家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第5部 恋のまねごとと、伯爵の怒り

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「ええ。いつも甘やかされて、綺麗だって褒められて、望んだものは何でも手に入ってきた。だからこそ、初めて手に入らなかったものが悔しくて仕方ないのよ。」

セドリックは深く息を吐いた。

「僕は、君を手に入れられて幸運だった。けれど、君の妹を――ルシアを、ほんの少しでも守ってやれたらと思っていた。妹があんなにもひねくれてしまう前に……。」

「もう遅くはないわ。」

私はセドリックのそばに座り、彼の手をそっと握った。

「あの子はまだ若い。これから何度でもやり直せる。ただ、正しい道に戻るには……一度、自分の足で立たなきゃいけないの。」

セドリックは私の手をきゅっと握り返し、ゆっくりと頷いた。

「お父上には、結婚の話は見送った方がいいと伝えよう。」

セドリックが静かに言った。

「そうなの?」

私は思わず尋ねる。

「あんな妹でも、嫌がる相手と結婚させるのは、気の毒だ。」

その声に、怒りや苛立ちは微塵もなかった。ただ、冷静に、そしてどこか優しさを含んでいた。

私は胸がきゅっと締めつけられるのを感じた。

「セドリック……あなたって、やっぱり優しい人ね。」

彼は照れくさそうに目を逸らした。

「君の妹だろ。放ってはおけないよ。」

その一言に、私は目頭が熱くなった。

自分の家族のことでさえ、私はこんなふうに穏やかに考えられなかったのに、セドリックはまっすぐに向き合ってくれている。

「ありがとう。私、あなたと結婚して本当によかった。」

セドリックは微笑み、そっと私の手を包んだ。

ルシアとの関係を聞くのは、今しかない――そう思った。

「……ルシアに手紙を送っていたのね。」

私がそう切り出すと、セドリックは少しも動じる様子を見せず、ただ静かに頷いた。

「送ったよ。まだ若かった頃に、ね。」

その落ち着いた態度に、私は少しだけ胸がざわついた。

だが、それでも真実を知りたかった。

「どうして、彼女に?」

「君の家に婿入りすることになった時、候補として君とルシア、どちらかの名前が挙がった。私はそのとき、妹さんのことをよく知らなかった。だから、形式的に……手紙を出したんだ。」

「形式的に……」

「そう。だけど返ってきた言葉は、冷たいものだった。まるで、自分を見下すような――いや、それ以上に、心を踏みにじられるような言葉だった。」

セドリックは、目を伏せながら続けた。
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