274 / 304
第8章
第410話 番外編:テアの部屋②(ほんのちょい※)
しおりを挟む
(まぁテアの部屋で勉強させてもらえばいいもんね。遊びに行くんじゃないから大丈夫、大丈夫)
自分に言い訳しながら勉強道具を持ってテアの部屋に行くと、そこには彼のイメージカラーである青を基調に素敵にコーディネートされた空間が広がっていた。
「ふわぁ、オシャレなお部屋!!!」
「そうかな~? 褒めてもらえてうれしい~」
思っていた通り、桃のようないい香りもする。
そして何と言っても目を引くのが、大きな鏡のついたゴージャスなドレッサーと、天板がガラスになっているコレクションテーブルで、中の小さく区切った仕切りの一つ一つに宝石が入っていてとてつもなく美しい。
「すっごい数の宝石だね」
「なんかね~寝ている間に宝石がよく枕元に落ちてるから、それを飾ってるんだよぉ。そういうことってよくあるでしょ~?」
「うう~ん……僕はないかな」
すると、コレクションテーブルの前のソファに腰を下ろしたリリーが言う。
「どうせテアが仕舞い忘れたのが枕元に転がってただけでしょ? 僕もさ、気づいたらすぐ部屋中に物が転がってて足の踏み場がなくなるんだよ。あれってほんと不思議だよね」
(いや、それはリリーが自分で散らかしてるだけだと思うけど……)
「そうかナ~。部屋は綺麗なほうが好きだから片付けは毎日ちゃんとしてるのにぃ」
そんな会話をしながら、僕がいつものようにみんなの分のお茶を淹れようとキッチンに向かうと、テアが止めた。
「オヒメサマがここのキッチン使うと魔力を使いすぎて疲れちゃうかもしれないから、今日はテアがお茶を淹れるよ。向こうで待ってて~」
「お茶淹れるくらいなら平気だと思うけど。ありがとっ」
「そうだね。前僕の部屋でパンケーキ作って倒れたことがあるし、やめておいた方がいいよ。あ、テア、僕のはこの前のアレもつけて!」
「リリー、アレ気に入ったの? いいよ~」
「あれって何?」
「これだよ~」と言ってテアが見せてくれたのは、紫色のジャムが詰まった瓶だった。
「メガネも試してみなよ。テアオススメの甘酸っぱいジャムで、濃い紅茶とよく合うんだよ。ジャム舐めながら紅茶を飲むんだって」
(へぇ、そんな飲み方があるのか……)
「やったことないけど、おいしそぅ」
「これね~美味しいだけじゃなくて栄養たっぷりだからお肌にもいいんだよォ。た~っぷり添えておくね」
紅茶を待ってる間、センスのいい部屋をあちこち見て楽しんでいると、少し開いた寝室のドアの隙間からコロコロ笑いながら妖精がベッドで何かしているのが見えた。枕の下に何か隠しているみたい。
寝室に入り、そっと近寄って枕を持ち上げてみると、そこにはピンクの宝石が落ちていた。
「テア、枕のとこにピンクの宝石があるよ」
「あれ~? まだあった? 今朝はブルーグリーンのトルマリンを見つけたからもうないと思ってたんだけど~」
「妖精が今置いて行ったんだよ」って伝えるべきだろうかと迷っていたら、妖精が「し~っ」とイタズラ顔で人差し指を立て、内緒のポーズをしたから言わないことにした。
妖精も窓の隙間から出て行ったので、テアたちのいる部屋に戻ろうとした時だった。ガラガラと積まれた物が落ちるような音がし、何かが足元に転がった。
「何だろ? 縄?」
拾ってみると、柔らかいスライムみたいな触り心地の変な縄だった。こんなにプニプニした縄じゃ使いにくそうだけど、何に使うんだろ。
どこから落ちてきたのか見回せば、クローゼットの扉が半開きになっていることに気づいた。
(クローゼットの中身が崩れて出てきたのかも。戻しておこう)
「あ、そうだ。寝室の横のクローゼットに大人の魔道具のコレクションがあるんだけど、後で見せてあげるね~。触るだけで起動するやつならキルナサマでも簡単に使えると思うから貸してあげるよ~」
テアの声が寝室の扉の向こうから聞こえてくる。
けど……返事ができない!!
手に持った縄? は触れた瞬間に僕の体を拘束し一瞬にして身動きが取れなくなってしまった。ちょうどそこにあったベッドにボフンと倒れた体が受け止められたことで床に激突することは避けられたけども、どう考えてもやばい。体はぐるぐる巻きに縛られて口も猿轡みたいになってて声が出せない。
「んーっ、んーーー!!!」
(た、助けてぇ~!!!)
「あれ? キルナサマは~?」
「寝室から戻ってこないね。寝ちゃったんじゃない? 僕のお気に入りを教えてあげるまでもなかったね。あぁ、このジャムやっぱり美味しい~! 紅茶と別で舐めるのもいいけど、僕は中に入れたほうが好きだね」
「じゃあこのまま寝かせといてあげよっかぁ。ふふふ、リリーはほんと甘いの好きだネ~。テアは紅茶とジャムは別々の方が甘みが調節できるから好き~」
なんてこと! 二人は僕がまずい状況になってることに気づいてない。扉を開けっぱなしにしておけばよかったのに、入った時に閉めちゃったから見えないんだ。
力を入れてもガッチリ巻き付いた縄は全然解けない。
しかもこの縄生きてるみたいにちょっと動き出したような……あ、ちょっ、そんなとこでモゾモゾ動かれたら……
「っん……っ……ぁ……」
(ふえええん、これ、どうやったら解けるの!?)
