34 / 108
騎士学校編
第34話 謙虚も過ぎれば
しおりを挟む
「闘技大会に僕が?!」
卒業試験前日、僕は担任のライアン先生に呼び出され、各国の騎士学校、冒険者養成所などが参加する〈世界闘技大会〉にインヒター王国騎士学校の代表として出場してほしいと頼まれたのだった。
世界闘技大会は有事が無い限り2年に一度行われ、優勝校に多額の賞金が入るだけでなく、観客は合法的に賭けができるというなんとも魅力的な大会なのだ。しかし一方で、試合中は一対一の勝負であるが故に実力差があり過ぎると命を落としてしまうことも。
「卒業試験が終わったらすぐ隣国のアジバロイド共和国に向かってほしい。他のメンバーは既に選出済みだ」
「誰々が行くんです?」
そんな危険な大会には選出されるのも嫌なはず。となれば貴族ではなく平民の出で参加しそうな奴は――。
「ボクだよおおん!」
やはりダリオンだった。
闘技大会は個人戦と団体戦があるわけだが、一番の見どころ、盛り上がるところは団体戦だ。男女混合で先鋒、次鋒、中堅、大将の4人で戦う。それぞれの勝利数によってチームの勝敗が決まる。
「あと、2人か……」
「女子枠はイシュクルテと、補欠枠でエリシアだよ」
なるほど、エリシアは貴族出身だけど補欠枠なら安全というわけか。
「残る男子枠だが……」
ライアン先生は顰《しか》め面を窓の外へと向けた。そこには窓の縁に掴まり、至って真剣な顔で懸垂をするアレクともう1人の姿があった。彼らは僕と目が合うと「出番だ」と言わんばかりに窓を開けて入ってきた。
「よろしくねバルト」
「よ、よろしく」
「きちんと顔を合わせるのは初めてだな。俺はAクラスのフィンリス・サルヴェールだ」
「ど、どうも」
素晴らしい筋肉からパワー系なのだろうというのが窺える。頼り甲斐がありそうだ。
「男子の補欠を決めたいんだが、立候補するものはいるか?」
「はいはーい! ボクに決まっているでしょう」
「そうだな、男子の補欠枠はダリオンとする。以上、解散!」
彼はなぜ自分から参加して補欠枠に回ったのか。皆のスキルが分からない以上はなんとも言えないけど。
その日からは卒業試験に向けての勉強と、闘技大会へ向けての計画を練った。相手チームの情報が無いとなんとも言えないので、とりあえず順番を考えることにした。
「バルトは大将で決まりだろう?」
「「「「うん」」」」
「ええ……」
「当たり前じゃないか。相手は1番強い奴を大将にもってくるんだぞ」
「大将の前に相手より勝ち星を増やして、それでバルトが引き分けてくれたらチームとしては勝ちでしょ」
かなり理に叶った作戦だ。
「でも、引き分けた時は?」
「代表戦になるな」
「その時は誰が出るのさ」
「そうなったら私にお任せくださいまし」
自信満々に手を挙げたのはエリシアだった。
作戦を練るに当たって、それぞれのスキルの大まかな説明をした。
アレクは【ドラゴンの力】古代ドラゴンの力を一部だけ借りることができる。
ダリオンは【時間操作】2秒間だけ時間を自由に動かせるが、発動してから1週間のクールタイムが必要。
フィン(フィンリス)は【精霊召喚】自然界の精霊と契約し、その力を借りることができる。
イシュクルテは【闇に堕とす者】対象のスキルや能力を一時的に封じ込めることができる。
そしてエリシアのスキルは――
「私の【星の予言者】で占って差し上げますわ。誰が出れば勝てるのかをね」
【星の予言者】それはその辺の易者などとは格が違う。その的中率はほぼ100パーセントという予言とは名ばかりの、未来視に近いスキルなのだ。
このスキルのことを聞いて、ようやく彼女が補欠枠に入ったのを納得した。
「エリシアがいるなら、今作戦考える意味なくね?」
「まあ、確かにそうですわね。占いに回数制限があるわけでも無いですし」
「最強ではないか」
「貴女に言われると何だか癪ですわ!」
確かに、この中で誰が最強かと聞かれれば間違いなくイシュクルテだろう。敵じゃなくて良かった、と心の底からそう思える。
卒業試験前日、僕は担任のライアン先生に呼び出され、各国の騎士学校、冒険者養成所などが参加する〈世界闘技大会〉にインヒター王国騎士学校の代表として出場してほしいと頼まれたのだった。
世界闘技大会は有事が無い限り2年に一度行われ、優勝校に多額の賞金が入るだけでなく、観客は合法的に賭けができるというなんとも魅力的な大会なのだ。しかし一方で、試合中は一対一の勝負であるが故に実力差があり過ぎると命を落としてしまうことも。
「卒業試験が終わったらすぐ隣国のアジバロイド共和国に向かってほしい。他のメンバーは既に選出済みだ」
「誰々が行くんです?」
そんな危険な大会には選出されるのも嫌なはず。となれば貴族ではなく平民の出で参加しそうな奴は――。
