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第3話
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「おいおい、あからさまに嫌そうな顔をするな」
「あら、分かってるなら、来ないで頂戴」
ルークはにやにやと口角を笑ませながら、ルルに近づいた。ユクシオンとアリアがそんなルークに対して丁寧に礼をするのに、ルルは「ふん」と鼻を鳴らして、そっぽを向く。
「こら、ルル」
ユクシオンの叱咤に対しても、ルルはそっぽを向いたままだった。
「公爵。こいつと俺は幼馴染なんだ。怒ることはない」
豪快に笑って見せるルークに、ユクシオン公爵とアリアは視線を伏せて「ありがたいことです」と恐縮した風だった。
ルークはユシスと母を同じくした実の兄弟。それなのに2人は全く似ていない。ルークが国王に似ているのに対して、ユシスは王妃に似ている。ルークは黒髪に特徴的なまるで雲母を散らしたかのような鋼の瞳を持つが、ユシスは王妃に似て、黒髪に青い瞳だ。どちらもそれぞれの美しさがあって、国中の貴族の娘達の恋慕の視線はほとんどこの2人に向いていると言っても過言ではない。
「お前が怒っているのはあれだな」
そう言って、ルークが見たのは、ユシスとアラナだった。
「そうよ。それがなによ」
「まあ、まあ、そんなに怒るな。アラナ姫がユシスにご執心なのはお前も噂で知っていたことだろう」
「知っているけど。今日は私とユシスの婚約を発表する日なのよ?邪魔しにきたとしか思えないタイミングに来るのね」
「まあ、あれはどうみても邪魔しに来てるだろうな」
「ふん」
「そう怒るな。ユシスのことだ。あれは絶対にアラナの好意に気づいていない」
「そう思う?」
「ああ。あいつは恋愛事においては、めっきり鈍感になるからな」
「ユシスのこと、悪く言わないで頂戴」
「なに、あいつは完璧すぎる。鈍感なところが1つでもあった方がいい」
確かに、ユシスは全てにおいて優秀だが、何故か恋愛事に関しては鈍感だった。ルルだって、ユシスに好意を伝え続けることに心血を注いでいた時期がある。一生懸命に想いを告げ、それが伝わらないを繰り返し、そのたびに横合いからルークの爆笑する声が聞こえてくる。
そんな日々を送って来たことを、ルルは遠い目をしながら思い出していた。
やっとのことで、想いが伝わったというのに。
目の前で、アラナがユシスに胸を押し付けたり、べったりしているのを見て、不快感が募らないわけがない。
(ユシスの馬鹿。アラナ姫が胸を押し当てているのに、どうして嫌な顔しないのよ)
ユシスは別に鼻を伸ばしているわけでも、ましてアラナに良い顔をしているわけでもなかったが。それでもアラナが何かするたびに、何の反応も見せないユシスにルルの心は焦がれた。
それはどうやらアラナも同じだったようで。
唐突に、アラナはユシスの手を引っ張って、広間の東側の内庭へと出て行ってしまった。
(もう!今日は私とユシスの婚約発表の日なのに!)
「おお、おお、積極的だなあ、姫君も。じゃ、俺は王の元に戻る。……ああ、それから、婚約発表が終わったらアラナ姫に改めてご挨拶するんだぞ。一応あんな態度でも隣国からのご使者様だ。せっかくウィリル国の公用語教えてやったんだから、しっかり『挨拶』してやれ。そうすれば少しはスカッとするだろ」
「言われなくたって、そうさせてもらうわよ」
ルークは快活に笑って、その場を去った。
「あら、分かってるなら、来ないで頂戴」
ルークはにやにやと口角を笑ませながら、ルルに近づいた。ユクシオンとアリアがそんなルークに対して丁寧に礼をするのに、ルルは「ふん」と鼻を鳴らして、そっぽを向く。
「こら、ルル」
ユクシオンの叱咤に対しても、ルルはそっぽを向いたままだった。
「公爵。こいつと俺は幼馴染なんだ。怒ることはない」
豪快に笑って見せるルークに、ユクシオン公爵とアリアは視線を伏せて「ありがたいことです」と恐縮した風だった。
ルークはユシスと母を同じくした実の兄弟。それなのに2人は全く似ていない。ルークが国王に似ているのに対して、ユシスは王妃に似ている。ルークは黒髪に特徴的なまるで雲母を散らしたかのような鋼の瞳を持つが、ユシスは王妃に似て、黒髪に青い瞳だ。どちらもそれぞれの美しさがあって、国中の貴族の娘達の恋慕の視線はほとんどこの2人に向いていると言っても過言ではない。
「お前が怒っているのはあれだな」
そう言って、ルークが見たのは、ユシスとアラナだった。
「そうよ。それがなによ」
「まあ、まあ、そんなに怒るな。アラナ姫がユシスにご執心なのはお前も噂で知っていたことだろう」
「知っているけど。今日は私とユシスの婚約を発表する日なのよ?邪魔しにきたとしか思えないタイミングに来るのね」
「まあ、あれはどうみても邪魔しに来てるだろうな」
「ふん」
「そう怒るな。ユシスのことだ。あれは絶対にアラナの好意に気づいていない」
「そう思う?」
「ああ。あいつは恋愛事においては、めっきり鈍感になるからな」
「ユシスのこと、悪く言わないで頂戴」
「なに、あいつは完璧すぎる。鈍感なところが1つでもあった方がいい」
確かに、ユシスは全てにおいて優秀だが、何故か恋愛事に関しては鈍感だった。ルルだって、ユシスに好意を伝え続けることに心血を注いでいた時期がある。一生懸命に想いを告げ、それが伝わらないを繰り返し、そのたびに横合いからルークの爆笑する声が聞こえてくる。
そんな日々を送って来たことを、ルルは遠い目をしながら思い出していた。
やっとのことで、想いが伝わったというのに。
目の前で、アラナがユシスに胸を押し付けたり、べったりしているのを見て、不快感が募らないわけがない。
(ユシスの馬鹿。アラナ姫が胸を押し当てているのに、どうして嫌な顔しないのよ)
ユシスは別に鼻を伸ばしているわけでも、ましてアラナに良い顔をしているわけでもなかったが。それでもアラナが何かするたびに、何の反応も見せないユシスにルルの心は焦がれた。
それはどうやらアラナも同じだったようで。
唐突に、アラナはユシスの手を引っ張って、広間の東側の内庭へと出て行ってしまった。
(もう!今日は私とユシスの婚約発表の日なのに!)
「おお、おお、積極的だなあ、姫君も。じゃ、俺は王の元に戻る。……ああ、それから、婚約発表が終わったらアラナ姫に改めてご挨拶するんだぞ。一応あんな態度でも隣国からのご使者様だ。せっかくウィリル国の公用語教えてやったんだから、しっかり『挨拶』してやれ。そうすれば少しはスカッとするだろ」
「言われなくたって、そうさせてもらうわよ」
ルークは快活に笑って、その場を去った。
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こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
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