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第2話 嘘の始まり
①
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「飲み物、どうしますか?」
メニュー表を信一郎さんから、スッと渡された。
「私は、カフェ・ラテを……」
値段を見ると、800円もする。
「いえ、コーヒーをお願いします。」
それでも、600円。
どうしてコーヒー一杯が、こんなに高いの⁉
クスッと笑った信一郎さんは、ウェイターの人にコソッと頼んでいる。
お金持ちって、そんな風に頼むんだ。
一人カフェ・ラテとかコーヒーとか、騒いでいた私が恥ずかしい。
やがて運ばれてきた物は、カフェ・ラテだった。
「あの……これ、」
「どうぞ。飲みたいモノを飲むのが、一番いい。」
「……有難うございます。」
これで800円確定。
今日は他に何も買えない。
「芹香さんのご趣味は?」
私は、呑気にカフェ・ラテを飲んでいる。
「芹香さん?」
「あっ、はい!」
危ない。今の私は、芹香だった。
「はい。」
慌てて振り向くと、信一郎さんはポカンとしていた。
「あっ、えっと……趣味。趣味はー、確かピアノだったかな。」
すると信一郎さんが、クスッと笑った。
「何だか他人事みたいですね。」
「ふふふ、そうですね。」
やばい。もう少しでバレそうだった。
私は芹香。気を付けないと。
「信一郎さんのご趣味は?」
「そうですね。乗馬です。」
「乗馬……」
そう言えば芹香も、馬に乗った事あるって言ってたな。
お金持ちって皆、そう言うものなのかな。
「沢井薬品会社の社長と言えば、立派な馬をお持ちだと聞いています。乗せて貰った事、ありますか?」
「……まだ、ないです。」
「そうですか。残念ですね。」
待ってよ。そんなモノ持っているんだったら、予め教えておいてよ。芹香。
「それはそうと、芹香さんはお淑やかな方なんですね。」
「えっ……」
これもまずい。芹香はグイグイ人に話しかけるタイプ。
お淑やかなタイプだって思われていたら、芹香と印象が違ってしまう。
「あのー、このお見合いの事。父に話しますか?」
「いえ、結果だけお伝えしようと思っています。」
「それって……黙っておいてくれないでしょうか。」
信一郎さんは、首を傾げる。
「いちいち、父に干渉されたくないんです。」
「そうですか。そうですよね、芹香さんも自立された大人の女性ですし。」
よかった。
今の芹香っぽかった。
それにしても、信一郎さん。とても素敵な人。
物腰は柔らかいし、私の反応も気にしてくれている。
自分勝手なお坊ちゃまとは、違うみたい。
「信一郎さん。逆に質問してもいいですか?」
「ええ、どうぞ。」
信一郎さん程の素敵な人が、何でお見合いなんかしたのか。
とても気になった。
メニュー表を信一郎さんから、スッと渡された。
「私は、カフェ・ラテを……」
値段を見ると、800円もする。
「いえ、コーヒーをお願いします。」
それでも、600円。
どうしてコーヒー一杯が、こんなに高いの⁉
クスッと笑った信一郎さんは、ウェイターの人にコソッと頼んでいる。
お金持ちって、そんな風に頼むんだ。
一人カフェ・ラテとかコーヒーとか、騒いでいた私が恥ずかしい。
やがて運ばれてきた物は、カフェ・ラテだった。
「あの……これ、」
「どうぞ。飲みたいモノを飲むのが、一番いい。」
「……有難うございます。」
これで800円確定。
今日は他に何も買えない。
「芹香さんのご趣味は?」
私は、呑気にカフェ・ラテを飲んでいる。
「芹香さん?」
「あっ、はい!」
危ない。今の私は、芹香だった。
「はい。」
慌てて振り向くと、信一郎さんはポカンとしていた。
「あっ、えっと……趣味。趣味はー、確かピアノだったかな。」
すると信一郎さんが、クスッと笑った。
「何だか他人事みたいですね。」
「ふふふ、そうですね。」
やばい。もう少しでバレそうだった。
私は芹香。気を付けないと。
「信一郎さんのご趣味は?」
「そうですね。乗馬です。」
「乗馬……」
そう言えば芹香も、馬に乗った事あるって言ってたな。
お金持ちって皆、そう言うものなのかな。
「沢井薬品会社の社長と言えば、立派な馬をお持ちだと聞いています。乗せて貰った事、ありますか?」
「……まだ、ないです。」
「そうですか。残念ですね。」
待ってよ。そんなモノ持っているんだったら、予め教えておいてよ。芹香。
「それはそうと、芹香さんはお淑やかな方なんですね。」
「えっ……」
これもまずい。芹香はグイグイ人に話しかけるタイプ。
お淑やかなタイプだって思われていたら、芹香と印象が違ってしまう。
「あのー、このお見合いの事。父に話しますか?」
「いえ、結果だけお伝えしようと思っています。」
「それって……黙っておいてくれないでしょうか。」
信一郎さんは、首を傾げる。
「いちいち、父に干渉されたくないんです。」
「そうですか。そうですよね、芹香さんも自立された大人の女性ですし。」
よかった。
今の芹香っぽかった。
それにしても、信一郎さん。とても素敵な人。
物腰は柔らかいし、私の反応も気にしてくれている。
自分勝手なお坊ちゃまとは、違うみたい。
「信一郎さん。逆に質問してもいいですか?」
「ええ、どうぞ。」
信一郎さん程の素敵な人が、何でお見合いなんかしたのか。
とても気になった。
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