婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒

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6.財政悪化

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「嘘よ。あなたは私を、自分の物にしようとしているわ――」

震える声でそう言い放った瞬間、クリフはふっと微笑んだ。

その微笑みは、かつての穏やかだった彼の面影を残しながらも、どこか狂気じみていた。

「よく私を理解している。さすが、かつての婚約者だけのことはあるね。」

その瞬間、背筋が凍るのを感じた。

――このままでは、本当に囚われてしまう。

逃げなければ。何としてでも、ここから……!


私は必死に体を捩った。

「離して!私は、行かない!」

だが、無駄だった。

左右から私の腕を押さえる護衛たちは、淡々と私の抵抗を受け流すだけ。

まるで人形のような無表情で、命令に従っているだけだった。


「では、行きましょう。」

クリフのその言葉と同時に、私の体は強引に引きずられるようにして、宮殿の奥へと運ばれていった。

長い廊下を進み、曲がりくねった階段を登った先。

私が連れて行かれたのは、見覚えのある場所だった。

――クリフの、自室。

「ここは……」

その場に立ち尽くす私に、クリフはゆっくりと歩み寄り、扉を静かに閉めた。鍵の音が響く。

私はその音に、鼓膜を刺されるような不安を覚えた。

「ここなら、誰にも邪魔されない。」

そう言って振り向いた彼の目は、静かで、けれど底知れないものを湛えていた。

私を独占しようとする男の瞳。


「何が望みなの?私は、あなたのものにはならないわ。」

私の声は震えていた。でも、強い意志を込めた。

グレイブとの絆が、私の心を支えていた。

クリフはその言葉に少しだけ目を伏せ、深くため息をついた。

「アーリン。君を失ってから、ずっと後悔していた。君がいない世界は、虚ろで、冷たくて……私は、どうしても戻ってきてほしかったんだ。」

「……その気持ちが本当だとしても、力で私をねじ伏せようとするのは違う。」

「違うとわかっていても、止められないんだよ。君を手放したくない。」

その声には、ほんのわずかに、かつてのクリフの面影があった。

優しくて、真っ直ぐで、でも今はそれが歪んでいる。

――哀しい人。


私はそっと目を伏せた。

「クリフ。これは、もう愛じゃない。あなたが私に抱いているのは、執着よ。」

返ってきたのは沈黙だけだった。

そして私はその静けさの中で、逃げ出す道を、必死に探し始めていた。
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