「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒

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第二章 復讐のための婚約 ⑤

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「……よかろう。そなたがそこまでの覚悟を持っているのなら、王家の名に恥じぬ妃となるだろう。我が王家に、ふさわしき婚約と認めよう」

その瞬間、カイル殿下がそっと微笑んだ気がして、私は胸の奥が熱くなるのを感じた。

それは、婚約発表から数日後のことだった。

突然、あの人──ユリウス・フェルグレンが私の屋敷を訪ねてきた。

「セレナ! 本当に……本当にカイル殿下と婚約したというのか!」

扉を開けた瞬間に飛び込んできたその声音には、焦りと……明らかな怒りが混じっていた。

──ああ。この顔が、見たかった。

私を見下し、捨てた男の、こんなにも動揺した表情。

「ええ、本当です」

私は微笑すら浮かべながら、静かに答えた。

「ま、まさか……君が……君が王族に……?」

ユリウスは何か信じられないものを見るように私を見つめ、ふらりと歩み寄る。

そして、手を伸ばしてきた。

「本当は、カイル殿下と婚約なんてしたくなかったんだろ?俺への当てつけなんだろ?だったら……よりを戻そう。な?」

……なにを言っているんだろう、この人は。

私は、ゆっくりと手を振り払った。

「お帰りください、ユリウス様。」

「……っ!」

「私を、誰だと思っているんですか?」

そう言って、私は背筋を伸ばしたまま彼を見下ろすように告げた。

「恐れ多くも、私は──将来、王妃になるかもしれない身ですのよ?」

ユリウスの顔が、真っ赤に染まり、唇をキュッと噛みしめる。

そのまま、何も言えずに踵を返すと、荒々しく扉を開けて去っていった。

──その背中は、もう二度と戻ってこない。

でも、それでいい。

だって、私はもう“地味な令嬢”なんかじゃないのだから。
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