婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒

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6.財政悪化

「申し訳ございません。私には事実上の夫がいます。」

私ははっきりと断るつもりで言葉を放った。けれど、クリフの表情は変わらなかった。

「だが、グレイブとはまだ夫婦の契りを結んでいないだろう?」

その言葉に思わずドキリとした。どうしてそれを知っているのか。

「なぜ、それを……?」

問い返す私に、クリフは静かに答えた。

「あの者の性格は知っている。アーリンの父親に許されない身で結婚はしないだろうし、結婚しないうちはアーリンに手を出さないはずだ。」

その言葉に、私は胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。

クリフはまるで、私とグレイブのことを旧友のように知り尽くしているのだ。

剣術の鍛錬を共にし、互いの心を理解しているのだろう。

「アーリン。俺が幸せにしてあげるよ。」

クリフの瞳は真剣そのものだった。私だけを見つめ、強く言い切るその言葉に、胸がざわつく。

その時、護衛たちが突然私の周りを固めた。慌てて身を引こうとするけれど、囲まれてしまえば逃げられない。

「離れてください!」必死で声を上げるけれど、彼らは微動だにしない。

心の中で、私は叫んだ。どうしてこんなことに……。

クリフはまるで、私を手中に収めたかのように微笑んだ。

「アーリン、君は俺のものだ。」

その言葉が、暗い牢獄の扉の音と重なって響いた。

私はもう、自由を奪われてしまったのかもしれない。

だが、諦めるわけにはいかない。

私は自分の幸せを、もう一度自分の手で掴まなければならないのだ。

「アーリンを、私の部屋に連れて行け。」

その低く沈んだ声に、私は背筋が凍る思いがした。

胸の奥に嫌な予感が満ち、全身がこわばる。――無理やり、襲われる。

そんな恐怖が、脳裏をかすめた。

「お止め下さい!」

私は声を張り上げ、一歩、後ろへ下がった。

だが、その瞬間だった。

背後から伸びてきた護衛の手が、私の腕を掴む。

「離して……!」

もがこうとしたが、力の差は歴然だった。


「大丈夫だよ、アーリン」

クリフはゆっくりと立ち上がりながら、私に微笑んだ。

その目はどこまでも深く、どこまでも狂おしく――、優しさとも執着ともつかない色をしていた。

「君が求めるまで、私は何もしない。」

――その言葉に、私は息を呑んだ。

優しい声だった。けれど、その優しさの奥には、私を手放すつもりなど一切ないという決意がにじんでいた。

私は首を横に振った。

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