15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第8章 二人きりの時間が、なによりも幸せで

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「……あの、私、将来は司書として働きたいと思っていて──」

だがその言葉の途中で、玲央さんの手が私の手をそっと握った。

「ひより。」

その目は静かで、けれど真っ直ぐだった。

「おふくろ、俺はひよりが仕事をしててもいいと思ってるよ。」

一瞬、お母さんの眉がぴくりと動いた。

「俺、家事もするし、協力するから。ひよりがやりたいことを我慢して、俺の妻でいる必要はない。」

お母さんは何も言わず、私たち二人をじっと見た。やがて、ほんの少しだけ頬が緩む。

「いいのよ。いいのよ。司書でも何でもやってちょうだい。でも結婚も出産も大事でしょ。」

お母さんは、まるで当たり前のようにそう言った。

その柔らかな笑顔の奥に、しっかりとした“期待”が透けて見える。

私は言葉に詰まり、黙り込んでしまった。

まるで、もう“嫁”として扱われているような気がした。

私の夢や目標なんて、付け足しに過ぎないみたいに。

「お母さん。」私は静かに口を開いた。「私、まだ二十歳です。」

その言葉に、お母さんの目が見開かれる。

「……二十代の間違いでしょ?」

「違います。現役の大学生です。まだ社会人になったこともありません。」

空気が一瞬、凍りついたように感じた。

お母さんは一瞬、ぽかんとした顔をして、それからようやく言葉を絞り出す。

「本当なの?まだ二十歳って。」

お母さんの声は、さっきまでの穏やかさとは違っていた。

まるで本当に信じられないというように、私をじっと見つめ、そして玲央さん、さらには海さんの方へと視線を巡らせる。

「何言ってるの?玲央は36なんですよ? 二十歳って、子供じゃない。」

その言葉に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

「法律的には、問題ないよ? 母。」

海さんがすかさずフォローを入れるけれど、場の空気はすでに張り詰めていた。

するとお母さんは、はっきりと、冷たい一言を口にした。

「――恋愛ごっこに、息子を巻き込まないでくれる?」

ズキンと胸が痛んだ。

まるで、私の想いも、絆も、ただの“遊び”として切り捨てられたようで。

それでも、私は黙っていられなかった。

唇を震わせながら、必死に言葉を絞り出す。

「……本気です。遊びじゃありません。」

玲央さんが私の肩にそっと手を置く。

それだけで、少しだけ心が強くなれた気がした。

「私は、玲央さんのことを……心から、大切に思っています。」

そう伝えた時、お母さんの目にわずかに揺らぎが走った。

だけど、その真意はまだ、読めなかった。

「ええ、皆若いうちはそう言うんですよ。」

お母さんはゆっくりとため息をついた。

どこか達観したような、でも冷ややかな眼差しで私を見つめる。

「それで就職でもしてみなさい。夢を追いかけるように仕事して……そうしてるうちに、他の人との出会いもあるでしょう。若さって、そういうものよ。」
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