする。
気が付くと俺は室内にいて、ソファーに横になっていた。初めての部屋だが装飾品などの色使いは懐かしさがある。
「え、ここはグレンロシェですか?」
「軍事宮内にある執務室ですよ」
その声は……
「フェリー大隊長。俺は……」
「ここに戻った時、異能の使用過多で気を失ったみたいだがもう大丈夫だろう」
「すみません」
「ジルベール、君が寝ていたのは十分にも満たないから問題ない。私にも良くあることだ」
――そうだった。
「えっと、グレンロシェに瞬間移動したのはあなたの異能ですか?」
「やっと思い出してくれたかな?」
どういう意味だ? いや、確かに以前にもこんなことがあったような……いつだったか……あ。
「昔レオンと西の森で迷子になった時に……」
「そう、懐かしいな。あんなに可愛かった君達がこんなに大きくなって一緒に任務をするなんて、月日が経つのは早いものだ」
「フェリー大隊長。ローズ王女はご無事でいらっしゃるんでしょうか?」
あの人物のことを訊きたいはずなのに違う言葉が口をついたが、国王軍隊員としては正解だ。
「ああ。ローズ王女がルーク王太子と共に大蛇に襲われた後、私達は庭園の方に逃げてから異能でグレンロシェに戻った。今は王宮で休まれているよ」
「フェリー大隊長も怪我をされたと……」
「応急処置をしてもらったから問題ない。ローズ王女を国王夫妻の元に送り届けて説明をしていたので、あの場に戻るのが遅くなりすまなかったね」
来襲はあったが王女が無事ならば、護衛任務は一応果たしたということだろうか。
「これからまた事後処理のために私はイリュダに戻るが……敵はやはりヴァランだろう?」
「はい、ルーク王太子とあの男がそう言っていました」
フェリーは品の良い雰囲気に似つかわしくない、大きな溜息をついた。
「ニナ王女は計画を知っていて協力をしたのかはまだ分からないが、おそらくレオンを引き留めておく役割を担っていた」
「はい。レオンも無事なのでしょうか?」
「無事だ、ニナ王女を守りながら会場内に現れた敵と戦い捉えた。現在エディ小隊長以下他の隊員達と共に対応に当たっている」
一人だけでなく他の者も一緒に連れていくならば高度で稀少な異能――ましてや外国間の長距離を何度もだ。移動にどれほどの体力を必要とするのかは分からないが、フェリーは疲れを微塵も感じさせていない。
「君は良くやってくれた、後は他の隊員達で間に合うからもう戻らなくていい」
「いえ、俺もまだ動けます」
「ジルベール、君を助けた方は腹を刺されたため現在治癒隊のところにいる。君のことをとても心配していたから、顔を出してほしい」
「ですが……」
それでも食いさがろうとした俺を、フェリーは親戚のおじのような顔で言った。
「正直に言うと……私も人を伴っての移動は疲れるので、残ってもらえるとありがたい」
「――っ、ありがとうございます」
フェリーが消えた後、俺はあの人物がいる治癒室へと向かった。軍事宮内での訓練などで負傷した隊員の治療を行うために、治癒担当隊の執務室の隣に併設されている。近付くにつれて足が重く感じるのは、元々の疲れのせいだと自分に言い聞かせながら廊下を歩いた。
「はい、動けます」
「だが毒があるはずだ。一刻も早く処置をする必要がある。連絡を取るので待っていてくれ」
「いえ、私もまだ戦えます」
「だめだ。君は大事な仲間だ、今後もいてもらわないと困る」
「――あっ、ありがとうございます」
イリュダの兵士の、自分を犠牲にしての献身。ルークが王太子ということもあるが、この人柄によるのだろう。
そのルークは大蛇に注意しつつ、頭の中でやり取りしているようだ。
「他の兵士達がこちらに来られそうだ。タカ、それまで隠れていて」
「はい」
「ジルベール君。レオン君はニナ王女をお護りしていて無事だ」
「はい。ですがローズ王女は?」
「残念だがまだ見つかっていない」
また背後に大蛇が現れ、口からネバネバした液体を吐き出した。ルークと左右別方向に逃げ、そのまま蛇の後ろに周り込む。蛇はルークに視線を合わせ、再度飛び込まれたがこれも回避した。
やはりルークを狙っている。ヴァランの来襲で、理由は原石の輸出に対する不満だろうか。
今夜すでに何度も能力を使っているためか、炎を出しても蛇を瞬時に焼くまでには至らず、胴体をくねらせ土と草で消炎されてしまう。王太子は攻撃系の異能ではないようで、武器は手にしている短剣のみだ。毒を吐かれるため容易に近付けない。
