【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

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第29話 シンデレラ

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 追い込まれたら強い。というか、さすがに集中力は健在だった。みっちり2時間、集中して勉強できた。
 良かった。せっかく手に入れた時間だ。有意義に使わせてもらわないとな。

「あ、まだいらしたんですか。失礼しました」

 僕がパソコンをケースに入れてたら、ふいにドアが開いた。二宮さんだ。

「大丈夫です。今日は二時限目からなので……お掃除ですか?」

 暇人ですみません。

「はい。よろしいでしょうか」
「もちろん。よろしくお願いします」

 人に自分の部屋を掃除してもらうなんて、なんと贅沢なっ! 
 そういえば、晄矢さんが言ってたな。ベッドのシーツは毎日替えにくるからダブルベッドで寝てないとだめなんだって。確かに毎日ピタッとしたシーツが気持ちよかった……。

「あ、手伝います」

 僕は二宮さんの後について寝室に行き、ベッドのシーツに手をかけた。

「滅相もございません!」
「いいんです。僕、バイトでやってたし」

 夏休みのバイトは掛け持ちをするんだけど、ホテルの掃除は短時間で掛け持ちには最高だった。もちろん、ホテルでの賄いもありがたくて。

「あ、ほんとに手早いですね」

 僕は昔取った杵柄よろしく、さっとシーツを取り換える。こういうのは得意なんだ。バイトは時間との闘いだからね。

「あの……相模原様はどこで晄矢様と出会われたんですか?」

 え……。得意げに技を披露していたら、突然ぶっこまれてしまった。僕は瞬時固まる。

 ――――落ち着け。ちゃんとシナリオはある。

 東都大出の父親、祐矢氏の代わりに晄矢さんが特別講師として招かれた講座、その世話係が僕だった。そこで色々話しているうちに親しくなった。というのが晄矢さんから言われたシナリオだ。

 特別講師で大学が弁護士さんを呼ぶのはよくあることで、晄矢さんも何回か来てる。
 ただ、僕は一度も受講したことがない。そういうのは3年生からが主体なんだ。ちなみに晄矢さんは東都大出身じゃない。もう一つグレード高いとこ。

 でもって、司法試験受かったのが三年生だったから、米国のロースクールに行ってるんだよね。で、そこの州の弁護士資格も持ってる。お兄さんが嫉妬するのも理解できるよ……。

「そうなんですかぁ。でも、なんだか取ってつけたような……あ、ごめんなさい」

 すらすらと説明したら、そんな感想がっ。いや、そりゃ取ってつけたんだから正しいけど。

「いやあ、意外に出会いなんてそんなものじゃないかな」

 ボロが出ないように気を付けないと。晄矢さんも、祐矢氏のスパイがいるかもなんて言ってたしなあ(みんな味方じゃないのかよと突っ込みたかったが)。

「いいですねえ。男版シンデレラですよね。私も玉の輿したい」

 おっと、これはどう返したら正解なんだろうか……。

「晄矢様、ここにダブルベッドを置かれたとき、本当に嬉しそうでした」
「え、そうなんですか」

 悩んでたら、思いも寄らぬことを言われた。

「相模原様が来られる1週間前、晄矢様は祐矢様と大喧嘩されて……それなら俺は恋人と一緒に住む! とか言われて」

 1週間前……? それはまだ僕と出会う前の話。いや、僕は元々ベッドはダブルを使ってたんだと思ってた。確か、榊教授のメールもそんな前じゃなかったはず……。

 ――――そんな見切り発車だったんだ……確かに言われた翌日には、ここに引っ越してきたんだからそうだろうけど……。

 焦ってたんだろうな……。勢いで言ったことを実現させようとしていた晄矢さん。選択の余地はなかったのかも。わかってたことだけど、複雑な気持ちになった。



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