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第6章 あなたが甘くなったのは、私のせい?
⑦
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「えいっ」と小さく声を出して、私はその扉を押した。
中に入ると、静かな音楽と落ち着いた照明。
グレーのスーツを着た店員さんが、すぐにやってきてにこやかに会釈をした。
「ご覧になりますか?」
「はい、あの……男性へのプレゼントを探していて……」
ふと手に取ったネクタイの値札を見る。
「……っ」
値札に書かれた数字に、思わず声が詰まる。
2万1千円。ネクタイ1本で、私の今月の食費が吹き飛ぶ額だった。
「……ブランド物って、やっぱり高いんですね……」
そっとネクタイを戻しかけたとき、店員さんが優しく声をかけてくれた。
「もし小物がよければ、ネクタイピンなどはいかがでしょうか?」
「ネクタイピン……!」
思いつかなかったその提案に、私はぱっと顔を上げた。
玲央さんはいつも、ネクタイをきちんと締めている。
彼の胸元に、私から贈った小さな輝きがついていたら――
それだけで嬉しくなる。
ガラスケースの中に、いくつか並んだネクタイピン。
その中に、猫のシルエットがさりげなく刻まれた、シルバーのデザインを見つけた。
「これ、かわいい……!」
「こちら、さりげない遊び心のある限定デザインでして。シンプルなので、ビジネスの場でも違和感なくご使用いただけます。」
「これにします!」
お財布を確かめると、ちょうど予算内。
私は胸を張って頷いた。
箱に収められた小さなネクタイピン。
それを手のひらに抱きしめるようにして持ちながら、私はそっとつぶやいた。
「喜んでくれるかな……」
これから会う彼の顔を思い浮かべるだけで、胸がふわりと熱くなる。
夜が、楽しみだった。
そして18時ちょうど。
花壇の前に、玲央さんが現れた。
「今日はワンピースなんだね。」
優しい声に、私ははにかみながら頷いた。
紺色のワンピースに、白い小さなレースのついたカーディガン。
「行こうか。」
「はい。」
手をつなぎながら歩いた先は、私がこっそり予約していたレストラン。
街の喧騒から少し離れた場所にある、小さなイタリアン。
「なんか、かわいいレストランだね。」
玲央さんがドアの前でそう言ってくれた。
窓辺には小さなランプが灯り、アンティーク調のドアノブがやさしくきらめく。
個人経営の、温もりのある店。
私が選んだのには理由があった。
背伸びしすぎない。けれど、特別感はしっかりある。
なにより、私でも――彼にご馳走できる、そんな場所だったから。
「今日は、好きなモノ頼んでください。」
そう言った私の言葉に、玲央さんは驚いたように目を見開いて、それからふっと微笑んだ。
「……夢、叶った?」
「うん。ずっと言ってみたかったの。」
その一瞬、玲央さんの瞳が、いつもよりも優しく揺れた気がした。
店員さんが席へ案内してくれる。
窓際の小さなテーブルには、キャンドルが一つ。
きっとこの夜は、ずっと忘れられない。
中に入ると、静かな音楽と落ち着いた照明。
グレーのスーツを着た店員さんが、すぐにやってきてにこやかに会釈をした。
「ご覧になりますか?」
「はい、あの……男性へのプレゼントを探していて……」
ふと手に取ったネクタイの値札を見る。
「……っ」
値札に書かれた数字に、思わず声が詰まる。
2万1千円。ネクタイ1本で、私の今月の食費が吹き飛ぶ額だった。
「……ブランド物って、やっぱり高いんですね……」
そっとネクタイを戻しかけたとき、店員さんが優しく声をかけてくれた。
「もし小物がよければ、ネクタイピンなどはいかがでしょうか?」
「ネクタイピン……!」
思いつかなかったその提案に、私はぱっと顔を上げた。
玲央さんはいつも、ネクタイをきちんと締めている。
彼の胸元に、私から贈った小さな輝きがついていたら――
それだけで嬉しくなる。
ガラスケースの中に、いくつか並んだネクタイピン。
その中に、猫のシルエットがさりげなく刻まれた、シルバーのデザインを見つけた。
「これ、かわいい……!」
「こちら、さりげない遊び心のある限定デザインでして。シンプルなので、ビジネスの場でも違和感なくご使用いただけます。」
「これにします!」
お財布を確かめると、ちょうど予算内。
私は胸を張って頷いた。
箱に収められた小さなネクタイピン。
それを手のひらに抱きしめるようにして持ちながら、私はそっとつぶやいた。
「喜んでくれるかな……」
これから会う彼の顔を思い浮かべるだけで、胸がふわりと熱くなる。
夜が、楽しみだった。
そして18時ちょうど。
花壇の前に、玲央さんが現れた。
「今日はワンピースなんだね。」
優しい声に、私ははにかみながら頷いた。
紺色のワンピースに、白い小さなレースのついたカーディガン。
「行こうか。」
「はい。」
手をつなぎながら歩いた先は、私がこっそり予約していたレストラン。
街の喧騒から少し離れた場所にある、小さなイタリアン。
「なんか、かわいいレストランだね。」
玲央さんがドアの前でそう言ってくれた。
窓辺には小さなランプが灯り、アンティーク調のドアノブがやさしくきらめく。
個人経営の、温もりのある店。
私が選んだのには理由があった。
背伸びしすぎない。けれど、特別感はしっかりある。
なにより、私でも――彼にご馳走できる、そんな場所だったから。
「今日は、好きなモノ頼んでください。」
そう言った私の言葉に、玲央さんは驚いたように目を見開いて、それからふっと微笑んだ。
「……夢、叶った?」
「うん。ずっと言ってみたかったの。」
その一瞬、玲央さんの瞳が、いつもよりも優しく揺れた気がした。
店員さんが席へ案内してくれる。
窓際の小さなテーブルには、キャンドルが一つ。
きっとこの夜は、ずっと忘れられない。
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