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第4章 仮面夫婦説
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「政略結婚だった。でも、俺は彼女が好きでたまらなかったんだ。……ただ、彼女は──他の人を、愛していた。」
言葉の端が震えていた。
律さんは、腕を額に乗せて、その顔を隠した。
「ずっと……片想いだったよ。それでも諦めきれなくて、プロポーズした。俺の人生全部を懸けて……でも、断られたんだ。『律の愛には応えられない』って。」
静かに、律さんの頬を伝って涙が流れ落ちた。
その痛みが、私の胸にもひどく刺さった。
私はそっと、律さんの胸に顔を埋め、腕をまわして抱きしめた。
「……律さんだけじゃない。私も、そうだった。一方通行の想いに、何度も心を削られて……それでも誰かを好きになることを、やめられなかった。」
私の声も震えていた。
けれど、不思議と苦しくはなかった。
「似た者同士ね、私たち。」
律さんが、優しく笑った気がした。
抱き合ったまま、二人は静かに目を閉じた。
誰にも邪魔されない、心の奥の傷を見せ合った夜。
それは、過去の恋をやっと手放して、“今の愛”に目を向けるための、大切な夜だった。
翌朝、目が覚めた瞬間、私は思わず隣を見るのをためらった。
昨日のことを思い出すと、顔が熱くなってしまう。
律さんも同じように、天井を見つめたまま身動きひとつしない。
静かな空気の中、ぽつりと律さんが呟いた。
「……ごめん。俺、千尋のことちゃんと考えずに、何回も……」
その言葉に、私もベッドのシーツを握りしめたまま、顔を赤くする。
でも、不思議と嫌な気持ちは一つもなかった。
「いいの。……おかげで、ほら、再確認できたし。」
「再確認?」
律さんが不安そうに私の方を振り返る。
私は枕に顔を押しつけるようにして、声を絞り出した。
「……愛してるって、再確認……できたでしょ?」
その瞬間、律さんが背中を向けて悶え出した。
「ちょ、ちょっと待って、千尋。可愛すぎる……無理……」
「な、なによ!」
思わず枕を投げると、律さんはうずくまりながら笑った。
「普段はクールなのに、そんなこと言うから……俺、どれだけ我慢してると思ってるの……?」
律さんの背中が小さく震えている。
私もつられて笑ってしまった。
「……でも、本当にそう思ってる。昨夜、心も身体も、全部繋がってたって感じたから。」
その言葉に、私の胸がじんわりと熱くなった。
「私も。律さんのこと、もっともっと好きになっちゃった。」
ふたりして顔を隠しながら、それでもどこかしあわせで。
きっと今日からまた、何気ない日々が、もっと愛おしくなる。
そんな予感がしていた。
そして、律さんの電話が鳴った。
「ああ、お袋。え?今から?」
律さんが驚くとそこで電話が切れた。
「どうしたの?」
私が律さんに聞くと、彼は呆気に取られていた。
「おふくろが今から家に来るって。」
「ええっ⁉」
そう言えば、私。律さんの両親に会わずに入籍してしまった。
言葉の端が震えていた。
律さんは、腕を額に乗せて、その顔を隠した。
「ずっと……片想いだったよ。それでも諦めきれなくて、プロポーズした。俺の人生全部を懸けて……でも、断られたんだ。『律の愛には応えられない』って。」
静かに、律さんの頬を伝って涙が流れ落ちた。
その痛みが、私の胸にもひどく刺さった。
私はそっと、律さんの胸に顔を埋め、腕をまわして抱きしめた。
「……律さんだけじゃない。私も、そうだった。一方通行の想いに、何度も心を削られて……それでも誰かを好きになることを、やめられなかった。」
私の声も震えていた。
けれど、不思議と苦しくはなかった。
「似た者同士ね、私たち。」
律さんが、優しく笑った気がした。
抱き合ったまま、二人は静かに目を閉じた。
誰にも邪魔されない、心の奥の傷を見せ合った夜。
それは、過去の恋をやっと手放して、“今の愛”に目を向けるための、大切な夜だった。
翌朝、目が覚めた瞬間、私は思わず隣を見るのをためらった。
昨日のことを思い出すと、顔が熱くなってしまう。
律さんも同じように、天井を見つめたまま身動きひとつしない。
静かな空気の中、ぽつりと律さんが呟いた。
「……ごめん。俺、千尋のことちゃんと考えずに、何回も……」
その言葉に、私もベッドのシーツを握りしめたまま、顔を赤くする。
でも、不思議と嫌な気持ちは一つもなかった。
「いいの。……おかげで、ほら、再確認できたし。」
「再確認?」
律さんが不安そうに私の方を振り返る。
私は枕に顔を押しつけるようにして、声を絞り出した。
「……愛してるって、再確認……できたでしょ?」
その瞬間、律さんが背中を向けて悶え出した。
「ちょ、ちょっと待って、千尋。可愛すぎる……無理……」
「な、なによ!」
思わず枕を投げると、律さんはうずくまりながら笑った。
「普段はクールなのに、そんなこと言うから……俺、どれだけ我慢してると思ってるの……?」
律さんの背中が小さく震えている。
私もつられて笑ってしまった。
「……でも、本当にそう思ってる。昨夜、心も身体も、全部繋がってたって感じたから。」
その言葉に、私の胸がじんわりと熱くなった。
「私も。律さんのこと、もっともっと好きになっちゃった。」
ふたりして顔を隠しながら、それでもどこかしあわせで。
きっと今日からまた、何気ない日々が、もっと愛おしくなる。
そんな予感がしていた。
そして、律さんの電話が鳴った。
「ああ、お袋。え?今から?」
律さんが驚くとそこで電話が切れた。
「どうしたの?」
私が律さんに聞くと、彼は呆気に取られていた。
「おふくろが今から家に来るって。」
「ええっ⁉」
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