社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第24話 どうして邪魔するの

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「どうして、私じゃダメなの?」

「芹香……」

私は芹香に近づこうとした。

すると信一郎さんが、首を横に振る。

止めておけと言うサインだ。


「私は、沢井家の令嬢よ!どこに文句があるって言うの!」

「芹香さんに、文句はない。」

信一郎さんが、芹香と話をする。

「だったら、どうして!」

「俺は礼奈を愛している。嘘ついてまで、俺と一緒にいようとした礼奈が、愛おしくてたまらないんだ。それだけだ。」

芹香は、怒りで体が震えている。

「……支度金はどうするのよ。」

「支度金?」

「結婚する条件で、振り込まれたお金よ!」

何だか、お金を気にしている芹香が、醜く見える。


私と一緒にいる時、芹香はお金の事なんて、一切気にした事がなかった。

そういう家に生まれた事が、羨ましいくらいに。


「ああ、それか。それなら気にしない。」

「えっ……」

「返金しなくてもいい。俺との結婚を諦めてくれれば。」

「馬鹿にしないで!」

芹香はまたバッグを振りかざした。
また信一郎さんが叩かれる!

私は信一郎さんの前に立って、芹香のバッグを腕で受け止めた。

「礼奈!」

信一郎さんは、私の前に来て、赤くなっている私の腕を見た。

「芹香さん!」

「知らないわよ!勝手に礼奈が、前に出て来たんじゃない!」

謝る素振りも見せない芹香に、何だか腹が立ってきた。

「芹香!いい加減にしてよ!」

私は芹香の腕を掴んだ。

「本当は芹香も、この結婚はダメだって、知ってるんだよね!」

「っ!」

芹香の顔が歪む。

「お母さんの為だったら、他の方法があるじゃない!どうして信一郎さんを苦しませるの⁉」

芹香は、私から腕を振り払った。

「じゃあ聞くけど、礼奈だったらどうするの?」

「えっ?」

「1億ものお金、どうやって作るのよ!」

それは、急に聞かれたって、分からない。

「キャバクラででも働くの⁉それとも、ソープ⁉」

「そんな事、言ってない!」

「結婚すれば、1億のお金が入るって言ったら、礼奈だって結婚するわよ!」

私は何も言えなかった。

確かに、お母さんが病気になって、1億必要で。

お金持ちと結婚したら、1億入ると言われたら、私だって結婚してしまうかもしれない。

でも……

「そんなの、芹香らしくない。」

芹香は、もっと自分を持っている人だ。

「芹香だったら、何かいい方法で、1億稼ぐ事はできると思う。」

「いい方法?何よ、それ。」

「例えば、事業とか。」

「はあ?働いた事もない私が、事業?」

無理なのかな。

本当に、1億稼ぐってできないのかな。


「とにかく、私の邪魔をしないで!」

芹香が叫んだ。

「どうして、信一郎さんなの?」

私は逆に、聞いてみたかった。

なぜ、そんなに芹香は、信一郎さんにこだわるのか。

「芹香だったら、他にいい人がいるじゃない!」

「元は私のお見合い相手よ!」

「でも、芹香は断ってって言ったじゃない!」

「こんなに優しい人だって知っていたら、断らなかったわよ!」

私と芹香は、息切れをする程言い合った。

「諦めて。信一郎さんの事。」
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