15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第8章 二人きりの時間が、なによりも幸せで

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だけど――
玲央さんの作ったマカロニサラダを食べて、私は固まった。

……なにこれ、美味しすぎる。

「……っ」

ゆで卵の半熟具合、塩味のバランス、きゅうりのパリパリ感――

全部がちょうどいい。

しかも、マヨネーズの量も絶妙で、重たくないのにコクがある。

「……っ」

言葉が出ない。

私のハンバーグより、断然美味しい……!

「……ねえ、どうした?」

玲央さんが不思議そうに覗き込んできた。

「……なんでもないです。玲央さん、ほんとに料理上手なんですね。」

「え?ああ、まあ……気分でしかやらないけど。」

なんだか照れてる玲央さんが、ちょっとだけ誇らしげに見える。

「でも、ひよりのハンバーグも最高だったよ。心がこもってる。」

その言葉に、私は少しだけ救われる。

今夜は、ふたりの味が混ざった――
そんな幸せな夕食になった。

食器を洗っていると、横で玲央さんが一枚一枚、丁寧に拭いてくれていた。

「……食洗器、買おうかな。」

突然のひと言に、私は手を止めて振り返った。

「えっ⁉ どうして?」

笑いを含ませて聞き返すと、玲央さんは肩をすくめる。

「だって、二人分でも毎日だと面倒じゃん。しかも、ひよりが働き出したら、疲れるでしょ?」

「でも……贅沢すぎますよ。まだ二人だけなのに。」

「それでも、君の手が荒れたら嫌なんだよ。」

一瞬、胸の奥がぎゅっとなった。

「……優しすぎです。」

私が照れ隠しのようにそう言うと、玲央さんがふっと笑った。

「なんか、こういう時間いいよね。」

水気を拭いた皿を棚に戻しながら、玲央さんが私を見つめる。

そのまっすぐな視線に、ドキッとしてしまう。

「ひより、まだ若いから……正直、料理とか苦手かなって思ってた。」

「え……」

「でも、ちゃんと作れるんだね。丁寧で、気持ちがこもってて。」

そう言って、玲央さんがふっと優しく微笑んだ。

「……ありがとう。」

私は、照れくささをごまかすように、そっと水を止めた。

何気ない日常の中に、ふたりだけの時間が静かに満ちていく。

こういう瞬間を、大切にしたい。心からそう思えた。

「きっと、結婚したらこういうふうに暮らしていくのかな。」

洗い終わった食器を拭きながら、玲央さんがぽつりと呟いた。

私はその横顔を見つめながら、心がふわっと温かくなるのを感じた。

「……ですかね。私、料理、もっと頑張ります。」

玲央さんに、毎日美味しいって言ってもらえるようなご飯を作りたい。

疲れて帰ってきたとき、ほっとできるような、そんなご飯を。

「毎日、ひよりの手作り料理食べてさ。一緒にお風呂入って、同じ布団で寝て……うわー、幸せすぎる。」
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