「ボクだよおおん!」
やはりダリオンだった。
闘技大会は個人戦と団体戦があるわけだが、一番の見どころ、盛り上がるところは団体戦だ。男女混合で先鋒、次鋒、中堅、大将の4人で戦う。それぞれの勝利数によってチームの勝敗が決まる。
「あと、2人か……」
「女子枠はイシュクルテと、補欠枠でエリシアだよ」
なるほど、エリシアは貴族出身だけど補欠枠なら安全というわけか。
「残る男子枠だが……」
ライアン先生は顰《しか》め面を窓の外へと向けた。そこには窓の縁に掴まり、至って真剣な顔で懸垂をするアレクともう1人の姿があった。彼らは僕と目が合うと「出番だ」と言わんばかりに窓を開けて入ってきた。
「よろしくねバルト」
「よ、よろしく」
「きちんと顔を合わせるのは初めてだな。俺はAクラスのフィンリス・サルヴェールだ」
「ど、どうも」
素晴らしい筋肉からパワー系なのだろうというのが窺える。頼り甲斐がありそうだ。
「男子の補欠を決めたいんだが、立候補するものはいるか?」
「はいはーい! ボクに決まっているでしょう」
「そうだな、男子の補欠枠はダリオンとする。以上、解散!」
彼はなぜ自分から参加して補欠枠に回ったのか。皆のスキルが分からない以上はなんとも言えないけど。
その日からは卒業試験に向けての勉強と、闘技大会へ向けての計画を練った。相手チームの情報が無いとなんとも言えないので、とりあえず順番を考えることにした。
「バルトは大将で決まりだろう?」
「「「「うん」」」」
「ええ……」
「当たり前じゃないか。相手は1番強い奴を大将にもってくるんだぞ」
「大将の前に相手より勝ち星を増やして、それでバルトが引き分けてくれたらチームとしては勝ちでしょ」
かなり理に叶った作戦だ。
「でも、引き分けた時は?」
「代表戦になるな」
「その時は誰が出るのさ」
「そうなったら私にお任せくださいまし」
自信満々に手を挙げたのはエリシアだった。
作戦を練るに当たって、それぞれのスキルの大まかな説明をした。
アレクは【ドラゴンの力】古代ドラゴンの力を一部だけ借りることができる。
ダリオンは【時間操作】2秒間だけ時間を自由に動かせるが、発動してから1週間のクールタイムが必要。
フィン(フィンリス)は【精霊召喚】自然界の精霊と契約し、その力を借りることができる。
イシュクルテは【闇に堕とす者】対象のスキルや能力を一時的に封じ込めることができる。
そしてエリシアのスキルは――
「私の【星の予言者】で占って差し上げますわ。誰が出れば勝てるのかをね」
【星の予言者】それはその辺の易者などとは格が違う。その的中率はほぼ100パーセントという予言とは名ばかりの、未来視に近いスキルなのだ。
このスキルのことを聞いて、ようやく彼女が補欠枠に入ったのを納得した。
「エリシアがいるなら、今作戦考える意味なくね?」
「まあ、確かにそうですわね。占いに回数制限があるわけでも無いですし」
「最強ではないか」
「貴女に言われると何だか癪ですわ!」
確かに、この中で誰が最強かと聞かれれば間違いなくイシュクルテだろう。敵じゃなくて良かった、と心の底からそう思える。
59
あなたにおすすめの小説
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』
KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。
ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。
目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。
「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。
しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。
結局、悠真は渋々承諾。
与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。
さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。
衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。
だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。
――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる