「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒

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第二章 復讐のための婚約 ④

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国王は穏やかな声音で私たちを迎えてくださった。

そのひと声だけで、空気が一変する。

「カイルから聞いている。彼が、セレナ嬢を妃にしたいと──そう申しておる。」

父の肩が小さく震える。

そして、絞り出すような声で答えた。

「こ、国王陛下……このような……身に余る光栄にして、突然の事態となりましたこと……何とお詫び申し上げてよいやら……」

その言葉に、国王はふっと目を細め、ゆっくりと首を振った。

「よい。謝ることなどない。これは、本人が決めたことだ。」

国王は重みのある声でそう告げると、私へと視線を向けた。

「しかも──以前に大臣を務めたそなたの娘ならば、王族への礼式も、忠臣としての心得もあるであろう。」

私は、思わず息をのんだ。

それは……すなわち、私が王族の一員として迎えられることを、国王が認めたという意味。

復讐のため。ユリウスを見返すため。

──それだけのはずだったのに。

今、目の前で語られる言葉が、私の背にとてつもない重みとなってのしかかる。

「それと──もう一つ、伝えておかねばならぬことがある。」

国王の声音が、さらに低く、厳粛さを帯びた。

「カイルと結婚するということは、単に皇族と縁続きになるというだけではない。それは、将来的に“王妃”となる可能性を意味する。」

「……!」

思わず、口元を手で覆った。

「妃としての責務、立場、そして……王家を背負う覚悟があるかどうか。いずれその問いが、そなたに向けられることになるだろう。」

その瞬間、自分の中にあった“軽い復讐”の炎が、ひどくちっぽけなものに思えた。

これは──
ただの感情では進めない未来。

私は、どこまで覚悟できているのだろうか。

それでも……
カイル殿下のあの手を、もう一度握ることができるのなら──

「私は……」

静かに口を開きながら、私はまっすぐにカイル殿下の目を見つめた。

その瞳は、何も言わず、ただ私の言葉を待ってくれていた。

「一度、婚約破棄された……価値のない公爵令嬢です」

その場の空気が、ぴたりと張り詰めた。

国王陛下の眉が、わずかにぴくりと動くのが見えた。

「ですが──」

私は背筋を伸ばし、はっきりと言葉を継いだ。

「カイル殿下の婚姻のお申し出により、私は失っていた誇りを……取り戻すことができました。感謝しても、しきれません。」

そう。

この道を選んだ瞬間から、私はもう戻れない。

たとえ最初は“復讐”だったとしても──

私は、自分の意思で、この手を取ったのだ。

「私は、カイル殿下のご意思を尊重し、その意に添いたいと、心から願っております。」

そう告げた私の言葉に、重く厳しかった空気が、わずかに緩んだ。

国王はゆっくりと、しかし確かに──うん、と頷いた。
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