46 / 86
第5章 復縁の要請
⑧
しおりを挟む
「俺の人生をかけて、ずっと──幸せにしたい人だ。」
その一言に、全身の力が抜けていく。
泣きそうなのに、どうしてか笑ってしまいそうで。
胸がぎゅっと締めつけられて、たまらなかった。
すると律さんは、私の頬に何度も、何度も、キスを落とした。
右も、左も、額にも、鼻先にも。
まるで愛しさが溢れて止まらないように。
「ああ……どうしたら……千尋への愛を、もっと……知ってもらえるんだろう……」
律さんのその声は、喉の奥で震えていた。
次の瞬間、唇が重なった。
「んん……っ!」
熱い。
深く、貪るようなキス。
舌が絡み、息が奪われる。
こんなにも激しいキス、初めてだった。
「も……う……ダメェ……」
そう呟くと、律さんが囁く。
「まだだよ……」
熱っぽい吐息が、唇の端をなぞる。
そしてまた、角度を変えて重ねられる口づけ。
ねっとりと、執拗に。
離れてはまた吸い寄せられる。
「千尋に……分からせる。どれだけ、愛してるか。」
その言葉が、キスの合間に紛れ込んでくる。
唇は一度も休まずに、私を味わい尽くすように這ってくる。
「ああ……っ、律さん……っ」
もはや言葉にならない。
ただ、感じるだけ。
彼の愛が、深く、何層にも折り重なって注がれてくる。
「止まらない……千尋……もう、どうしても止まらないよ……」
そして、律さんの涙が止まっていることに気づいた。
代わりに、瞳の奥にはまっすぐな想いと、確かな愛が灯っていた。
キスは終わらない。
まるで、私という存在を、確かめるように──
律さんのすべてで、私を包み込んでいた。
「う……ん……」
ふわりとした柔らかな朝の光の中、私は律さんの腕の中で目を覚ました。
穏やかに眠る彼の横顔は、いつになく優しくて──まるで少年のよう。
(可愛い……)
昨夜のことを思い出すと、胸の奥がじんわりと熱くなる。
一生かけて、彼を幸せにしたい。
いや──私が、幸せにされているのかもしれない。
「……千尋、起きた?」
律さんの低くかすれた声。寝起きのその声が耳に心地いい。
「うん、おはよう……」
ベッドの中で顔を寄せ合う──その瞬間。
──ピンポーン。
「……えっ?」
突如、鳴り響いたインターホンの音に二人とも硬直する。
「……誰?」
律さんは軽く欠伸をしながらベッドを出て、モニターを覗き込む。
「律? いる?」
モニター越しに響いた女性の声に、律さんがサッとこちらを振り返った。
「まずい……おふくろだ。」
「ええっ⁉」
ベッドの中で飛び起きた私は、瞬時に事態を理解する。
(こんな寝起き姿、見られたらヤバすぎる……!)
「と、とにかく服着る!顔洗う!」
「俺、ちょっと時間稼いでくる!」
律さんは寝癖のついたままの髪で玄関に向かい、私は猛ダッシュで支度を始めた。
その一言に、全身の力が抜けていく。
泣きそうなのに、どうしてか笑ってしまいそうで。
胸がぎゅっと締めつけられて、たまらなかった。
すると律さんは、私の頬に何度も、何度も、キスを落とした。
右も、左も、額にも、鼻先にも。
まるで愛しさが溢れて止まらないように。
「ああ……どうしたら……千尋への愛を、もっと……知ってもらえるんだろう……」
律さんのその声は、喉の奥で震えていた。
次の瞬間、唇が重なった。
「んん……っ!」
熱い。
深く、貪るようなキス。
舌が絡み、息が奪われる。
こんなにも激しいキス、初めてだった。
「も……う……ダメェ……」
そう呟くと、律さんが囁く。
「まだだよ……」
熱っぽい吐息が、唇の端をなぞる。
そしてまた、角度を変えて重ねられる口づけ。
ねっとりと、執拗に。
離れてはまた吸い寄せられる。
「千尋に……分からせる。どれだけ、愛してるか。」
その言葉が、キスの合間に紛れ込んでくる。
唇は一度も休まずに、私を味わい尽くすように這ってくる。
「ああ……っ、律さん……っ」
もはや言葉にならない。
ただ、感じるだけ。
彼の愛が、深く、何層にも折り重なって注がれてくる。
「止まらない……千尋……もう、どうしても止まらないよ……」
そして、律さんの涙が止まっていることに気づいた。
代わりに、瞳の奥にはまっすぐな想いと、確かな愛が灯っていた。
キスは終わらない。
まるで、私という存在を、確かめるように──
律さんのすべてで、私を包み込んでいた。
「う……ん……」
ふわりとした柔らかな朝の光の中、私は律さんの腕の中で目を覚ました。
穏やかに眠る彼の横顔は、いつになく優しくて──まるで少年のよう。
(可愛い……)
昨夜のことを思い出すと、胸の奥がじんわりと熱くなる。
一生かけて、彼を幸せにしたい。
いや──私が、幸せにされているのかもしれない。
「……千尋、起きた?」
律さんの低くかすれた声。寝起きのその声が耳に心地いい。
「うん、おはよう……」
ベッドの中で顔を寄せ合う──その瞬間。
──ピンポーン。
「……えっ?」
突如、鳴り響いたインターホンの音に二人とも硬直する。
「……誰?」
律さんは軽く欠伸をしながらベッドを出て、モニターを覗き込む。
「律? いる?」
モニター越しに響いた女性の声に、律さんがサッとこちらを振り返った。
「まずい……おふくろだ。」
「ええっ⁉」
ベッドの中で飛び起きた私は、瞬時に事態を理解する。
(こんな寝起き姿、見られたらヤバすぎる……!)
「と、とにかく服着る!顔洗う!」
「俺、ちょっと時間稼いでくる!」
律さんは寝癖のついたままの髪で玄関に向かい、私は猛ダッシュで支度を始めた。
1
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
龍の腕に咲く華
沙夜
恋愛
どうして私ばかり、いつも変な人に絡まれるんだろう。
そんな毎日から抜け出したくて貼った、たった一枚のタトゥーシール。それが、本物の獣を呼び寄せてしまった。
彼の名前は、檜山湊。極道の若頭。
恐怖から始まったのは、200万円の借金のカタとして課せられた「添い寝」という奇妙な契約。
支配的なのに、時折見せる不器用な優しさ。恐怖と安らぎの間で揺れ動く心。これはただの気まぐれか、それとも――。
一度は逃げ出したはずの豪華な鳥籠へ、なぜ私は再び戻ろうとするのか。
偽りの強さを捨てた少女が、自らの意志で愛に生きる覚悟を決めるまでの、危険で甘いラブストーリー。
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
私の赤い糸はもう見えない
沙夜
恋愛
私には、人の「好き」という感情が“糸”として見える。
けれど、その力は祝福ではなかった。気まぐれに生まれたり消えたりする糸は、人の心の不確かさを見せつける呪いにも似ていた。
人を信じることを諦めた大学生活。そんな私の前に現れた、数えきれないほどの糸を纏う人気者の彼。彼と私を繋いだ一本の糸は、確かに「本物」に見えたのに……私はその糸を、自ら手放してしまう。
もう一度巡り会った時、私にはもう、赤い糸は見えなかった。
“確証”がない世界で、私は初めて、自分の心で恋をする。
社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーンにも投稿しています》
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる