15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第3章 大学生だと知った日、彼は手を離した

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そのまま玲央さんは「へえ」と、曖昧に微笑んだだけだった。

私の胸の奥に、小さく波紋が広がる。

でも、それでいいと思った。今はまだ、これで。

「あの、質問をしてもいいですか?」

おそるおそる言うと、玲央さんはコーヒーカップを持った手を止め、私を見た。

「どうぞ。」

私は、ずっと胸に引っかかっていたことを、ようやく言葉にした。

「あの……この前、誕生日のケーキに書かれていた言葉を見て……調べてしまいました。」

玲央さんの眉が、わずかに動く。

「玲央さん、御曹司なんですか。」

玲央さんは、戸惑ったように小さく笑った。だがすぐにその表情が消え、真剣な眼差しで私を見つめ返してきた。

「検索したら……“今一番の若手御曹司”だって。経済誌にも載っていて……」

言い終えた瞬間、玲央さんは静かに言った。

「君に、フルネームを教えなければよかったかな。」

その言葉に、背筋がゾクッと冷えた。まるで、触れてはいけない扉を開けてしまったようで。

「ご、ごめんなさい……」

私は思わず視線を伏せた。無遠慮に詮索してしまった自分が恥ずかしかった。

けれど――

「怒ってるわけじゃないよ。」

玲央さんの声は、思いのほか優しかった。

「ただ……本当は、何者でもない俺として、君に会いたかったんだ。」

その一言が、胸の奥に、温かく、でも少し切なく届いた。

「あの、変な意味じゃないんです。」

私は慌てて手を振って否定した。

「ただその……お金持ちそうだし。その若さで副社長だし。何かあるんじゃないかと思って。」

あの日のことを思い出す。

雨の中で差し出された、紺の傘。

しなやかな動きで外された高級そうな腕時計。

体にぴったりと合ったグレーのスーツ。

あの時は気づかなかったけれど、どれも――普通じゃなかった。

玲央さんは、少し黙ったあと、テーブルに肘をつき、頬杖をついた。

「……君は、御曹司だったら、何でも手に入ると思ってる?」

「えっ……」

唐突な問いに、私は目を瞬かせた。

玲央さんは、じっと私の目を見ていた。まるで、本心を試すように。

「他の人よりは、人生うまく行くと思います。」

思わず、私はそう言っていた。偏見だと分かっていても、口をついて出た言葉だった。

玲央さんは、微笑んだまま頷いた。

「確かに。学歴も地位も、まあ努力は必要だけど手に入るね。」

やっぱり、大人だ。私の未熟な言葉を否定せず、正面から受け止めてくれる。

「でもね。恋愛はうまくいかない。」

その一言に、私は思わず玲央さんを見つめた。意外だった。

「……うまく、いかない?」

「俺の家庭、結婚相手は自分で見つけてこいっていう主義でね。昔から言われてたんだ。弟も妹も、自分で好きになった人と結婚した。」

「素敵ですね……」

「そうだね。自由に見えるだろ?」
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