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番外編 城南家の裏事情
第5話 城南輝矢の裏事情
しおりを挟む城南家を菜々子とともに飛び出してから、早くも三ヶ月が経った。
長いようで短い日々。菜々子、祥一郎君との親子水入らずの暮らしは正直なんの不満もない。こんなに暖かくて穏やかな生活があったのかと驚くほどだ。
仕事もこちらの地元の弁護士事務所で働かせてもらい困ることもない。実際、城南のような企業向け弁護士より、私はこういう地域密着型弁護士になりたかったのだ。
けど……城南家や城南法律事務所のことが全く気にならないわけではない。つい先日も、どうして弁護士が変わったんだと以前のクライアントから不満の電話がかかってきた。
後任の弁護士は私の元同僚、一生懸命頑張ってくれてるだろうと理解はしているが、いかんせん、私のクライアントは癖が強いのばかりで……。
だが、晄矢に任せた分は問題なさそうだ。さすが我が弟。例の国選のやつもあいつなりのアプローチでそれには感心してるほどだ。
その晄矢だが……。私のせいでとんでもない迷惑をかけてしまっているようだ。いや、私が逃げたことで、親父が晄矢に跡継ぎを強要することは予想できた。問題はそのあとだ。
――――晄矢が城南家を継ぐのを嫌がってたのは知ってたが……まさかこんな手に出るとは。
あいつがゲイだったとは、私は知らなかった。陽菜は知ってたのかな。あいつのことだから、きっと気付いていただろうが、鈍感な私には寝耳に水だ。しかも相手があの『彼』なんて。
『兄貴、俺は親父と全面戦争するつもりだからな。兄貴は親父と休戦しろ』
なんて勝手なことを言いやがって。あ、勝手は私も同じか。
大体、私よりも晄矢や陽菜の方が数倍も優秀なんだ。なんで親父は私に固執するのか。割と、私が出ていったことで晄矢に跡を継がせる理由ができたんじゃないか、なんて思っていたのだが。
そう簡単にはいかないか。晄矢にも思うところがあるんだろう……。
一番不安なのは、晄矢の本心と相手の青年『相模原涼』君の気持ちだ。彼もまた、私に群がって来た財産目当ての女性と違うとは限らない。それに、晄矢は本当にゲイなのか?
どうにも気になった私は上京の折り、こっそり城南法律事務所の前で張っていた。
――――あ、来た。
事務所でバイトをしていると聞いていたが、今日は二人で帰宅するんだろうか。
涼君本人を見るのは初めてだが、テレビの向こう側にいても全く驚かないほどの美形だ。顔つきは引き締まって賢そうでもある。実際苦学生だと言ってたから……。
――――いや、しかしなんだあの、晄矢の表情はっ!
涼君の可愛らしさにも驚いたが、何よりもインパクトがあったのは、晄矢自身だった。
見たこともないほどの優しい表情と彼を気遣うふるまい。もうメロメロなのが手に取ってわかるようだ。
私は愕然として二人を見送った。あんな晄矢は我が弟ながら見たことがないっ! いや、遠い昔に見たことはあったか……そうだとしたらこれは重症だ。
――――でも、涼君の方はどうだったろう。
思い返しても、彼は少し遠慮しているように感じた。こう、なんだろう。私の周りに集まっていたイケイケグイグイの女性たちとは全く違う。
グイグイは晄矢の方で、涼君はそれをまともに受けず、一歩引いているような感覚だ。
――――おいおい、これは一体、どういうことだ? まさかと思うが晄矢の独り相撲? じゃあ、財産目当てでもなく、彼は何のために城南家に入り込んだんだ?
家も肩書も捨てた私に、気に病む権利はないのかもしれない。が、やっぱり自分の責任でもあるし、気になり過ぎる!
私は意を決し、涼君本人にこの疑問をぶつけることにした。さあ、この思い切り自分勝手な行為は、我々の未来にとって吉とでるか、それとも……。
つづく
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