58 / 99
第6章 あなたが甘くなったのは、私のせい?
⑧
しおりを挟む
料理が運ばれて、私たちはグラスを手に取った。
「お誕生日、おめでとうございます。」
私がグラスを差し出すと、玲央さんも笑顔で応じてくれる。
「ありがとう。」
グラスが小さく触れ合い、澄んだ音が響いた。
その音と一緒に、心も弾んだ気がした。
料理は、前菜のカルパッチョに、温かいバゲット、そしてチーズとトマトのパスタ。
どれも温もりがあって、ふたりで「美味しいね」なんて言いながら笑い合う時間が心地よかった。
ひとしきり食事が落ち着いた頃、私はそっと、紙袋を差し出した。
小さなリボンのついた、紺色の紙袋。
「これ……プレゼント。」
玲央さんは少し驚いたように目を丸くして、それから柔らかく笑った。
「開けてもいい?」
私はうん、と頷いた。
玲央さんは丁寧にリボンを解き、包みを開けていく。
その指先の動きに、私はどきどきしながら彼の表情を見守った。
そして中身を見た瞬間、ふっと吹き出すように笑った。
「ネクタイピン?……あはっ!もしかして、黒猫?」
その言い方がなんだか嬉しくて、私はにっこり笑った。
「可愛くて、つい……でも、シンプルだからお仕事でも使えると思って。」
「うん。……ちょうど、欲しかったんだ。」
玲央さんの瞳が、まっすぐ私を見つめる。
その優しい言葉に、心がじんわりと温かくなった。
「ありがとう。大切にするよ。」
私は少し照れながらも、言った。
「気に入ってもらえて、よかったです。」
グラスに残ったワインを一口だけ飲んで、私はそっと息を吐く。
こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
心が満たされるとは、きっとこういうことなのだと思った。
そして、食事が終わった私たちは、店を出て静かな夜道を歩いた。
夜風が少し肌寒いけれど、玲央さんがそっと私の手を握ってくれる。
「ねえ、ひより。」
「ん?」
「まだ、時間ある?」
私はすぐに、うんと頷いた。
「俺の家に来ない?」
一瞬だけ心臓が跳ねるように高鳴る。けれど、玲央さんの手は優しく、ぬくもりをくれた。
「うん、行く。」
私はその手をぎゅっと握り返した。
そして、ふたりで歩いて玲央さんの住むタワーマンションへ。
エントランスも、エレベーターも、何もかもが洗練されていて、まるで別世界に来たようだった。
高層階にある玲央さんの部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのは──
「……素敵……」
窓一面に広がる、夜の街の光。
宝石をばらまいたような煌めきが、私たちを包んでいた。
「気に入った?」
玲央さんが、ソファにコートを置きながら笑う。
「はい。すごく……きれいです。」
「誕生日に、君とここで過ごせて、よかった。」
玲央さんの言葉が胸に響いて、私はそっと彼の隣に腰かけた。
ほんの少しだけ、距離を空けて座ったのに──
玲央さんが、そっと私の肩に腕を回してくる。
「お誕生日、おめでとうございます。」
私がグラスを差し出すと、玲央さんも笑顔で応じてくれる。
「ありがとう。」
グラスが小さく触れ合い、澄んだ音が響いた。
その音と一緒に、心も弾んだ気がした。
料理は、前菜のカルパッチョに、温かいバゲット、そしてチーズとトマトのパスタ。
どれも温もりがあって、ふたりで「美味しいね」なんて言いながら笑い合う時間が心地よかった。
ひとしきり食事が落ち着いた頃、私はそっと、紙袋を差し出した。
小さなリボンのついた、紺色の紙袋。
「これ……プレゼント。」
玲央さんは少し驚いたように目を丸くして、それから柔らかく笑った。
「開けてもいい?」
私はうん、と頷いた。
玲央さんは丁寧にリボンを解き、包みを開けていく。
その指先の動きに、私はどきどきしながら彼の表情を見守った。
そして中身を見た瞬間、ふっと吹き出すように笑った。
「ネクタイピン?……あはっ!もしかして、黒猫?」
その言い方がなんだか嬉しくて、私はにっこり笑った。
「可愛くて、つい……でも、シンプルだからお仕事でも使えると思って。」
「うん。……ちょうど、欲しかったんだ。」
玲央さんの瞳が、まっすぐ私を見つめる。
その優しい言葉に、心がじんわりと温かくなった。
「ありがとう。大切にするよ。」
私は少し照れながらも、言った。
「気に入ってもらえて、よかったです。」
グラスに残ったワインを一口だけ飲んで、私はそっと息を吐く。
こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
心が満たされるとは、きっとこういうことなのだと思った。
そして、食事が終わった私たちは、店を出て静かな夜道を歩いた。
夜風が少し肌寒いけれど、玲央さんがそっと私の手を握ってくれる。
「ねえ、ひより。」
「ん?」
「まだ、時間ある?」
私はすぐに、うんと頷いた。
