【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

文字の大きさ
42 / 111

第41話 無茶ぶり

しおりを挟む


 慣れない場所だけど、僕は間違ってもホストではない。こういう場所は初めてだし、酒を作るのも未経験だとお伝えすると、『益々可愛いわね』、とか言われた。
 それについ先日酒で失敗したから、飲む方も気を付けなきゃ。

「こういう場所、私の立場なんかお構いなしなのよね。まあ、晄矢さんが目の保養だけど。えっと相模原君か。私の相手してね」
「はい。頑張ります」

 ここは大学生らしくいけばいいだろう。大人びる必要はない。
 女性のトップって気が強くて努力家っていう勝手なイメージを抱いてたけど、この方、黛さんはお酒のせいかもしれないけど、明るくて話し上手だ(でも気は強そうかな、やっぱり)。そして美人。
 大学の話や城南家での暮らしを興味津々で聞いてくれた(もちろん晄矢さんと同室なんて言わない)。



「彼はね。今時流行らないけど苦学生でね」

 突然、祐矢氏の声が聞こえてきた。どうやら向こうの集団で僕の話をしてるらしい。

「すごーい。偉いのね」

 とは、和服のお姉さまのお言葉。みんなが僕の顔を見ようと体を乗り出す。けど、正面に座ってる晄矢さんの顔は般若みたいになってきた。

「ああ。大学でも優秀なんだよ。いずれはうちのトップを走るんじゃないかと期待してる」

 な、なんでそんなに持ち上げるんだ。嫌な予感しかしない。

「そうなんだ。城南先生にあんなふうに言われるなんて凄いじゃない」
「いえ……買いかぶり過ぎです」

 僕は少し小さくなってつぶやいた。

「そうだ。藤堂さん、先ほど議論してたこと彼にもお尋ねになってはいかがですか? 若い人の意見も貴重です」

 なに……何言ってんだこの人。藤堂さんは丸藤証券の取締役社長だ。

「藤堂さん、彼はまだ学生ですので、余興にもなりません。父さん、酒席とは言え、ふざけ過ぎです」

 やんわりと拒否する晄矢さん。ああ、なるほどね。無茶ぶりして僕に恥をかかせようとしてるのか……。僕は別に構わないけど、晄矢さんに迷惑かけたくないな。
 藤堂社長の隣に座ってる陽菜さんも憮然とした表情で祐矢氏を睨んでる。

「酒席だからいいだろう。おまえは黙ってなさい。どうですか? 藤堂さん」
「ああ、是非に。うちの人材募集の件なんだ。大学生になら聞いておきたい。出来れば一般論じゃないのがありがたいな」

 こいつはグルか。まあ、そんなことはないのだろうけど、本気で聞きたいのかも。藤堂さんは今の学生気質や証券会社に集まってくる就活生に不満があるのだと言った。

「涼、答えなくていい」

 小声で晄矢さんが僕に言う。でも、そういうわけにはいかないや。完全にみんな、僕の答えを待っている。僕はさっき記憶したこの会社の情報を取り出した。

「あの、個人的な考え方でよろしければ……」
「おお、なになに?」

 ホステスのお姉さんまで身を乗り出してる。でも、晄矢さんの顔に泥を塗るようなことはしたくない。

「御社の求人ページを拝見したのですが……」

 僕はその時感じた印象を率直に述べた。忖度をするにはしたけど、学生の意見が欲しいならあまりへりくだる必要はない。それと、酒席だからこそのネタもちょっと挟む。

「尤も、僕は証券や株の世界とはかすりもしないところにいたので……。想像力が足りません。僕の友人には、既に株や投資を始めてる者もいて、彼らには興味深い試みと思います」

 あまり突出しないよう、気を付けて話した。こんな貧乏学生の話だ。彼らにとっては無関係層の意見だろう。

 ――――あれ、でもどうしたんだろう。反応が……。

 一瞬だったかもしれない。でも、僕にとっては永遠の長き時間のようにも感じた。キラキラ笑顔で僕を見てるホステスさん以外は、みんな何も言わない。
 目の前の晄矢さんすら、口を半開きにして唖然としてる。なんだよっ! なんか僕はまずいことを言ったのか!?


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。

黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。 ※このお話だけでも読める内容ですが、 同じくアルファポリスさんで公開しております 「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」 と合わせて読んでいただけると、 10倍くらい楽しんでいただけると思います。 同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。 魔法と剣で戦う世界のお話。 幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、 魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、 家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。 魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、 「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、 二人で剣の特訓を始めたが、 その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・ これは病気か!? 持病があっても騎士団に入団できるのか!? と不安になるラルフ。 ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!? ツッコミどころの多い攻めと、 謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの 異世界ラブコメBLです。 健全な全年齢です。笑 マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。 よろしくお願いします!

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

処理中です...