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父の言い訳①
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そんなつもりはなかったんだ。
私はただ……家庭内を平和に保つため。そして家の繁栄のために。
伯爵家の次期当主ではとても頭の上がらない良家の娘だった妻の心を労わってきただけ。
妻とは、はじめから断れない結婚だった。
伯爵家の長男として生まれた私は、早いうちに妻を娶らねばならないことは分かっていた。
それでもあの頃の私は、まだしばらくは自由であることを望んでいたのだ。
将来の伴侶となる人を自分で選びたかったから。
妻となる人は、この先の多くの時間、共に過ごすことになる。
貴族は政略結婚が基本だとして、個人の相性というものは無視出来ない。
夫婦の相性悪く、数年後に離婚となる貴族の夫婦は、意外にも多くいた。
それで両家の関係が悪化して、結婚前より大変なことになっている家もあるくらいだ。
ならばと出来るだけより良く付き合えそうな相手を、私は自分の意思で選びたかった。
両親はそんな私の気持ちを理解して、相手としてどうかという話を持って来てくれることはあっても、婚約自体を無理強いすることはなく。
幸いなことに当時の私も次期伯爵家当主だったから、当主夫人になりたい令嬢は多くいて、将来の相手に事欠くことがない。
何も焦る必要はなく、たとえ同世代の令嬢たちの婚約がすべて調ってしまっても、それなら対象となる令嬢の年齢を少しずつ下げていけばいいだけ。
政略結婚において、歳の差はさほどの問題にならない。
そんな風にして、次期伯爵として社交界によく顔を出し、様々な家の令嬢たちと出会うよう過ごしていたある日のこと。
公爵家から声を掛けられてしまった。
気乗りはしないものの、公爵家からの話は無下には出来ない。
顔合わせをして、無理そうだったときにはどう断ればいいか。両親とは事前によくよく話し合っていた。
それで迎えた顔合わせの当日。
厳しいことで有名なあの女公爵の娘とは思えない、コロコロと表情を変えよく笑う令嬢に、私はすっかり毒気を抜かれ、気を許してしまったのである。
つまり会話が弾んだ。
相手は是非に婚約したいと言ってきた。
高位貴族家の令嬢なんて迎えてしまっては、色々と口出しされて面倒なことになるのでは?と警戒し悩む私に、両親が助言をくれた。
『夫婦の立ち位置というものは、惚れた方が常に下になる』
そうか。すっかり惚れさせて、こちらの意に沿わぬ振舞いをしないよう躾ければ良かったのか。
両親の説明に納得した私は、令嬢との仲を深めることにした。
何より公爵家との繋がりを手離すのは惜しかったのだ。
そうして結んだ婚約。
最初の頃は私の方に打算が多くあったかもしれないが。
意外にも私たちの仲は良好で、いい関係を築けていたように思う。
怖れていた公爵家からの干渉もなく、いつの間にか彼女のことは、好ましい人として映っていた。
彼女とならば、この先も楽しく生きていけそうだと、希望まで抱けていたんだ。
それも妻の言動がおかしくなる、あの日までのこと──。
私はただ……家庭内を平和に保つため。そして家の繁栄のために。
伯爵家の次期当主ではとても頭の上がらない良家の娘だった妻の心を労わってきただけ。
妻とは、はじめから断れない結婚だった。
伯爵家の長男として生まれた私は、早いうちに妻を娶らねばならないことは分かっていた。
それでもあの頃の私は、まだしばらくは自由であることを望んでいたのだ。
将来の伴侶となる人を自分で選びたかったから。
妻となる人は、この先の多くの時間、共に過ごすことになる。
貴族は政略結婚が基本だとして、個人の相性というものは無視出来ない。
夫婦の相性悪く、数年後に離婚となる貴族の夫婦は、意外にも多くいた。
それで両家の関係が悪化して、結婚前より大変なことになっている家もあるくらいだ。
ならばと出来るだけより良く付き合えそうな相手を、私は自分の意思で選びたかった。
両親はそんな私の気持ちを理解して、相手としてどうかという話を持って来てくれることはあっても、婚約自体を無理強いすることはなく。
幸いなことに当時の私も次期伯爵家当主だったから、当主夫人になりたい令嬢は多くいて、将来の相手に事欠くことがない。
何も焦る必要はなく、たとえ同世代の令嬢たちの婚約がすべて調ってしまっても、それなら対象となる令嬢の年齢を少しずつ下げていけばいいだけ。
政略結婚において、歳の差はさほどの問題にならない。
そんな風にして、次期伯爵として社交界によく顔を出し、様々な家の令嬢たちと出会うよう過ごしていたある日のこと。
公爵家から声を掛けられてしまった。
気乗りはしないものの、公爵家からの話は無下には出来ない。
顔合わせをして、無理そうだったときにはどう断ればいいか。両親とは事前によくよく話し合っていた。
それで迎えた顔合わせの当日。
厳しいことで有名なあの女公爵の娘とは思えない、コロコロと表情を変えよく笑う令嬢に、私はすっかり毒気を抜かれ、気を許してしまったのである。
つまり会話が弾んだ。
相手は是非に婚約したいと言ってきた。
高位貴族家の令嬢なんて迎えてしまっては、色々と口出しされて面倒なことになるのでは?と警戒し悩む私に、両親が助言をくれた。
『夫婦の立ち位置というものは、惚れた方が常に下になる』
そうか。すっかり惚れさせて、こちらの意に沿わぬ振舞いをしないよう躾ければ良かったのか。
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怖れていた公爵家からの干渉もなく、いつの間にか彼女のことは、好ましい人として映っていた。
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それも妻の言動がおかしくなる、あの日までのこと──。
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