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第5章 ようやく始まった恋なのに
⑤
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「さっき……玲音の誕生日を聞いたんだ。俺と萌音が別れたあと、ちょうど10か月後に生まれてる……」
私は言葉を失った。頭では理解しようとしても、心がついていかない。
「萌音の話では……俺の家族が、“あの子とは釣り合わない”って……別れろって言ったらしい。だから、妊娠してるって言えなかったって……」
玲央さんは顔を覆った。
「俺、知らなかったんだ。本当に……俺の子だったなんて……」
その姿に、私の心も締めつけられる。
玲央さんを責めることなんて、できなかった。
だって、彼は今、深く傷ついている。
そう、まるで5年前の罪と向き合う少年のように──。
「萌音は、慰謝料もいらない。認知もしなくていいって言ってるんだ。」
玲央さんの声は、どこか遠くで響いているようだった。
「……そうですか。」
それしか言えなかった。
強がりの声が震えたのは、自分でも気づいていた。
「でも俺……きちんと自分の子供だって認めるのが、せめてもの父親の義務だと思ってる。」
その言葉に、胸の奥で何かが崩れた。
理解しようとする心と、どうしようもなく不安になる気持ちがせめぎ合う。
私の目からも、自然と涙がこぼれていた。
「……そうなったら、私たちはどうなるの?」
震える声で問いかける。
「玲央さんが、あの子を認知して、もし……結婚するって言ったら、私……私は……どうしたらいいの?」
口に出した瞬間、涙が止まらなくなった。
夢みたいだった。あの人と過ごす毎日が、本当に幸せで──。
でも、現実は残酷だ。
玲央さんは、黙っていた。
ただ黙って、拳を握りしめていた。
沈黙の中に、答えがあるようで、ないようで。
私たちの未来は、まだどこにも見えていなかった。
それから、しばらく玲央さんからの連絡が途絶えた。
ラインを送っても、既読にならない時もある。
でも、このままあの人に玲央さんを渡したくない。
私は、玲央さんの会社があるオフィスビルに向かった。
時間は18時。もしかしたら、玲央さんに会えるかもしれない。
夕暮れのオフィス街は、人波がまばらになっていて、どこか寂しげだった。
花壇の端に腰を下ろし、息を殺して待つ。
すると、スーツ姿の男性が一人、ゆっくりとエントランスから出てきた。
――いた。
「玲央さん……」
その声に、彼はハッとこちらを振り向いた。
私を見つけた瞬間、目を見開く。
私は立ち上がって、震える足で一歩ずつ近づいた。
「なんで……ここに?」
「会いたかったんです。ずっと、話したくて……」
玲央さんの顔が苦しげに歪んだ。そして、目を伏せて小さく息を吐く。
「ごめん、ひよりさん。今日は……」
私は言葉を失った。頭では理解しようとしても、心がついていかない。
「萌音の話では……俺の家族が、“あの子とは釣り合わない”って……別れろって言ったらしい。だから、妊娠してるって言えなかったって……」
玲央さんは顔を覆った。
「俺、知らなかったんだ。本当に……俺の子だったなんて……」
その姿に、私の心も締めつけられる。
玲央さんを責めることなんて、できなかった。
だって、彼は今、深く傷ついている。
そう、まるで5年前の罪と向き合う少年のように──。
「萌音は、慰謝料もいらない。認知もしなくていいって言ってるんだ。」
玲央さんの声は、どこか遠くで響いているようだった。
「……そうですか。」
それしか言えなかった。
強がりの声が震えたのは、自分でも気づいていた。
「でも俺……きちんと自分の子供だって認めるのが、せめてもの父親の義務だと思ってる。」
その言葉に、胸の奥で何かが崩れた。
理解しようとする心と、どうしようもなく不安になる気持ちがせめぎ合う。
私の目からも、自然と涙がこぼれていた。
「……そうなったら、私たちはどうなるの?」
震える声で問いかける。
「玲央さんが、あの子を認知して、もし……結婚するって言ったら、私……私は……どうしたらいいの?」
口に出した瞬間、涙が止まらなくなった。
夢みたいだった。あの人と過ごす毎日が、本当に幸せで──。
でも、現実は残酷だ。
玲央さんは、黙っていた。
ただ黙って、拳を握りしめていた。
沈黙の中に、答えがあるようで、ないようで。
私たちの未来は、まだどこにも見えていなかった。
それから、しばらく玲央さんからの連絡が途絶えた。
ラインを送っても、既読にならない時もある。
でも、このままあの人に玲央さんを渡したくない。
私は、玲央さんの会社があるオフィスビルに向かった。
時間は18時。もしかしたら、玲央さんに会えるかもしれない。
夕暮れのオフィス街は、人波がまばらになっていて、どこか寂しげだった。
花壇の端に腰を下ろし、息を殺して待つ。
すると、スーツ姿の男性が一人、ゆっくりとエントランスから出てきた。
――いた。
「玲央さん……」
その声に、彼はハッとこちらを振り向いた。
私を見つけた瞬間、目を見開く。
私は立ち上がって、震える足で一歩ずつ近づいた。
「なんで……ここに?」
「会いたかったんです。ずっと、話したくて……」
玲央さんの顔が苦しげに歪んだ。そして、目を伏せて小さく息を吐く。
「ごめん、ひよりさん。今日は……」
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