社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第11話 本当の名前は

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「えっ⁉」

こ、子供⁉

そんな早く子供が欲しいの⁉

「私、結婚するまで子供は……」

まさか、このまま芹香の名前を名乗っている内に、子供なんかできたら。

母子手帳とかで、思い切り礼奈って名前見たら、驚くよね。

そう考えると、ゾ~っとしてきた。

「ああ、いやもちろん。俺もそう考えている。でも、芹香が可愛くてね。」

信一郎さん、私を見ながらニヤニヤしている。


「俺の腕の中で、感じている芹香を見ると、思わず興奮しちゃって。」

「……ははは。」

そんな事言われたら、嬉しいに決まってる!

でも、だからって、子供を作っていいなんて事にはならない。

「そこは、節度を守って、お願いします。」

「ははは!節度!はいはい、節度ね。」

笑っているけれど、大事なところだよ、信一郎さん。


でも、夢を見てしまう。

信一郎さんと結婚して、二人の子供ができて。

一緒に遊んでいるところを想像すると、幸せってこんな感じなのかなって。

夢心地。今まさに、そんな気持ちになっている。


そして私は、服に着替えると、荷物を持った。

「こんなに早く、家を出るの?」

「ううん。会社に行く前に、服を着替えなきゃ。」

すると信一郎さんは、私の髪をさらりと触った。

「今度、俺の部屋に着替えを置いておけばいいよ。」

胸がキュンとした。

そんなの、半同棲みたいじゃない!

「う、うん。」

声が上ずってしまった!変に思われないかな。


「じゃあ、行ってらっしゃい。」

「行って来ます。」

私は信一郎さんに手を振ると、マンションを出た。

近くでタクシーを捕まえ、自宅に行く。

早くしないと、遅刻しちゃう。

自宅に着いたのは、それから10分後だった。


玄関のドアを開けると、そっと階段に向かった。

「お帰り。遅かったな。」

身体が飛び上がる程、驚きながら振り返ると、そこにはお父さんがいた。

「お父さん……」

「どこに行ってた?」

「ええっとー……」

まさか、彼氏の家に泊まって来たなんて言えない。

そして、お母さんも姿を現した。

「お父さん、野暮な事聞くんじゃありませんよ。」

「野暮な事⁉まさか、男か⁉」

だから察して欲しい、お父さん。


「いつからだ⁉いつから付き合っている⁉」

「ああ、もう!会社に遅れるから!」

急いで階段を登り、今日の服に着替えた。

そして駆け足で、階段を降りる。

「おい、礼奈!質問に答えろ!」

「おいおい教えるから!」

そう言って私は、玄関のドアを閉めた。

はぁー、やっぱり父親は、ああいう態度になるよね。


急いで門を出て、会社に向かった。

電車もギリギリで間に合った。

「おはよう、森井さん。」

「おはようございますぅ。」

下沢さんの隣の席に、滑り込むようにして座った。

「なんか森井さん、朝から疲れているね。」

「ははは……」
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