15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第5章 ようやく始まった恋なのに

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「さっき……玲音の誕生日を聞いたんだ。俺と萌音が別れたあと、ちょうど10か月後に生まれてる……」

私は言葉を失った。頭では理解しようとしても、心がついていかない。

「萌音の話では……俺の家族が、“あの子とは釣り合わない”って……別れろって言ったらしい。だから、妊娠してるって言えなかったって……」

玲央さんは顔を覆った。

「俺、知らなかったんだ。本当に……俺の子だったなんて……」

その姿に、私の心も締めつけられる。

玲央さんを責めることなんて、できなかった。

だって、彼は今、深く傷ついている。

そう、まるで5年前の罪と向き合う少年のように──。

「萌音は、慰謝料もいらない。認知もしなくていいって言ってるんだ。」

玲央さんの声は、どこか遠くで響いているようだった。

「……そうですか。」

それしか言えなかった。

強がりの声が震えたのは、自分でも気づいていた。

「でも俺……きちんと自分の子供だって認めるのが、せめてもの父親の義務だと思ってる。」

その言葉に、胸の奥で何かが崩れた。

理解しようとする心と、どうしようもなく不安になる気持ちがせめぎ合う。

私の目からも、自然と涙がこぼれていた。

「……そうなったら、私たちはどうなるの?」

震える声で問いかける。

「玲央さんが、あの子を認知して、もし……結婚するって言ったら、私……私は……どうしたらいいの?」

口に出した瞬間、涙が止まらなくなった。

夢みたいだった。あの人と過ごす毎日が、本当に幸せで──。

でも、現実は残酷だ。

玲央さんは、黙っていた。

ただ黙って、拳を握りしめていた。

沈黙の中に、答えがあるようで、ないようで。

私たちの未来は、まだどこにも見えていなかった。

それから、しばらく玲央さんからの連絡が途絶えた。

ラインを送っても、既読にならない時もある。

でも、このままあの人に玲央さんを渡したくない。

私は、玲央さんの会社があるオフィスビルに向かった。

時間は18時。もしかしたら、玲央さんに会えるかもしれない。

夕暮れのオフィス街は、人波がまばらになっていて、どこか寂しげだった。

花壇の端に腰を下ろし、息を殺して待つ。

すると、スーツ姿の男性が一人、ゆっくりとエントランスから出てきた。

――いた。

「玲央さん……」

その声に、彼はハッとこちらを振り向いた。

私を見つけた瞬間、目を見開く。

私は立ち上がって、震える足で一歩ずつ近づいた。

「なんで……ここに?」

「会いたかったんです。ずっと、話したくて……」

玲央さんの顔が苦しげに歪んだ。そして、目を伏せて小さく息を吐く。

「ごめん、ひよりさん。今日は……」
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