何回かの攻防の後、やっと会場の方角から足音が聞こえてきた。
「ルーク王太子殿下、お待たせいたしました。状況は?」
五人の兵士だ。
「毒蛇がいてタカが腹を噛まれた。それを操っている人物が近くにいるはずだが探し出せない」
「はい」
隊長らしい兵士は部下に指示を出し、一人の兵士がタカを支えながら戻り、二人が蛇に向かい合った。一人は目を瞑り立っている。
「隊長、中の様子はどうですか?」
ルークが訊く。
「今対応していますが、混乱に乗じて四人の男が剣で人々を切りつけました」
「え、異能者が出たと聞いていましたが……」
「はい、剣自体が能力によって持ち込まれたようで。他の異能者は確認中です」
「――被害状況は?」
「十数名以上の負傷者が出ており、現在治療班が対応しています」
ニナ王女は? レオンが守っているならば大丈夫だと思うが。もし怪我をして、それで正式な護衛任務を与えられていたわけでもないレオンが責められたりでもしたら納得がいかない。
というか敵がヴァランだった場合、自作自演で王女を傷付け、レオンに責任を取らせるために結婚を要求する……というのは俺の考え過ぎか?
二人の兵士と共に大蛇と対峙しているが、なかなかとどめを刺せない。目を閉じて少し離れたところにいた兵士が一点を示しながら叫んだ。
「隊長、あそこの木陰に操っている人物が隠れています」
それを聞いた隊長が瞬時に動き、続けて王太子が後を追った。隊長が剣で木を伐り払うと、一人の男が飛び出しこちらに向かってきた。大蛇の横に立ち、男もまた剣を手に持ち間合いを取っている。男は全身を黒色の服で包み、顔も隠すように帽子を被っているため人相が分からない。男が動くと、隊長と兵士達も男から王太子を遠ざけるように動く。
俺は別に護ってほしいとか思っているわけではない。だが、人徳なのかそう周りに思わせるルークが羨ましい。レオンがいる、それは十分理解しているのに……なぜいつまでも満たされない?
大蛇が顔を上げ、毒を吐いた。その隙に男は一人の兵士に斬りかかる。兵士は後ろに下がって避けたがそれは罠だったようで、回り込まれた蛇の二回目の毒は躱せなかった。みるみるうちに服が溶けていく。
「うぐっ」
「急いで服を脱げ」
毒は兵士の肌にも直接かかっていたらしく、隊長が緊迫した様子で対応している。
「あなたは何が目的でこんなことを?」
ルークが訊いたが、返事はない。
「僕に不満があるのなら直接言えばいい。他の者を傷つける理由にはならない」
「…………」
ルークが次に発した言葉は聞いたことがない言語で、俺には理解ができなかった。
「露見してるなら仕方ない」
男が口を開いた、イリュダ語だ。
「やはりあなた達はヴァラン人、何が理由でこんな真似を?」
「それは訊いても無駄だ。俺も知らないからな。俺は言われた通りにお前さん達を襲っただけだ」
男が言ったことは本当だろう。捕まったらすぐに口を割るような実行役に教えているはずがない。
「そうでしょうね。ではあなたを捉えてから調べることにいたしましょう」
再び会話は止み、辺りには蛇が発する声と遠くの方から聞こえてくる音のみになった。緊迫し重い空気が立ち込めるのを断ち切るかのように、隊長が構えていた剣の先を上に向けた。剣身が明るく光っているように見える。隊長は男がその異能を纏った剣に驚いた一瞬を利用し、 素早く踏み込んだ。逃げられないと察した男は大蛇を動かし自身の盾にする。蛇は胴体をくねらせてながら隊長に襲いかかった。
相打ち――いや、刺し違えだ。剣は蛇の胴体の一部を横に切り裂き、赤い液体がドロドロと流れ出ている。一方の隊長は脚に突き立てられた牙のせいで顔を歪め、抉れた肉からは血が吹き出し、毒の影響か黒く変色し始めているようだ。その隊長にとどめを刺そうと男が回り込んだのを見て、俺とルークが止めにいく。男は勢いそのまま剣で横から薙ぎ払うように、目の前に入り込んだ俺に矛先を変えた。
俺は間一髪それを避けたが、防御体勢を崩し尻もちをついてしまった。次の攻撃が来る前に、残っている力を使い男の体に炎をあて反撃する。
だが……すでに能力を使いすぎていたせいか致命傷を与えらず、再度男が俺に向かってきた。
逃げられない……
胸に剣を突き立てられる。そう覚悟した刹那、いや、事後だったのかも分からない。とにかく気が付いた時には男との間に何かが立ちはだかっており、それに剣が突き刺さったようだ。
