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第9章 理想の夫婦
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「そんなことないよ。嬉しいもん。」
慌てて弁解した、その隙を――
「なら、仕方ない。」
ふいに、ぎゅっと抱きしめられた。律さんの腕が、思ったよりも強く私を包む。
「律さんっ……玄関……」
「今さら気にする?もう夫婦でしょ。」
耳元に落ちてきた低い声に、心臓が跳ねた。
「千尋が素直に喜ばないから、スキンシップで確認するしかないでしょ?」
「……そうやってすぐ甘える。」
「甘えてるんじゃない。愛を伝えてるだけ。」
くすぐったいような抱擁の中で、私は小さくため息をついた。
──でも、心の中は笑ってる。
だって、こんなふうに好きって毎日言ってくれる人なんて、そうそういない。
「わかった。帰ってきたら、ちゃんと照れるから。今は会社に行かせて。」
「ほんとに?」
「ほんとに。」
するとようやく、律さんは腕を緩めた。
「じゃあ、いってらっしゃい。俺の綺麗な奥さん。」
「はいはい。……行ってきます。」
ドアの向こうに出た途端、背中がぽっと熱くなったのは――
律さんの声が、また追いかけてきたから。
「千尋、愛してるよー!」
私は、笑いながらドアを閉めた。まったく、ほんとに。
──でも、この甘さが毎日続いても、たぶん私は、飽きたりしない。
それからというもの、律さんはすっかり機嫌をよくして、毎朝のハグが日課になった。
「律さん、近いよ。……っていうか、いつも以上にくっついてない?」
「うん。毎日更新中。」
腕の中で苦笑する私に、律さんは満足げに頷いた。
まるで、出勤前の恋人同士みたいな時間。
でも私たちは、もう夫婦。
それなのに、まるで恋を始めたばかりのふたりみたい。
私はというと、この“朝のハグタイム”を確保するために、5分早く起きるようになった。
たかが5分。されど5分。
このたった5分のために、髪型もメイクも時短で工夫する。
──それくらい、律さんとの朝のハグは、濃厚だった。
「……ああ、千尋、可愛い。」
「ん、ありがと。」
そして律さんが、私の頬にチュッとキスをする。
「でも……毎朝こんなに可愛いと、困るなぁ。」
「なにが?」
「千尋のこと、監禁したくなる。」
「…………えっ?」
一瞬、笑いかけた口元が固まった。
「冗談だよ?……たぶん。」
「た、たぶん?」
耳元に落とされた囁きが、背中をゾクッと走る。
「でも……本音言うとさ。千尋がどこにも行かず、ずっと俺の隣にいたらいいのにって、毎朝思うんだよね。」
律さんの腕が、さらにぎゅっと強くなった。
「だってこんなに好きなのに、あと数分で離れなきゃいけないなんて……理不尽じゃない?」
甘ったるい声でそんなことを言われたら、もう抵抗できない。
「……あと5分だけ、延長していい?」
「だーめ。遅刻しちゃうでしょ。」
慌てて弁解した、その隙を――
「なら、仕方ない。」
ふいに、ぎゅっと抱きしめられた。律さんの腕が、思ったよりも強く私を包む。
「律さんっ……玄関……」
「今さら気にする?もう夫婦でしょ。」
耳元に落ちてきた低い声に、心臓が跳ねた。
「千尋が素直に喜ばないから、スキンシップで確認するしかないでしょ?」
「……そうやってすぐ甘える。」
「甘えてるんじゃない。愛を伝えてるだけ。」
くすぐったいような抱擁の中で、私は小さくため息をついた。
──でも、心の中は笑ってる。
だって、こんなふうに好きって毎日言ってくれる人なんて、そうそういない。
「わかった。帰ってきたら、ちゃんと照れるから。今は会社に行かせて。」
「ほんとに?」
「ほんとに。」
するとようやく、律さんは腕を緩めた。
「じゃあ、いってらっしゃい。俺の綺麗な奥さん。」
「はいはい。……行ってきます。」
ドアの向こうに出た途端、背中がぽっと熱くなったのは――
律さんの声が、また追いかけてきたから。
「千尋、愛してるよー!」
私は、笑いながらドアを閉めた。まったく、ほんとに。
──でも、この甘さが毎日続いても、たぶん私は、飽きたりしない。
それからというもの、律さんはすっかり機嫌をよくして、毎朝のハグが日課になった。
「律さん、近いよ。……っていうか、いつも以上にくっついてない?」
「うん。毎日更新中。」
腕の中で苦笑する私に、律さんは満足げに頷いた。
まるで、出勤前の恋人同士みたいな時間。
でも私たちは、もう夫婦。
それなのに、まるで恋を始めたばかりのふたりみたい。
私はというと、この“朝のハグタイム”を確保するために、5分早く起きるようになった。
たかが5分。されど5分。
このたった5分のために、髪型もメイクも時短で工夫する。
──それくらい、律さんとの朝のハグは、濃厚だった。
「……ああ、千尋、可愛い。」
「ん、ありがと。」
そして律さんが、私の頬にチュッとキスをする。
「でも……毎朝こんなに可愛いと、困るなぁ。」
「なにが?」
「千尋のこと、監禁したくなる。」
「…………えっ?」
一瞬、笑いかけた口元が固まった。
「冗談だよ?……たぶん。」
「た、たぶん?」
耳元に落とされた囁きが、背中をゾクッと走る。
「でも……本音言うとさ。千尋がどこにも行かず、ずっと俺の隣にいたらいいのにって、毎朝思うんだよね。」
律さんの腕が、さらにぎゅっと強くなった。
「だってこんなに好きなのに、あと数分で離れなきゃいけないなんて……理不尽じゃない?」
甘ったるい声でそんなことを言われたら、もう抵抗できない。
「……あと5分だけ、延長していい?」
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