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第八章 やっと気づいた気持ち ②
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その時、隣からクスクスと小さな笑い声が聞こえた。
ティアナだった。
金の髪に陽光を受け、青い瞳が楽しげに細められている。
「皇子はホント、セレナ様が好きなんですね。」
その言葉に、私は一瞬、言葉を失った。
カイルは少しだけ眉をひそめて、冗談めかして言う。
「また、俺のこと皇子って言う。」
――私は、彼にとって本当に「特別」なのだろうか。
笑顔の裏で、ふとそんな疑問がよぎった。
けれど、そんな思いを打ち消すように、カイルがこちらを振り返り、私の手を取った。
「会いたかったよ、セレナ。」
その一言に、胸の棘が少しだけ溶けていくのを感じた。
……でも、まだ全部は消えていない。
そして──私が恐れていたことが、とうとう現実となった。
「ほら見ろ、またカイル殿下とティアナ様が話している。」
噴水のそば、柔らかな陽光の差し込む中庭。そこに立つふたりの姿を、何人もの宮廷関係者たちが目を留めていた。
「浄化の打ち合わせか?……それにしても、仲がいいよな。」
耳を塞ぎたくなるような声が、あちこちから聞こえてくる。
確かに、カイルは穏やかな顔でティアナに何かを語りかけていた。
ティアナもまた、楽しげに微笑みながら頷いている。
その距離は、皇子と聖女という立場を越えて、まるで……長年寄り添ってきた戦友のようだった。
「また皇子は、聖剣を持ってる。魔物退治の時だけだって言ったでしょうに。」
「剣はいつも手に持っていた方が、馴染むんだよ、ってさ。……それに、ティアナの護衛だからな。万が一に備えて、ってやつか?」
誰も悪気があるわけではない。ただの噂話。ただの会話。
でも、私の心は冷たい水をかけられたようにざわめいた。
(どうして、こんなにも自然なの……)
私の知らない時間を、ふたりは共有してきた。
東の地で共に戦い、共に疲れ、互いを支えてきたのだろう。
言葉の節々から、目線の交わし方から、それがにじみ出ている。
私には届かない、ふたりだけの距離感。
(……私、浮かれていただけ?)
彼の心は本当に、私にあるのだろうか。
それとも──私は、彼の“帰る場所”ではあっても、“心を委ねる相手”ではないのかもしれない。
ふたりの笑い声が、春風に乗ってこちらへ届いた。
私は、何も聞こえなかったふりをして、その場を静かに離れた。
「素敵。カイル皇子と聖女ティアナ様って、並び立つとまるでおとぎ話の主人公みたいなのよね。」
控えの間に差し込む陽光の中、侍女たちの囁きが飛び交っていた。
「本当に美しい。お二人が歩いているのを見ると、物語の挿絵みたいだわ。」
「それに……聞いた?最近では軽口を言い合うくらい仲がいいんですって。」
まるで、新刊の恋愛小説を手にした少女たちのように、頬を紅潮させながら語り合っている。
私はそっと扉の影に立ち、何も言えずにその声を聞いていた。
「ねえ、結婚しないかしら。あの二人。ほんとに憧れのカップルだわ。」
ティアナだった。
金の髪に陽光を受け、青い瞳が楽しげに細められている。
「皇子はホント、セレナ様が好きなんですね。」
その言葉に、私は一瞬、言葉を失った。
カイルは少しだけ眉をひそめて、冗談めかして言う。
「また、俺のこと皇子って言う。」
――私は、彼にとって本当に「特別」なのだろうか。
笑顔の裏で、ふとそんな疑問がよぎった。
けれど、そんな思いを打ち消すように、カイルがこちらを振り返り、私の手を取った。
「会いたかったよ、セレナ。」
その一言に、胸の棘が少しだけ溶けていくのを感じた。
……でも、まだ全部は消えていない。
そして──私が恐れていたことが、とうとう現実となった。
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噴水のそば、柔らかな陽光の差し込む中庭。そこに立つふたりの姿を、何人もの宮廷関係者たちが目を留めていた。
「浄化の打ち合わせか?……それにしても、仲がいいよな。」
耳を塞ぎたくなるような声が、あちこちから聞こえてくる。
確かに、カイルは穏やかな顔でティアナに何かを語りかけていた。
ティアナもまた、楽しげに微笑みながら頷いている。
その距離は、皇子と聖女という立場を越えて、まるで……長年寄り添ってきた戦友のようだった。
「また皇子は、聖剣を持ってる。魔物退治の時だけだって言ったでしょうに。」
「剣はいつも手に持っていた方が、馴染むんだよ、ってさ。……それに、ティアナの護衛だからな。万が一に備えて、ってやつか?」
誰も悪気があるわけではない。ただの噂話。ただの会話。
でも、私の心は冷たい水をかけられたようにざわめいた。
(どうして、こんなにも自然なの……)
私の知らない時間を、ふたりは共有してきた。
東の地で共に戦い、共に疲れ、互いを支えてきたのだろう。
言葉の節々から、目線の交わし方から、それがにじみ出ている。
私には届かない、ふたりだけの距離感。
(……私、浮かれていただけ?)
彼の心は本当に、私にあるのだろうか。
それとも──私は、彼の“帰る場所”ではあっても、“心を委ねる相手”ではないのかもしれない。
ふたりの笑い声が、春風に乗ってこちらへ届いた。
私は、何も聞こえなかったふりをして、その場を静かに離れた。
「素敵。カイル皇子と聖女ティアナ様って、並び立つとまるでおとぎ話の主人公みたいなのよね。」
控えの間に差し込む陽光の中、侍女たちの囁きが飛び交っていた。
「本当に美しい。お二人が歩いているのを見ると、物語の挿絵みたいだわ。」
「それに……聞いた?最近では軽口を言い合うくらい仲がいいんですって。」
まるで、新刊の恋愛小説を手にした少女たちのように、頬を紅潮させながら語り合っている。
私はそっと扉の影に立ち、何も言えずにその声を聞いていた。
「ねえ、結婚しないかしら。あの二人。ほんとに憧れのカップルだわ。」
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