15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第4章 追いかけた先に、あなたがいた

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その言葉に、玲央さんの喉が小さく鳴った。

「……そんなことされたら、俺、もう逃げられなくなる。」

「うん。逃がさないよ。」

私は手を握ったまま、玲央さんに向かってもう一歩近づいた。

風が吹いて、彼の髪を揺らした。

そして、ふたりの距離が、音もなく縮まっていった――。

「玲央さん。私、玲央さんが好きです。」

言い切った。胸が高鳴る。足元がぐらつくような緊張の中、玲央さんは真っ直ぐ私を見た。

「私と付き合って頂けませんか?」

その瞬間、彼はふいに目を伏せ、おでこを片手で押さえた。

まるで時間が止まったかのようだった。

「……ダメだ。」

「どうして?」

思わず声が出た。玲央さんは、ゆっくりと私を抱きしめた。

「ひよりさんは、恋愛したいだけだよ。」

その言葉に、私は大きく首を横に振った。

「違う!」

強い口調になった。震える声が、空気を震わせる。

「玲央さんと一緒にいたいから。ずっと側にいたいから。」

私の想いを吐き出した瞬間、玲央さんの表情が陰った。

「俺も、そう思ってる。でも、それだけじゃダメなんだ。」

「えっ……?」

言葉の意味がすぐに理解できなくて、私は戸惑った。

「俺はもう三十五歳だよ。恋愛を楽しんでる時間はない。結婚して、家族を支える覚悟を持った人とじゃないと……」

そう言った玲央さんの声が、やけに遠く聞こえた。

恋愛の始まりって、"一緒にいたい"って気持ちじゃないの?

私は唇を噛みしめた。涙が自然と頬を伝う。

「それでも……私は玲央さんといたい。年齢も、立場も、全部分かってる。けど、それでも……」

玲央さんは目を伏せたまま、私の涙をそっと親指で拭った。

その手が、優しくて、余計に切なかった。

「ごめん。また泣かせたね。」

玲央さんが、少しだけ寂しそうに笑った。

そしてポケットからスマホを取り出す。

「これ、俺の連絡先。」

画面にはLINEのQRコード。私は、息を詰めながら自分のスマホを差し出した。

手が少し震える。カメラをかざし、玲央さんの連絡先を読み込む。

「会いたい時は、いつでも連絡して。なるべく、都合つけるから。」

そう言って玲央さんは、私に背を向けて歩き出す。

スーツの背中が遠ざかっていくのが、やけに切なくて。

「玲央さん!」

私の声が、思わず口をついた。彼が足を止める。

「好きなだけじゃ、ダメなんですか?」

その言葉は、涙と一緒にこぼれた。

玲央さんは、ゆっくりと振り返る。

胸の奥がぎゅっと締め付けられるようだった。

その瞳に、迷いと優しさが混じっていた。

「……ダメじゃないよ。」

小さく息を吐きながら、玲央さんは言った。

「でも、“好き”だけで何とかなるほど、俺、若くないんだ。」

「……。」

「俺は、君に自分の未来を背負わせたくない。無責任に、抱きしめることもできない。」
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