15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第10章 15歳差の恋、いま永遠になる

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私が小声で聞くと、母はちらりと私を見て、苦笑まじりに言った。

「お父さんがね、見栄張ったのよ。」

「え……お父さんが?」

「『娘が年上の立派な人を連れてくるんだろう?なら、こちらも失礼のないように』って。あの人なりの緊張よ。」

私は思わず吹き出しそうになった。

普段は無頓着なくせに、こういうときだけ妙に張り切る父の姿が目に浮かぶ。

でも、それはつまり──

この出会いを、本気で受け止めてくれているということ。

応接間に戻ると、玲央さんは掛け軸の方に目をやりながら、どこか居心地悪そうに座っていた。

私は隣にそっと腰を下ろして、彼の手にそっと触れる。

「大丈夫。……緊張してるの、うちの家族も一緒だから。」

玲央さんは、ふっと息をつきながら、小さく笑った。

「お父さん、この度はお時間を取って頂き……」

「ゴホンっ!」

玲央さんの丁寧な挨拶が始まるや否や、父がわざとらしく咳ばらいをした。

まるで“まだその話は早い”とでも言いたげなタイミング。

「まずは、お茶でも。」

「はい、頂きます。」

玲央さんが差し出された湯飲みにそっと手を添える。

けれど、その指先がわずかに震えているのを、私は見逃さなかった。

……そして、玲央さんだけじゃない。

父の湯飲みを持つ手も、ほんの少し震えていた。

「お父さん、本日はお話があって……」

「ゴホンっ、ゴホンっ。」

再び咳払い。今度はダブルで。

そのままスッと立ち上がると、応接間の床の間に飾られた花瓶を指差した。

「……この花は、山茶花です。冬に咲くけれど、非常に長く持つんですよ。」

ん? 話の流れどこ行った?

父の“もったいぶり”が空回りしていて、私は思わず笑いそうになる。

そして次の瞬間、父はわざとらしく真面目な表情を作りながら言った。

「聞くところによりますと……社長ご一家とのことで。」

あれ? 敬語?

父の声が、微妙にかしこまりすぎている。

「はい。一ノ瀬グループの一社に勤めております。私はその副社長をしております。」

玲央さんは、真剣にうなずきながら応える。

その姿はやっぱり“大人の男”で、私はちょっと誇らしくなった。

父の口元がピクッと動いた。

「副社長、とは……すごいですね。」

と言いつつ、声が少し上ずっている。

たぶん、父なりに“相手の器を見極めてやろう”と思っていたのに、思ったより大物が来てしまって焦っているのだ。

そのやりとりを黙って見ていた母が、クスッと笑いながらお茶を足してくれた。

「あら、あなた、肩の力入りすぎじゃない?」

「う、うるさいな……!」

私と玲央さんは、思わず顔を見合わせて小さく笑った。

まだ始まったばかり。

だけどこの空気なら、ちゃんと伝えられる気がする。

“大切にします”という言葉だけじゃない、

本当に信じてもらえるような想いを、きっと──
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