「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒

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第八章 やっと気づいた気持ち ③

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「私はもう、カイル殿下とティアナ様が結婚するって信じてるわ。」

その言葉に、胸がチクリと痛んだ。

(……そう。皆がそう思うのね。)

おとぎ話。憧れのカップル。運命の二人。

でも、その隣に立つと約束されたのは私のはずだった。

カイルの瞳に映る未来に、私がいると──そう信じていたのに。

(……もしかして、私は間違っていたの?)

まるで自分が、邪魔者のような気がしてきた。

本当は、最初から“彼女”がカイルに相応しいと、世界が決めていたのかもしれない。

唇を噛んだ。

笑顔で語る侍女たちの言葉が、刃のように突き刺さる。

「セレナ様?」

気づけば、目に涙が浮かんでいた。

咄嗟に袖で拭うと、ただ首を横に振った。

「……なんでもないわ。」

微笑んだつもりだったのに、その笑みはとても弱々しかった。

カイルは公務と浄化の仕事に追われながらも、合間を縫って、私の屋敷に顔を出してくれる。

その日はほんの少しだけ早く陽が落ち、部屋の中に柔らかな夕陽が差し込んでいた。

「……ああ、セレナ。」

カイルが私をそっと抱きしめる。

その腕の中にいると、不思議と胸のざわめきが静まっていく。

「ありがとう、来てくれて。」

「当たり前だ。どんなに忙しくても、君に会わずにいられるか。」

そう言って微笑む彼に、少しだけ勇気を出して尋ねてみた。

「ねえ、カイル。……ティアナ様のこと、どう思っているの?」

一瞬、彼の動きが止まった。

けれどすぐに、カップに口をつけて、静かに答える。

「……あの者は、聖女になるべくしてなったのだと思う。」

その声はまっすぐで、曇りのない響きを持っていた。

それが何より、ティアナへの信頼の深さを物語っているようで──胸がチクリと痛んだ。

「決して強がりなんかじゃない。誰よりも自分の役目を理解していて、常に高貴な信念を胸に抱いている。あれほどの魂を持った人間に、俺は久しく会ったことがなかった。」

言葉が、優しい刃のように私の胸をなぞる。

──どうして、こんなにも彼はまっすぐに、彼女を称えるのだろう。

「……そう、ですか。」

精一杯、笑ってみたつもりだったけれど。

その笑みは、きっとひどくぎこちなかったはずだ。

「でも、それとこれとは別だよ。」

紅茶のカップを置いたカイルが、私の手を取った。

「どんなに尊敬していても、どれだけ信頼していても──俺が愛しているのは、君だ。」

その言葉に、ようやく少しだけ息ができた。

「……本当?」

「ああ。本当だ。信じてくれ。」

抱き寄せられた肩に、ぬくもりがじんわりと染み渡っていく。

カイルの想いが、まるで灯火のように私の心の闇を照らしてくれていた。
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