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第7章 不安の夜と、確かな腕の中で
⑥
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玲央さんの情熱が、熱い情熱が、私の中を一気に襲った。
「はぁはぁ……」
玲央さんは、私の上にぐったりと倒れ込む。
「ひより、気持ちよかった?」
「……うん。」
私は、玲央さんをぎゅっと抱きしめた。
もう、この温もりを放したくない。
その日は、あいにくの雨だった。
細かく降り続ける雨に、私は傘を差しながら玲央さんの会社のオフィスビルへと足を運ぶ。
「今日は一緒に帰ろう。」
そう言ってくれた玲央さんとの待ち合わせ。
私の胸はふわりと温かかった。
けれど——。
大通りを渡った向こうに、見覚えのある傘が見えた。
ピンクに小さな花模様。あれって、さくらの傘じゃ……?
(なんで、こんなところに?)
不思議に思って、私は人混みを避けながら近づいた。
……そして聞こえてしまった、信じられない言葉。
「ほんとうに、3万で抱けるの?」
中年の男が、軽い調子でさくらに話しかけていた。
さくらは笑っていた。でもその笑みはどこか強張っていて、目だけが笑っていなかった。
頭が真っ白になった。
「さくらっ!」
私は駆け寄って、さくらの腕を思わず掴んだ。
「……何やってるの? そんな人と、こんなところで……!」
驚いた顔を見せたさくらだったけど、すぐに何かを悟ったように笑みを引きつらせた。
「ひより……」
続けようとした言葉を、私は振り切るように遮った。
「帰ろう。……とにかく、行こう?」
だけど、彼女は私の手を振り払った。
「さくら?」
「邪魔しないでくれる?」
それは私の知っているさくらではなかった。
「なんで?誠一と付き合ってるんじゃないの?」
さくらは首を横に振った。
「セックスしたいんだろうって言われて、ひよりに先越されたから、焦ってそれで……」
「そんな理由で、誠一としたの?」
誠一は、さくらを好きな女だって、言ってた。
「誠一は、さくらを大切にしてくれるよ?」
さくらは黙ったまま、傘を深めに差す。
「抱かれるって、心も抱かれることだよ。」
「---綺麗事言わないで。」
さくらは私を睨んだ。
「お金が必要なの。3万。ひよりにはお金持ちの彼氏がいるから、分からないだろうけど。」
そう言って桜は、その知らないオジサンと、夜の闇に消えていった。
私はそれを止める事ができなくて、ただ桜が差しているピンクの花柄の傘を、見ているしかなかった。
「……っ!」
涙が零れた。自分ってこんなにも無力だったなんて。
その時、後ろから玲央さんの声がした。
「ひより?」
振り向けない私の顔を、玲央さんが覗く。
「泣いてる?どうした?」
玲央さんは、私の頬を涙を拭ってくれた。
「友達が、援助交際してるのを見ちゃって。」
玲央さんは、黙ったままだった。
「私、止めたんだけど。お金が必要だって言われて……それ以上、何も言えなかった。」
「はぁはぁ……」
玲央さんは、私の上にぐったりと倒れ込む。
「ひより、気持ちよかった?」
「……うん。」
私は、玲央さんをぎゅっと抱きしめた。
もう、この温もりを放したくない。
その日は、あいにくの雨だった。
細かく降り続ける雨に、私は傘を差しながら玲央さんの会社のオフィスビルへと足を運ぶ。
「今日は一緒に帰ろう。」
そう言ってくれた玲央さんとの待ち合わせ。
私の胸はふわりと温かかった。
けれど——。
大通りを渡った向こうに、見覚えのある傘が見えた。
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(なんで、こんなところに?)
不思議に思って、私は人混みを避けながら近づいた。
……そして聞こえてしまった、信じられない言葉。
「ほんとうに、3万で抱けるの?」
中年の男が、軽い調子でさくらに話しかけていた。
さくらは笑っていた。でもその笑みはどこか強張っていて、目だけが笑っていなかった。
頭が真っ白になった。
「さくらっ!」
私は駆け寄って、さくらの腕を思わず掴んだ。
「……何やってるの? そんな人と、こんなところで……!」
驚いた顔を見せたさくらだったけど、すぐに何かを悟ったように笑みを引きつらせた。
「ひより……」
続けようとした言葉を、私は振り切るように遮った。
「帰ろう。……とにかく、行こう?」
だけど、彼女は私の手を振り払った。
「さくら?」
「邪魔しないでくれる?」
それは私の知っているさくらではなかった。
「なんで?誠一と付き合ってるんじゃないの?」
さくらは首を横に振った。
「セックスしたいんだろうって言われて、ひよりに先越されたから、焦ってそれで……」
「そんな理由で、誠一としたの?」
誠一は、さくらを好きな女だって、言ってた。
「誠一は、さくらを大切にしてくれるよ?」
さくらは黙ったまま、傘を深めに差す。
「抱かれるって、心も抱かれることだよ。」
「---綺麗事言わないで。」
さくらは私を睨んだ。
「お金が必要なの。3万。ひよりにはお金持ちの彼氏がいるから、分からないだろうけど。」
そう言って桜は、その知らないオジサンと、夜の闇に消えていった。
私はそれを止める事ができなくて、ただ桜が差しているピンクの花柄の傘を、見ているしかなかった。
「……っ!」
涙が零れた。自分ってこんなにも無力だったなんて。
その時、後ろから玲央さんの声がした。
「ひより?」
振り向けない私の顔を、玲央さんが覗く。
「泣いてる?どうした?」
玲央さんは、私の頬を涙を拭ってくれた。
「友達が、援助交際してるのを見ちゃって。」
玲央さんは、黙ったままだった。
「私、止めたんだけど。お金が必要だって言われて……それ以上、何も言えなかった。」
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