社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第1話 お見合い相手は

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「えっ……」

私がお嬢様っぽく見える?

こんな貧乏な工場で働いている私が?

「服は私が貸すから。ねえ、お願いだよ。私の人生がかかっているんだから。」

私は、さっき借りたばかりのお金を、握りしめた。


これからも、工場の事で芹香にお金を借りるかもしれない。

その時に、この話を断った事で、芹香が渋ったら?


「分かった。そこまでお願いされたら、やるよ。」

「よかった。有難う、礼奈。」

芹香は本当に嬉しそうだった。

「日付は今度の日曜日。時間は15時。東帝ホテルのラウンジでね。」

「東帝ホテル……」

流石はお金持ちのお見合い。

一般庶民が行く場所じゃない。


「行く前に、私の家に寄って。洋服を着替えて、メイクして。車も準備するわ。」

「うん。分かった。」

準備万端。

芹香は私が断ったら、どうしていたのだろう。


それとも、お金を貸しているから、断らないと思っていたのかな。

どちらにしても、お見合いを断るって、容易な事じゃない。

「断る理由はどうするの?」

「ああ、適当に言っておいて。」

「分かった。」

私が適当に答えて、沢井の家に傷が付かないのかとも思ったけれど、お見合い一つ断ったぐらいで、揺らぐような家でもない事も知っている。

そして私は、芹香の家を出て、仕入れ先の銀行口座に借りたお金を振り込み、相手に電話して明日糸の仕入れをお願いした。


それにしても、人って分からないものだ。

私が芹香の代理で、お見合いを断るのだから。

相手はどんな人なのだろう。

一瞬考えたけれど、断るのにそんな事いちいち、考えていられないとも思った。


そして、日曜日。

私は芹香の家にお邪魔して、洋服を着替え、使用人の人にメイクをして貰った。

「いい?礼奈。今日は沢井芹香でお願いよ。」

「うん。あくまで芹香として、お見合いを断るのね。」

「そう。さすが礼奈は、頭がいい。」

鏡の中の私を見ると、一瞬でもお嬢様に見える。

「お車、用意できました。」

使用人の方が声を掛けて来て、私は芹香の家の車に乗った。

東帝ホテルに着いたのは、約束の時間の10分前だった。

ラウンジに行くと、沢山の人が椅子に座っている。

さて。この中から、どうやって相手の人を見つけるのか。

私は、芹香に質問した。

【水色のワンピースを着ているって、相手には伝えてある。】

答えは、大人しく待っていろって事ね。

私は、近くにあるソファーに座った。


すると、私に近づいてくる一人の男性がいた。

「沢井芹香さんですね。」

「はい、沢井です。」

私は立ち上がって、相手の人の顔を見て、ハッとした。

「黒崎信一郎と言います。今日は宜しくお願いします。」

「宜しく、お願いします。」


端正な顔立ち、落ち着いた物腰、優しそうな笑顔。

どれをとっても、素敵な人である事は間違いなかった。


「今日は、来て頂いて有難うございます。僕は、こういう者です。」

渡された名刺には、マーケティング会社の社長と書いてあった。

「社長さん?」

「ええ。父の代からやっている会社です。」

御曹司。社長。ハイスペックな人って、本当にいるんだと思った。
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