15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第4章 追いかけた先に、あなたがいた

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「ご足労いただいたのに申し訳ありません。」

受付の人の声は柔らかかったけれど、その丁寧さが、逆に心に染みた。

「……いえ、ありがとうございました。」

私は軽く頭を下げると、足早にロビーを後にした。

後ろから「ひより!」と呼びかけてくるさくらの声が聞こえたけれど、返事をする余裕もなくて。

ただ、握りしめたスマホが少しだけ熱を帯びていた。

…お願い、もう一度だけ、会いたい。

それでも、私はあきらめきれなかった。

広いロビーを見渡して、どこかに玲央さんがいるんじゃないかと目を凝らす。

まるで夢の中をさまようみたいに、人の波の中に答えを探していた。

そのとき――。

「君、誰を探しているの?」

低く落ち着いた声が背後から聞こえた。

驚いて振り返ると、制服姿の警備員が立っていた。

真面目そうな目がこちらを見つめている。

「えっ……あの……」

言葉が詰まる。私の挙動不審が目立っていたのかもしれない。

「身分証明書、持ってる?」

びくっとして、思わず鞄に手を入れた。

「えっと……これでいいですか?」

差し出したのは、大学の学生証。警備員は一瞥すると、眉を少しだけひそめた。

「大学生……?どうして、ここに?」

「えっと……知り合いが、この会社にいて……」

「アポはある?」

「……ないです。」

学生証は返してくれたけれど、そこからが長かった。

「知り合いって、誰?」「用件は?」「ここで待っていたのは何分くらい?」「一人?」

質問が次から次へと飛んできて、まるで取り調べのようだった。

私は咄嗟に、「さくら、さくらは……」と後ろを振り返る。けれど、さくらは自販機の方へと離れていた。

まずい……。

焦る気持ちとは裏腹に、警備員の表情は少しずつ硬くなっていく。

「ちょっと、警備員室に来てもらえるかな?」

「えっ⁉」

思わず声が裏返る。

次の瞬間、警備員の人が私の腕を掴んだ。

「どう考えても怪しいだろう。」

「ちょっと、待ってください! 私、そんなつもりじゃ――」

「抵抗するなら、警察を呼ぶぞ。」

「え……っ」

足元がふらつく。怖い。どうしよう。こんなつもりじゃなかったのに。

――さくら、どこ……!

「ひよりっ!」

その声が聞こえた瞬間、さくらが自販機の横から全速力で走ってきた。

「その子はストーカーとかじゃないです!本当に知り合いがいて!」

そのときだった。

私の肩がふいに、誰かの腕に抱き寄せられた。

「彼女は僕の客だ。」

優しく、でも毅然とした声。

顔を上げると――そこには、玲央さんがいた。

「れ、玲央さん……」

「遅れてごめん。車の中から見えてた。」

「……っ」

私は一気に胸が熱くなった。
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