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第3部 見捨てられた令嬢、伯爵邸で咲く
⑤
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背後から優しい声がかけられ、私はびくりと肩を跳ねさせた。
振り返ると、そこには優雅な笑みを浮かべるお母様が立っていた。
――まずい。見られてしまった。
「あなたも本が好きなの?」
「ええ、実は……」
正直にそう答えると、お母様はますます優しい顔をして言った。
「そう。普段は何を読むの?」
その物腰に、私は一瞬、自分の母と話しているのではないかと錯覚した。
本当に、あたたかく、包み込んでくれるような優しさだった。
「物語を読んでいます。」
私がそう言うと、お母様はふんわりと笑って頷いた。
「そう。ここにも、そういう本があるのよ。」
そう言って書棚の中から一冊を取り出した。革の装丁に銀の縁取りがされた、美しい本だった。
「これは、騎士の物語。なかなか面白かったわ。」
「お母様も読まれたんですか?」
私が驚いて聞くと、お母様は楽しそうに目を細めた。
「もちろん。自分が騎士になったつもりで、読んでいたのよ。」
その言葉が可笑しくて、でもとても素敵で――私は自然と笑みを浮かべた。そしてその本を受け取り、そっと手のひらで撫でる。
「お母様は、普段は何をお読みになるんですか?」
興味があってたまらなかった。こんなに素敵な方と、同じものを楽しめるなんて――もっと仲良くなれる気がした。
お母様は少し考えるように目を細めたあと、優しい声で答えてくれた。
「地図や交易に関する書物を読んでいるわ。あと、歴史書も。」
お母様の言葉に、私は思わず感嘆の息を漏らした。
「流石だと思います……お父様を支えるため、ですか?」
私の問いに、お母様はふっと目を細めて微笑んだ。
「そうね。夫は街の治安維持の功績で伯爵の位を授けられたの。でも、私にはそれを支える知識が何もなかったのよ。」
そう言って、そっと手を本の背表紙に添えた。
「だから、もうひたすら勉強の毎日だったわ。」
その言葉には、どこか誇りのような響きがあった。
誰にも言わず、陰で努力を重ねてきたのだろう。
――それは、ただの苦労ではない。
街や家族、そして夫を思う、深い愛情だったのかもしれない。
「素敵です、お母様。」
自然と、そんな言葉が口をついて出ていた。
「私も、勉強します。」
そう口にした瞬間、お母様は優しく私の背中をさすってくれた。
「無理しないでね。何事も、自分の歩幅で進むのが一番よ。」
その手のぬくもりに、胸がじんわりと温かくなった。
お母様は、努力の尊さと、愛情の深さを身をもって教えてくれている。
――私も、強く優しい伯爵夫人になりたい。
そのための一歩を、今ここから踏み出すのだ。
振り返ると、そこには優雅な笑みを浮かべるお母様が立っていた。
――まずい。見られてしまった。
「あなたも本が好きなの?」
「ええ、実は……」
正直にそう答えると、お母様はますます優しい顔をして言った。
「そう。普段は何を読むの?」
その物腰に、私は一瞬、自分の母と話しているのではないかと錯覚した。
本当に、あたたかく、包み込んでくれるような優しさだった。
「物語を読んでいます。」
私がそう言うと、お母様はふんわりと笑って頷いた。
「そう。ここにも、そういう本があるのよ。」
そう言って書棚の中から一冊を取り出した。革の装丁に銀の縁取りがされた、美しい本だった。
「これは、騎士の物語。なかなか面白かったわ。」
「お母様も読まれたんですか?」
私が驚いて聞くと、お母様は楽しそうに目を細めた。
「もちろん。自分が騎士になったつもりで、読んでいたのよ。」
その言葉が可笑しくて、でもとても素敵で――私は自然と笑みを浮かべた。そしてその本を受け取り、そっと手のひらで撫でる。
「お母様は、普段は何をお読みになるんですか?」
興味があってたまらなかった。こんなに素敵な方と、同じものを楽しめるなんて――もっと仲良くなれる気がした。
お母様は少し考えるように目を細めたあと、優しい声で答えてくれた。
「地図や交易に関する書物を読んでいるわ。あと、歴史書も。」
お母様の言葉に、私は思わず感嘆の息を漏らした。
「流石だと思います……お父様を支えるため、ですか?」
私の問いに、お母様はふっと目を細めて微笑んだ。
「そうね。夫は街の治安維持の功績で伯爵の位を授けられたの。でも、私にはそれを支える知識が何もなかったのよ。」
そう言って、そっと手を本の背表紙に添えた。
「だから、もうひたすら勉強の毎日だったわ。」
その言葉には、どこか誇りのような響きがあった。
誰にも言わず、陰で努力を重ねてきたのだろう。
――それは、ただの苦労ではない。
街や家族、そして夫を思う、深い愛情だったのかもしれない。
「素敵です、お母様。」
自然と、そんな言葉が口をついて出ていた。
「私も、勉強します。」
そう口にした瞬間、お母様は優しく私の背中をさすってくれた。
「無理しないでね。何事も、自分の歩幅で進むのが一番よ。」
その手のぬくもりに、胸がじんわりと温かくなった。
お母様は、努力の尊さと、愛情の深さを身をもって教えてくれている。
――私も、強く優しい伯爵夫人になりたい。
そのための一歩を、今ここから踏み出すのだ。
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