「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒

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第八章 やっと気づいた気持ち ①

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そして、ついにその時が来た。

穢土は東方に留まらず、徐々に王都の手前まで迫りつつあった。

「このままでは王都までやられてしまうだろう。」
重く響いた王の声に、廷臣たちはざわめいた。

「聖女ティアナ・エルフェリア。お前に王命を授ける。第2皇子カイル・ヴェルナーグを引き連れ、直ちに浄化の旅に出よ。」

「はっ、謹んでお受けいたします。」

凛とした声でティアナは跪き、頭を垂れた。

こうして、ついにカイルは、正式に王命を受けて出立することとなった。

出発の日。
朝霧がまだ晴れぬ王都の門前には、兵と聖女の一行が整列していた。

そして、その中心には――聖剣を腰に携えたカイルが立っていた。

私は、彼のもとへ歩み寄った。

心が波打っていた。けれど、泣いてはいけない。今は、彼を誇るべき瞬間だから。

「……ご無事のご帰還を、心より願っております。」

その言葉に、カイルは穏やかに微笑んだ。

「必ず帰る。君のもとへ」

そう言って、カイルは私の手を強く握った。

その温もりは、まるで「信じて待っていて。」と告げているようだった。

「……カイル様を、誇りに思っております」

そして、カイルは馬に跨がった。

その姿は、まるで伝説の英雄のように凛々しく、頼もしかった。

旗が揚がり、蹄の音が響く。

カイルとティアナ、そして浄化の一行が門をくぐって旅立っていく。

私は、じっとその背中を見送った。

やがて姿が小さくなり、完全に見えなくなったとき――

こらえていた涙が、静かに頬を伝った。

「……どうか、無事で……」

祈るように胸に手を当てた。

カイルからの手紙は、毎日のように届いた。

几帳面な筆跡に、彼の真面目さと――私への想いがこもっている気がして、胸が少しだけ温かくなる。

一通目には、こう綴られていた。

《今日は魔物が出て大変だった。でもさすがは聖剣。魔物を一網打尽にした。》

読んでいるだけで、彼が聖剣を手に駆ける姿が目に浮かぶ。

いつもの優しい表情とは違う、騎士のようなカイル。

私はそっと手紙を胸に当てて、目を閉じた。

次の手紙には、こうあった。

《ティアナは思ったよりも気が強い。頼りになる。》

その一文に、私はピクリと眉を動かす。

……そうだった。あの青い瞳を持つ、美しい聖女も一緒なのだ。

カイルの隣には、常に彼女がいる。旅の間、昼も夜も。

そして、最後の一文。

《ティアナとセレナの話をよくする。帰ったら、友達になってやってくれ。》

……これには、困った。

ティアナのことを「気が強い」と言うその表現に、親しみを感じているような気がして。

「よく話す」という事実に、二人の距離の近さを思ってしまう。

「友達になってくれ」だなんて、まるで私とティアナが並ぶ未来を当然のように描いている。

――そんな簡単な気持ちで、私の不安が消えるわけじゃないのに。

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