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第三章 偽りの関係? ①
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それからというもの、私には週に一度──カイル殿下との面会の時間が与えられた。
本来なら、婚約した男性が女性の屋敷に通うのが常識。
でも、相手は第2皇子。
多忙な公務を抱えるお立場で、私の屋敷に通うなど現実的ではない。
だから、私が王宮へ通うことになった。
それは決して軽いことではない。
一歩足を踏み入れれば、そこはもう“政”の世界。
王族の婚約者としての自覚が求められる場所。
それでも、私は毎週、きちんと礼を整えて宮殿を訪れた。
そして扉を開けると、必ず彼が笑顔で迎えてくれる。
「──ああ、セレナ。」
その声が、いつも私の緊張をふっと解きほぐしてくれる。
「ご多忙の中、お時間をいただき恐縮です。」
そう丁寧に頭を下げると、カイル殿下は困ったように笑いながら、そっと手を差し伸べてくれる。
「君の顔を見ると、疲れが吹き飛ぶんだ。俺のために来てくれて、ありがとう」
そう言ってくれるたびに、胸の奥があたたかくなる。
これは復讐のための婚約だった。
でも──
この人の言葉や仕草に、私は少しずつ、心を持っていかれそうになっていた。
「実は、殿下……」
お茶を口にしながら、私はそっと話を切り出した。
「先日──ユリウス様が、私の屋敷を訪ねてきたんです。」
「……ユリウスが⁉」
カイル殿下の眉が、ぴくりと動いた。
「ええ。どうやら、私が殿下と婚約したって噂を聞いて、慌てたみたいで。“よりを戻そう”だなんて、今さら言ってきたんですよ」
カイル殿下は驚いたように目を見開き、すぐに吹き出した。
「はははっ……アイツ、ほんとに言ったの? よりを戻そう、って?」
「はい。でも、ちゃんと言ってやりました。」
私はふふっと笑いながら、カップを置いた。
「“私を誰だと思っているの? 将来、王妃になるかもしれないのよ?”って」
その瞬間、カイル殿下は大きく笑い声を上げた。
「いいね、それ。最高の“ぎゃふん”だな!」
「ええ、悔しそうな顔で、何も言い返せずに帰って行きましたよ」
そう言いながら、私自身も自然と笑みがこぼれる。
復讐のために始まったはずのこの婚約。
だけど今は、それ以上に──この人の隣で笑っている時間が、何よりも心地よかった。
「だから……もう、婚約の“振り”はいいですよ?」
思わず口からこぼれた言葉だった。
最初は復讐のための“偽りの婚約”だったのだから、これで充分。
もう、ここで終わらせてもいいんじゃないか……そんな気持ちさえあった。
けれど──
「いや、それじゃダメだよ。」
カイル殿下は、肩の力を抜いたような笑みで言った。
「本当に結婚しなかったら、あいつ──ユリウスの思うつぼだ。」
「……えっ?」
まるで冗談のように聞こえたけれど、その瞳はどこまでも真剣だった。
本来なら、婚約した男性が女性の屋敷に通うのが常識。
でも、相手は第2皇子。
多忙な公務を抱えるお立場で、私の屋敷に通うなど現実的ではない。
だから、私が王宮へ通うことになった。
それは決して軽いことではない。
一歩足を踏み入れれば、そこはもう“政”の世界。
王族の婚約者としての自覚が求められる場所。
それでも、私は毎週、きちんと礼を整えて宮殿を訪れた。
そして扉を開けると、必ず彼が笑顔で迎えてくれる。
「──ああ、セレナ。」
その声が、いつも私の緊張をふっと解きほぐしてくれる。
「ご多忙の中、お時間をいただき恐縮です。」
そう丁寧に頭を下げると、カイル殿下は困ったように笑いながら、そっと手を差し伸べてくれる。
「君の顔を見ると、疲れが吹き飛ぶんだ。俺のために来てくれて、ありがとう」
そう言ってくれるたびに、胸の奥があたたかくなる。
これは復讐のための婚約だった。
でも──
この人の言葉や仕草に、私は少しずつ、心を持っていかれそうになっていた。
「実は、殿下……」
お茶を口にしながら、私はそっと話を切り出した。
「先日──ユリウス様が、私の屋敷を訪ねてきたんです。」
「……ユリウスが⁉」
カイル殿下の眉が、ぴくりと動いた。
「ええ。どうやら、私が殿下と婚約したって噂を聞いて、慌てたみたいで。“よりを戻そう”だなんて、今さら言ってきたんですよ」
カイル殿下は驚いたように目を見開き、すぐに吹き出した。
「はははっ……アイツ、ほんとに言ったの? よりを戻そう、って?」
「はい。でも、ちゃんと言ってやりました。」
私はふふっと笑いながら、カップを置いた。
「“私を誰だと思っているの? 将来、王妃になるかもしれないのよ?”って」
その瞬間、カイル殿下は大きく笑い声を上げた。
「いいね、それ。最高の“ぎゃふん”だな!」
「ええ、悔しそうな顔で、何も言い返せずに帰って行きましたよ」
そう言いながら、私自身も自然と笑みがこぼれる。
復讐のために始まったはずのこの婚約。
だけど今は、それ以上に──この人の隣で笑っている時間が、何よりも心地よかった。
「だから……もう、婚約の“振り”はいいですよ?」
思わず口からこぼれた言葉だった。
最初は復讐のための“偽りの婚約”だったのだから、これで充分。
もう、ここで終わらせてもいいんじゃないか……そんな気持ちさえあった。
けれど──
「いや、それじゃダメだよ。」
カイル殿下は、肩の力を抜いたような笑みで言った。
「本当に結婚しなかったら、あいつ──ユリウスの思うつぼだ。」
「……えっ?」
まるで冗談のように聞こえたけれど、その瞳はどこまでも真剣だった。
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