社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第24話 どうして邪魔するの

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信一郎さんの両親への挨拶を済ませ、私は再び、信一郎さんの車に乗った。

「よかった。両親にも認めてもらえて。」

「半ば強引だったけれどね。」

私と信一郎さんは、顔を見合わせ笑った。

「それにしても、おじい様にあんな話があったとはね。」

「聞いた事なかったの?」

「ああ。今日、初めて聞いた。」


おじい様と別れた女性、どんな人だったんだろう。

やっぱり辛かったんだろうなぁ。

好きな人と別れるって。


車は街を抜け、私の家の前にやってきた。

「送ってくれて、ありがとう。」

「いいや。当然の事だよ。」

信一郎さんを見つめると、そっと顔が近づいてきて、私達はキスをした。

「礼奈。遅くなったけれど、聞いて欲しい事があるんだ。」

「なあに?」

キスの余韻で酔っていると、信一郎さんは私の頬に手を当てた。

「俺と、結婚してくれないか。」

私の胸が躍った。

「もちろんよ。」

私は信一郎さんの胸の中に飛び込んだ。

「ずっと一緒にいような。礼奈。」

「うん。信一郎さん。」

それは夢のような時間だった。

あの日、感じた運命が、今現実になっていると感じた。

幸せって、こういう事を言うのだろうと思った。


その時ふと、目を外にやると、運転席の前に芹香が立っていた。

「きゃっ!」

「うわっ!」

私と信一郎さんは、飛び上がる程驚いた。

信一郎さんは、運転席のドアを開けると、車の外に出た。

「芹香さん。そんなところに立っていたら、危ないじゃないか!」

「何よ。堂々と浮気する気?」

「浮気って……俺と君は、付き合っていないだろう。」

「婚約したじゃない!」

「あれは、君が勝手にした事だろう!」

芹香が、見た事もないような剣幕で怒っている。


「芹香。」

私も車を降りた。

「もう止めて、芹香。信一郎さんに芹香と結婚する気はないって、分かっているでしょう?」

「親同士が決めた事よ。私達は、それに従うだけ。」

私と信一郎さんは顔を見合わせると、うんと頷いた。

「今日、礼奈を連れて実家に行って来た。」

「えっ?」

芹香の顔が歪む。

「俺の両親に、礼奈と結婚したいと言ってきた。」

「何ですって⁉」

芹香は恐ろしい顔をして、私に迫って来た。

「何をしてくれてるの⁉」

芹香が右手を挙げる。

殴られる!そう思った瞬間、信一郎さんが芹香を止めてくれた。

「さては、信一郎さんに頼み込んだんでしょ!」

「そんな事してない!」

「そうじゃなきゃ、信一郎さんはそんな事しないわよ!」

芹香が息切れをするくらい叫ぶなんて。

まるで、人が変わったようだ。


「芹香さん、俺が礼奈に行こうと言ったんだ。」

「……っ!」

芹香がバッグを、信一郎さんに投げつけた。

そのせいで、信一郎さんの手の甲が赤くなる。

「信一郎さん!」

「大丈夫だ。」

芹香はまだ、はぁはぁと息切れしている。

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