15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第4章 追いかけた先に、あなたがいた

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その言葉が、胸に重く落ちた。

夜。ベッドの上、私はスマホを手に取った。

「お仕事、お疲れ様です。」

震える指で送ったLINE。

送信マークが消えるのを、じっと見つめていた。けれど──返事は、来ない。

「……あーあ。」

やっぱり即返なんて、ないよね。

玲央さんは忙しい人なんだから。

ため息をついて、スマホを枕元に置いた。そのとき──

ピコン

音に驚いてスマホを見た。

《お疲れ様。やっと今、仕事終わったよ。》

21時。こんな時間まで……。

「大変でしたね。」

すぐに返信すると、ほどなくしてまたメッセージが届いた。

《ホントだよ。副社長ってだけで、いろんな仕事押し付けられるんだから。》

画面に浮かぶ、少し愚痴めいた言葉に、思わずクスッと笑ってしまう。

遠い人だと思っていたのに、こんな風に気を許してくれるなんて。

胸の奥が、少しだけ温かくなった。

ダメ元で、スマホを握りしめながら文字を打つ。

「明日、会えますか。」

送信ボタンをそっと押すと、既読はすぐについた。でも──返事はこない。

「……あーあ。」

さっきまであんなに即レスだったのに。

やっぱり、忙しいのかな。調子に乗っちゃったかな……。

少し落ち込んでスマホを伏せかけた、そのとき。

ピコン

《明日、18時。今日来たビルの外で待ってて。》

「えっ……」

一瞬、文字の意味を理解するのに時間がかかった。

「……やったぁ!」

思わず声が漏れて、私はベッドの上で手足をバタバタさせた。

「明日、会えるーっ!」

たったそれだけのことなのに。

返事の短い一文なのに。こんなに嬉しくて、こんなに心が跳ねるなんて、思ってもみなかった。

スマホを胸に抱きしめて、私は目を閉じた。

明日が待ち遠しくて、眠れる気がしない。

夕方、空が少しオレンジに染まりはじめた頃。

私は鏡の前で、ベージュのワンピースの裾をそっと整えた。

「これなら……浮かないよね。」

淡い色合いに自然なメイク。少しだけ大人びた自分が、そこに映っていた。

18時ちょうど。都心のビル街に着くと、足が自然に緊張で止まる。

でもその瞬間、スマホが震えた。

《右側向いて。》

「えっ……?」

思わず視線を右に向けると、ビルの端にある花壇。

その縁に、玲央さんが腰かけていた。

ネクタイを少し緩めて、疲れた表情をしている。

でも私を見つけると、すっと手を上げた。

「お仕事、お疲れ様です。」

私が小走りで近づいてそう言うと、玲央さんはひょういと手を振って、少しだけ笑った。

「……ああ。」

たったそれだけの返事なのに、声が耳に届いた瞬間、胸がふわっと熱くなった。

今日は、ちゃんと会えた。それだけで嬉しかった。
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