15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第8章 二人きりの時間が、なによりも幸せで

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「だって、玲央の相手なんでしょう?それ相応の方って言うと……」

そして増々笑う海さん。

「いや、ひよりさんはまだ……」

海さんが言いかけた時だ。

玲央さんの手が、お母さんの肩にそっと置かれた。

「おふくろ。それぐらいにして。」

その声は穏やかだけど、どこか鋭さを含んでいた。

お母さんは一瞬驚いたように目を見開いたけれど、すぐに笑みを浮かべた。

「玲央さん……」

私は思わず、彼の横にぴたりと寄った。

その瞬間、全身の力がふっと抜けていくのが分かった。

――やっと来てくれた。

なんだろう、この安心感。

すると、お母さんが微笑みながら言った。

「あらあら。恥ずかしがり屋さんだったの?」

頬が熱くなる。

確かにさっきまで、逃げるように後ろを向いていたのは私だ。

「いや、そういうわけじゃ……」

もごもご言いかける私の手を、玲央さんがさりげなく取った。

「ひよりは、俺の大事な人だよ。」

その言葉に、空気が一瞬、静かになる。

お母さんは目を細めた。

「そう。ひよりさん、今日はお仕事お休み?そういうラフな格好も似合う方って、素敵ね。」

玲央さんのお母さんは、にこやかに私を褒めてくれたけれど……心臓が跳ねた。

うう、嬉しいけど、なぜかすごくプレッシャーを感じる。

「今日、大学だったの?」

玲央さんが、私の顔を覗き込みながら聞いてきた。

「……はい。」

私は小さく頷いた。

その瞬間だった。

「まあ、大学に通っていらっしゃるの?」

お母さんの声が驚きに満ちる。

「社会人になってから大学に通うなんて、教養豊かな方だわ。」

……あれ? 

私の頬がぴくりと動いた。

お母さんの後ろで、海さんが肩を震わせて笑っていた。

私、現役の大学生なんですけどっ!

「それにしても、本当にお若いわね。」

お母さんは私を見ながら、優雅に微笑んだ。

「まあ、歳の離れたカップルも今はたくさんいますからね。」

なんだかんだ言って、認めてくれてる? 

お母さん……実は私に、ちょっとだけ期待してるんじゃ……?

もしかして――やっと捕まえた嫁を逃がさないとでも思ってる⁉

「ただねえ。」

お母さんがふいに真剣な顔になって、私をちらっと見る。

「お仕事は、ほどほどにしておいてくださいよ。」

「えっ?」

お母さんは、先ほどまでの柔らかな笑みを消し、急に鋭い視線を私に向けた。

「下手に昇進されて、家庭を犠牲にされては困りますからね。」

ピシリと空気が張りつめた。私は一瞬、息を呑む。そんな私の肩越しに、海さんの大きな笑い声が響いた。

「ははっ、母さん、それ早すぎだって。まだ結婚もしてないんだからさ。」

「ですから、今のうちに言っておくんですよ。」

お母さんはぴしゃりと返し、まっすぐ私を見据えていた。

その視線は、ただの“将来の姑”というより、“家庭を守ってきた女”の厳しさを湛えていた。

私は少しだけ躊躇しながらも、口を開いた。
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