自分に言い訳しながら勉強道具を持ってテアの部屋に行くと、そこには彼のイメージカラーである青を基調に素敵にコーディネートされた空間が広がっていた。
「ふわぁ、オシャレなお部屋!!!」
「そうかな~? 褒めてもらえてうれしい~」
思っていた通り、桃のようないい香りもする。
そして何と言っても目を引くのが、大きな鏡のついたゴージャスなドレッサーと、天板がガラスになっているコレクションテーブルで、中の小さく区切った仕切りの一つ一つに宝石が入っていてとてつもなく美しい。
「すっごい数の宝石だね」
「なんかね~寝ている間に宝石がよく枕元に落ちてるから、それを飾ってるんだよぉ。そういうことってよくあるでしょ~?」
「うう~ん……僕はないかな」
すると、コレクションテーブルの前のソファに腰を下ろしたリリーが言う。
「どうせテアが仕舞い忘れたのが枕元に転がってただけでしょ? 僕もさ、気づいたらすぐ部屋中に物が転がってて足の踏み場がなくなるんだよ。あれってほんと不思議だよね」
(いや、それはリリーが自分で散らかしてるだけだと思うけど……)
「そうかナ~。部屋は綺麗なほうが好きだから片付けは毎日ちゃんとしてるのにぃ」
そんな会話をしながら、僕がいつものようにみんなの分のお茶を淹れようとキッチンに向かうと、テアが止めた。
「オヒメサマがここのキッチン使うと魔力を使いすぎて疲れちゃうかもしれないから、今日はテアがお茶を淹れるよ。向こうで待ってて~」
「お茶淹れるくらいなら平気だと思うけど。ありがとっ」
「そうだね。前僕の部屋でパンケーキ作って倒れたことがあるし、やめておいた方がいいよ。あ、テア、僕のはこの前のアレもつけて!」
「リリー、アレ気に入ったの? いいよ~」
「あれって何?」
「これだよ~」と言ってテアが見せてくれたのは、紫色のジャムが詰まった瓶だった。
「メガネも試してみなよ。テアオススメの甘酸っぱいジャムで、濃い紅茶とよく合うんだよ。ジャム舐めながら紅茶を飲むんだって」
(へぇ、そんな飲み方があるのか……)
「やったことないけど、おいしそぅ」
「これね~美味しいだけじゃなくて栄養たっぷりだからお肌にもいいんだよォ。た~っぷり添えておくね」
紅茶を待ってる間、センスのいい部屋をあちこち見て楽しんでいると、少し開いた寝室のドアの隙間からコロコロ笑いながら妖精がベッドで何かしているのが見えた。枕の下に何か隠しているみたい。
寝室に入り、そっと近寄って枕を持ち上げてみると、そこにはピンクの宝石が落ちていた。
「テア、枕のとこにピンクの宝石があるよ」
「あれ~? まだあった? 今朝はブルーグリーンのトルマリンを見つけたからもうないと思ってたんだけど~」
「妖精が今置いて行ったんだよ」って伝えるべきだろうかと迷っていたら、妖精が「し~っ」とイタズラ顔で人差し指を立て、内緒のポーズをしたから言わないことにした。
妖精も窓の隙間から出て行ったので、テアたちのいる部屋に戻ろうとした時だった。ガラガラと積まれた物が落ちるような音がし、何かが足元に転がった。
「何だろ? 縄?」
拾ってみると、柔らかいスライムみたいな触り心地の変な縄だった。こんなにプニプニした縄じゃ使いにくそうだけど、何に使うんだろ。
どこから落ちてきたのか見回せば、クローゼットの扉が半開きになっていることに気づいた。
(クローゼットの中身が崩れて出てきたのかも。戻しておこう)
「あ、そうだ。寝室の横のクローゼットに大人の魔道具のコレクションがあるんだけど、後で見せてあげるね~。触るだけで起動するやつならキルナサマでも簡単に使えると思うから貸してあげるよ~」
テアの声が寝室の扉の向こうから聞こえてくる。
けど……返事ができない!!
手に持った縄? は触れた瞬間に僕の体を拘束し一瞬にして身動きが取れなくなってしまった。ちょうどそこにあったベッドにボフンと倒れた体が受け止められたことで床に激突することは避けられたけども、どう考えてもやばい。体はぐるぐる巻きに縛られて口も猿轡みたいになってて声が出せない。
「んーっ、んーーー!!!」
(た、助けてぇ~!!!)
「あれ? キルナサマは~?」
「寝室から戻ってこないね。寝ちゃったんじゃない? 僕のお気に入りを教えてあげるまでもなかったね。あぁ、このジャムやっぱり美味しい~! 紅茶と別で舐めるのもいいけど、僕は中に入れたほうが好きだね」
「じゃあこのまま寝かせといてあげよっかぁ。ふふふ、リリーはほんと甘いの好きだネ~。テアは紅茶とジャムは別々の方が甘みが調節できるから好き~」
なんてこと! 二人は僕がまずい状況になってることに気づいてない。扉を開けっぱなしにしておけばよかったのに、入った時に閉めちゃったから見えないんだ。
力を入れてもガッチリ巻き付いた縄は全然解けない。
しかもこの縄生きてるみたいにちょっと動き出したような……あ、ちょっ、そんなとこでモゾモゾ動かれたら……
「っん……っ……ぁ……」
(ふえええん、これ、どうやったら解けるの!?)
218
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 毎日更新?(笑)絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。