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第33話 のどぼとけ
しおりを挟む久しぶりのスタジオだ。今日は銀髪に銀縁眼鏡のロバートも来ている。まずはスティーブやマイケル他、エンジニアたちを交えて打ち合わせから始めた。
「ラッシュは見てもらったかな。随分カタチになってただろう?」
昨日の朝、データが送られてきた。揉めてたはずなのに、完成形に近くて驚いた。それもワクワクするような映像ばかりで、僕らは昨夜興奮して大変だったんだ。
「良かったよ。あそこまで出来てるとは思ってなかったし」
佐山が高揚感そのままで応えた。他の連中も何度も首肯し同意を示している。
「こっからは音楽班の腕の見せ所だ。納期は3週間後ってなってるけど、行けるかな?」
「大丈夫だ。俺の中でかなりアイディアが溢れてきた。実際、何曲か昨日のうちにスコア書いたよ」
モバイルをさっと出し、メンバーに見せる。
「フォルダに入れてますので確認してください」
と僕が続ける。佐山は今時のミュージシャンとしては多分珍しいアナログな作曲家だ。楽譜に必ず落とす。
でも、今のテクノロジーは凄いね。モバイルは佐山が起こしたスコアを音にしてしまうから、すぐに耳で確認できるんだ。当然、生のギターのようにはいかないけど。
「リンー! 会いたかったぜーっ」
「先週会ったじゃないか」
大げさなフリで大股で向かってきたのは言うまでもなくジェフ。こいつ、旅行から帰ってきたその日に、何の用事もないのにウチに来たんだ。すぐ追い返されたけど。その佐山が僕の前に立ちはだかった。もう見飽きた絵面だよ。
「そこでストップ。倫の半径1メートル以内に立ち入るな」
「んだよっ。オレは危険物か!」
「わかってんじゃないか」
「なっ!」
「二人ともそこまでにしろよ。面倒だな、もう」
午後からは演奏メンバーが全員集まって、佐山が書いた曲を合わせる。アイディアを出したりアレンジを検討したりと、しばらくはこういった地道な作業が続く。ジェフも当然メンバーだけど、相変わらずの入りで呆れるよ。
でもみんな楽しそうだ。一流のアーティストばかりだから、佐山のイメージをすぐに表現できる。
ジェフと作ったメインテーマも少しの時間でぐっと完成度が上がる。音には素人の僕だけど、そうと感じられるから凄いよ。
それにしても、あいつのリーダーぶりが様になってきた。音に関しては妥協しないし、とにかくカッコいいや。また惚れ直しちゃうな。
「お疲れ。タオルとドリンク」
休憩時間、僕は声にハートマークを付けて奴に渡す。気が付いたかな?
「むむ、またそんな誘う顔してっ」
「わっ、なにすんだよ」
あいつは渡したタオルを僕に被せる。驚いて取ると、うまそうにドリンクを飲む佐山が。
男らしい喉ぼとけを上下に揺らして飲み干していく。僕はこの姿も好きなんだよ。思わず見惚れてしまった。
「ん? いや。倫のあんな可愛い顔、連中……特にあの野郎には見せたくないからさ」
「見てやしないよ。馬鹿だな」
僕だって、おまえの喉仏、誰にも見せたくない。なんて言っても、わかんないだろうな。
「そうかなあ。ああ、でも久しぶりだから緊張したよ。らしくないけどさ」
「確かにらしくないな。でもそんなふうには見えなかったよ。凄く、良かった。やっぱりおまえはスタジオかステージにいるのが一番カッコいいな」
「惚れた?」
僕からタオルをもう一度受け取り、噴き出た汗をぬぐう。なんだよ。またそんなわかりきったことを聞いてさ。
「さあな」
「おいっ」
真剣な表情で僕に訴えかける。おまえは僕のこと『可愛い』ってよく言うけど、僕から見れば、おまえの方が何倍も可愛いと思うよ、そういうとこ。
僕はあいつのタオルを今度は取り上げ、筋肉美をさらす体を拭いてやる。
「惚れてるよ。ずっと。おまえが思っている以上に」
あいつは鼻の穴を広げ、わかりやすく顔をにやけさせた。
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