「俺の家に来ない?」
一瞬だけ心臓が跳ねるように高鳴る。けれど、玲央さんの手は優しく、ぬくもりをくれた。
「うん、行く。」
私はその手をぎゅっと握り返した。
そして、ふたりで歩いて玲央さんの住むタワーマンションへ。
エントランスも、エレベーターも、何もかもが洗練されていて、まるで別世界に来たようだった。
高層階にある玲央さんの部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのは──
「……素敵……」
窓一面に広がる、夜の街の光。
宝石をばらまいたような煌めきが、私たちを包んでいた。
「気に入った?」
玲央さんが、ソファにコートを置きながら笑う。
「はい。すごく……きれいです。」
「誕生日に、君とここで過ごせて、よかった。」
玲央さんの言葉が胸に響いて、私はそっと彼の隣に腰かけた。
ほんの少しだけ、距離を空けて座ったのに──
玲央さんが、そっと私の肩に腕を回してくる。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
【完結】エリート産業医はウブな彼女を溺愛する。
花澤凛
恋愛
第17回 恋愛小説大賞 奨励賞受賞
皆さまのおかげで賞をいただくことになりました。
ありがとうございます。
今好きな人がいます。
相手は殿上人の千秋柾哉先生。
仕事上の関係で気まずくなるぐらいなら眺めているままでよかった。
それなのに千秋先生からまさかの告白…?!
「俺と付き合ってくれませんか」
どうしよう。うそ。え?本当に?
「結構はじめから可愛いなあって思ってた」
「なんとか自分のものにできないかなって」
「果穂。名前で呼んで」
「今日から俺のもの、ね?」
福原果穂26歳:OL:人事労務部
×
千秋柾哉33歳:産業医(名門外科医家系御曹司出身)
腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。
ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。
そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。
彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。
「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。
一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。
断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。
夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。
パリで出会ったその美人モデル。
女性だと思っていたら――まさかの男!?
酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。
けれど、彼の本当の姿はモデルではなく――
(モデル)御曹司×駆け出しデザイナー
【サクセスシンデレラストーリー!】
清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー
麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル)
初出2021.11.26
改稿2023.10
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
寺原しんまる
恋愛
成人してから母親の影響でBLに目覚めた西浦瑠璃子。そんな時、勤務先の東京本社に浮田卓課長が大阪支社から移動してくる。浮田課長は流行のイケオジで、自分のBL推しキャラクター(生もの)にそっくりだった。瑠璃子はBL世界のモブに徹しようと、課長に纏わり付く女子社員を蹴散らしていくのだが、どうやら浮田課長はその男前な性格の瑠璃子にある秘めた感情を寄せていく。
浮田課長はSMのM属性。理想の女王様を探していた。そんな時に部下である瑠璃子の物事をハッキリ言う性格に惹かれ、尚且つヒーロー的に自分を助けてくれる瑠璃子に理想の女王様像を重ねていく。
そんなチグハグな思いを内に秘めた二人が繰り広げる、どこかすれ違っているお話。
この作品はムーンライトノベルズ、魔法のIらんどにも掲載しています。
~ベリーズカフェさんに載せているものを大幅改稿して投稿しています~
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
楓乃めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる