社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第17話 結婚しないとダメみたい

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そしてまた、芹香に呼び出された。

「お父さんから聞いた。慰謝料を請求されたんだって?」

昼下がりの午後。

美味しいコーヒーを飲んでいるのに、空気が重い。

「うん。」

「いくら?」

「5,000万。」

「どうして、そんな大金を⁉」

芹香、詳しい事を聞いてないのかな。

彼女のお父さんは、政略結婚の事、どこまで話していたのだろう。

「元々、信一郎さんとの結婚には、1億のお金が動くはずだったんだって。」

「1億⁉」

芹香はそれを聞いて、顔を青くした。

「政略結婚で、1億のお金が動くなんて、あまり聞かない。」

「えっ?」

「知り合いで、親が決めた結婚をしている子がいるの。いわゆる政略結婚よ。」

「う、うん。」

「その子でも、2,000万だって言ってた。」

2,000万。

それは何のお金なんだろう。

「それって、援助するって事?」

「そう。それが、1億だなんて。」

芹香は、泣きそうな顔をしていた。

「もしかして、お父さんの会社、経営が危ないのかな。」

「沢井薬品が⁉」

沢井薬品って言ったら、薬関係では大手のはず。

「薬って、開発するにも相当なお金がかかるのよ。」

「うん、知ってる。」

「でも、それも元が取れないと、新しい開発費も出ないって。」

私は、何て言ってあげたらいいか、考えていた。


「逆って事は、ないかな。」

「逆って?」

「……信一郎さんの会社が、1億を貰うとか。」

芹香は、頭を横に振った。

「そんなの、黒崎さんの会社にはあり得ない。」

「どうして?」

「そんなにお金に困っている家と、お父さんは結婚を考えないもの。」

あの、お金に執着している芹香のお父さんだったら、考えられる。

「それに、本当に1億困っていたら、この結婚を、黒崎さんが断る訳ないでしょ。」

胸がズキッとした。

「それって、私はお金に勝てないって事?」

芹香は、涙を拭いた。

「愛だけじゃ、上手くいかない時だって、あると思う。」


お金を持っていない私と、産まれた時からお金持ちの芹香。

そこには、拭えない溝がある。


「愛は、全てを超えられるよ。」

「それは、理想論。」

そして私と芹香は、平行線。

「だったら、私はその理想論を証明してみせるよ。」

私は立ち上がり、お店を出た。


芹香には分からない。

私には何もない。

お金も地位も、美貌も。

だから、信一郎さんとの愛だけが、私の支えなの。


その時、目の前に車が停まった。

随分、高級な車だ。

そして、車のドアが開いて、中から出て来たのは……

「礼奈。」

「信一郎さん。」

こんな場所で、信一郎さんに会えるなんて。
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