15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第3章 大学生だと知った日、彼は手を離した

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玲央さんは、軽く笑ってコーヒーカップを傾けた。

その横顔は、やけに遠く感じた。

「でも、自分で選べって、簡単なようで難しいんだよ。」

「どうして……?」

玲央さんの指先が、テーブルをなぞる。

その仕草が妙に切なく見えた。

「人を好きになるって、不確かで、リスクもある。特に俺みたいな立場だとね。『この人は、俺じゃなくて“副社長”が好きなんじゃないか』って、疑う自分がいる。」

その言葉に、私は胸がチクリと痛んだ。

「……私は、玲央さん自身を見てるつもりです。」

玲央さんの瞳が、少しだけ揺れた。

「ありがとう。ひよりさん。」

そう言った声は、優しくて、でもどこか震えていた。

お店を出て、車に乗った。

「どこか行きたい場所はある?」

玲央さんが、助手席の私にそっと聞く。

「……あっ、雑貨屋に行きたいです。」

「OK。」

車はまたゆっくりと走り出し、私は道を案内した。

少し路地を入ったところにある、こぢんまりとした可愛い雑貨屋。看板に描かれた猫のマークが目印。

玲央さんは車を止めると、私に合わせて歩調をゆっくりにしてくれる。

「ここ、可愛い物が揃ってるね。」

「ふふ、でしょ?」

私は、目立たないように端に並べられていたマグカップを手に取った。

淡いミントグリーンの色合いに、白い小花があしらわれている。

それは、玲央さんのシャツの色に、少し似ていた。

――記念に、そっと買っておきたい。

こっそり、レジへと持っていくと、玲央さんは反対側の棚で、小さな木製の置き時計を見ていた。

「ひよりさん、こういうお店が好きなんだね。」

「はい。……見てるだけで楽しくなります。」

少し照れながら、車の中で袋を渡した。

「俺に?」

「はい。」

小さな紙袋を受け取った玲央さんは、不思議そうに中をのぞき込んだ。

包みを丁寧に開いて、ミントグリーンのマグカップが姿を現す。

「……ありがとう。」

その声は、いつになく優しくて。

「マグカップ、人から貰うなんて初めてだ。」

玲央さんは、まるで子供のような笑顔を浮かべて、カップを大事そうに両手で包んだ。

そんな表情を見て、私の胸もほんのり温かくなる。

――プレゼントして、よかった。

「玲央さん。よかったら、また今度。どこか遊びに行きませんか?」

緊張で少し声が上ずる。けれど、はっきりと伝えた。

しかし――その答えは、意外なものだった。

玲央さんは一瞬、笑顔を引っ込めて、真剣な眼差しで私を見た。

「俺たち、もう会わない方がいいんじゃないかな。」

車内に沈黙が落ちた。

一瞬、言葉の意味が理解できなくて、私はただ目を見開いた。
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