そのすぐ後に二回の金属音が辺り一帯に響き渡り、「ぐああーっ」という、聞くだけでこちらも苦痛を感じるような叫び声が充満した。
地面には朽ちた物体となった大蛇と、操っていた男が足を抑えながら蹲っているのが見えた。
『何か』だと思ったものは外套を着た人間で、この人物が敵を倒したのだと理解した。
「ルーク王太子、この後の処理は頼みます。私は一度離れますが、また戻ってきますので 」
声の主はフェリーだ。ルークも慇懃に礼を言った後、集まってきた兵士達に指示を出した。
立ち上がろうとしたが使い過ぎた能力のせいで足が上がらない。フェリーに手を差し伸べられ、申し訳ない気持ちで手を握り返したら、「そのままで大丈夫だ」と優しく言われた。フェリーのもう一方の手には先ほどの、背中を向けた人物の手。
あの人は――と思った瞬間、体が今までにない感覚に陥った。違う……前にも同じ経験をした気がする。
気が付くと俺は室内にいて、ソファーに横になっていた。初めての部屋だが装飾品などの色使いは懐かしさがある。
「え、ここはグレンロシェですか?」
「軍事宮内にある執務室ですよ」
その声は……
「フェリー大隊長。俺は……」
「ここに戻った時、異能の使用過多で気を失ったみたいだがもう大丈夫だろう」
「すみません」
「ジルベール、君が寝ていたのは十分にも満たないから問題ない。私にも良くあることだ」
――そうだった。
「えっと、グレンロシェに瞬間移動したのはあなたの異能ですか?」
「やっと思い出してくれたかな?」
どういう意味だ? いや、確かに以前にもこんなことがあったような……いつだったか……あ。
「昔レオンと西の森で迷子になった時に……」
「そう、懐かしいな。あんなに可愛かった君達がこんなに大きくなって一緒に任務をするなんて、月日が経つのは早いものだ」
「フェリー大隊長。ローズ王女はご無事でいらっしゃるんでしょうか?」
あの人物のことを訊きたいはずなのに違う言葉が口をついたが、国王軍隊員としては正解だ。
「ああ。ローズ王女がルーク王太子と共に大蛇に襲われた後、私達は庭園の方に逃げてから異能でグレンロシェに戻った。今は王宮で休まれているよ」
「フェリー大隊長も怪我をされたと……」
「応急処置をしてもらったから問題ない。ローズ王女を国王夫妻の元に送り届けて説明をしていたので、あの場に戻るのが遅くなりすまなかったね」
来襲はあったが王女が無事ならば、護衛任務は一応果たしたということだろうか。
「これからまた事後処理のために私はイリュダに戻るが……敵はやはりヴァランだろう?」
「はい、ルーク王太子とあの男がそう言っていました」
フェリーは品の良い雰囲気に似つかわしくない、大きな溜息をついた。
「ニナ王女は計画を知っていて協力をしたのかはまだ分からないが、おそらくレオンを引き留めておく役割を担っていた」
「はい。レオンも無事なのでしょうか?」
「無事だ、ニナ王女を守りながら会場内に現れた敵と戦い捉えた。現在エディ小隊長以下他の隊員達と共に対応に当たっている」
一人だけでなく他の者も一緒に連れていくならば高度で稀少な異能――ましてや外国間の長距離を何度もだ。移動にどれほどの体力を必要とするのかは分からないが、フェリーは疲れを微塵も感じさせていない。
「君は良くやってくれた、後は他の隊員達で間に合うからもう戻らなくていい」
「いえ、俺もまだ動けます」
「ジルベール、君を助けた方は腹を刺されたため現在治癒隊のところにいる。君のことをとても心配していたから、顔を出してほしい」
「ですが……」
それでも食いさがろうとした俺を、フェリーは親戚のおじのような顔で言った。
「正直に言うと……私も人を伴っての移動は疲れるので、残ってもらえるとありがたい」
「――っ、ありがとうございます」
フェリーが消えた後、俺はあの人物がいる治癒室へと向かった。軍事宮内での訓練などで負傷した隊員の治療を行うために、治癒担当隊の執務室の隣に併設されている。近付くにつれて足が重く感じるのは、元々の疲れのせいだと自分に言い聞かせながら廊下を歩いた。
54
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる
水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」
人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。
ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。
「俺が、貴方の剣となり盾となる」
国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。
シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。
白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです
まんまる
BL
フレア王国の第3王子シルティ(18歳.Ω)は、王宮騎士団の団長を務める、キーファ侯爵家現当主のアリウス(29歳.α)に、ずっと片想いをしている。
そんなシルティは、Ωの成人王族の務めとして、自分は隣国のαの王族に輿入れするのだろうと、人生を半ば諦めていた。
だが、ある日突然、父である国王から、アリウスとの婚姻を勧められる。
二つ返事でアリウスとの婚姻を受けたシルティだったが、何もできない自分の事を、アリウスは迷惑に思っていないだろうかと心配になる。
─が、そんなシルティの心配をよそに、アリウスは天にも登る気持ち(無表情)で、いそいそと婚姻の準備を進めていた。
受けを好きすぎて、発情期にしか触れる事ができない攻めと、発情期の記憶が一切ない受けのお話です。
拗らせ両片想いの大人の恋(?)
オメガバースの設定をお借りしています。ぼんやり設定です。
Rシーンは※つけます。
1話1,000~2,000字程度です。
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
難攻不落の異名を持つ乙女ゲーム攻略対象騎士が選んだのは、モブ医者転生者の俺でした。
一火
BL
――聖具は汝に託された。覚醒せよ、選ばれし者
その言葉と共に、俺の前世の記憶が蘇る。
あれ……これもしかして「転生したら乙女ゲームの中でした」ってやつじゃないか?
よりにもよって、モブの町医者に。
「早く治癒魔法を施してくれ」
目の前にいるのは……「ゲームのバグ」とまで呼ばれた、攻略不可能の聖騎士イーサン!?
町医者に転生したものの、魔法の使いをすっかり忘れてしまった俺。
何故か隣にあった現代日本の医療器具を「これだ」と手に取る。
「すみません、今日は魔法が売り切れの為、物理で処置しますねー」
「……は!?」
何を隠そう、俺は前世でも医者だったんだ。物理治療なら任せてくれ。
これが後に、一世一代の大恋愛をする2人の出会いだった。
ひょんな事から、身体を重ねることになったイーサンとアオ。
イーサンにはヒロインと愛する結末があると分かっていながらもアオは、与えられる快楽と彼の人柄に惹かれていく。
「イーサンは僕のものなんだ。モブは在るべき姿に戻れよ」
そして現れる、ゲームの主人公。
――……どうして主人公が男なんだ? 女子高生のはずだろう。
ゲーム内に存在し得ないものが次々と現れる謎現象、そして事件。この世界は、本当にあの乙女ゲームの世界なのだろうか?
……謎が謎を呼ぶ、物語の結末は。
――「義務で抱くのは、もう止めてくれ……」
――結局俺は……どう足掻いてもモブでしかない。
2人の愛は、どうなってしまうのか。
これは不器用な初恋同士と、彼らの愉快な仲間たちが織り成す、いちばん純粋な恋の物語。
【第二章開始】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する
とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。
「隣国以外でお願いします!」
死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。
彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。
いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。
転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。
小説家になろう様にも掲載しております。
※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる