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第2章 テラドラックの怒り
第67話 時の人
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「……それは、確かな情報なのですか?」
場所はインヒター王国王都、憲兵団本部。団長のラウル・カスティエは細く冷めたい目を落とした。
「まだ分からない。しかし、これが事実だった場合、我々はどんな手を使ってでも国王を阻止しなくてはならない」
「それでボクにスパイをしろ、と?」
若兵は睨むようにして団長を見上げる。
冗談じゃない。王室の人間をスパイするならまだしも、親友をなんて。
「これも仕事だダリオン。騎士学校時代から仲の良い君なら、何の疑いもされずバルト・クラストを監視できるだろう」
「彼は悪事に手を染めるような男では――」
「それを確かめるのが君の仕事だ。頼んだぞ」
まったく、何もわかっちゃいない。
◇◇◇◇◇
リラさんの裁判から、早くも2ヶ月が経とうとしていた。相も変わらずオーム領は平和そのもの。海洋騎士団のおかげか、海賊の往来も多少は減少しつつあり、僕も多少は貢献している。
未だに警備隊のひと枠は空席のままだが、ダリウス少尉がここ一ヶ月の間に50人もの海賊や密猟者を逮捕しているので、検挙数てきに問題は無いらしい。
僕も頑張らなければと思うのだが、教育期間が終わったので完全に個人戦状態。なかなか成績が伸び悩んでいた。
そんな時、海将が皆を集めた。
「本日の勤務前に新しく入団した者を紹介する」
「王都憲兵団から参りました。ダリオン・エルドリスと申します」
まさかまさかの新入りはダリオンだった。
お忘れの方もいるかもしれないので説明をしよう。彼とは騎士学校時代、寮で同室になったばかりか、何もしていないのに懐かれ、終わってみれば親友になっていた。と、まあ簡単に言えばこんな感じの仲だ。
朝礼が終わった後、僕は一目散に彼に声をかけようとした。しかし、横にいたキャプテンは僕の腕をグッと引き寄せ止めた。
「バルト、今はやめておけ」
いつにもなく真剣な眼差しで僕を見るキャプテン。その理由がわからず首を傾げて見せる。
「周りを見てみろ」
集まった他の団員らは何かぶつぶつと話し、訝しげにダリオンを見ていた。
「ちっ、憲兵団かよ。どうせ監査にでも来たんだろうよ」
後から聞いた話だが、憲兵団出身者はこうなる運命らしい。というのも、騎士団や他の公的機関を取り締まるのが憲兵団の役目だからなのだ。易い規則違反も見逃さず、それを本部に報告されると減給や謹慎などの罰則が与えられる。
「噂には聞いてたけどあそこまで嫌われているとは……」
「話すなら仕事終わりか、プライベートな時間を使え。バルトだから何もないとは思うが一応な」
「わかりました」
僕はダリオンに申し訳程度の会釈をしてから、今日の任務に向かった。
天候は雨、海はかなりの強風が吹いている。実績が豊富な先輩達は港周辺を巡航する程度で良いが、僕はそうも言っていられない。“おおしけ”なのは決して悪い事だけではない。大半の密猟は誰も居ない海で行われるからだ。
そして、何と言っても今日のバディはキャプテン・セリーナだ。彼女がいれば百人力――と思っていたのだが。
「何か見つけたら教えてくれ。二日酔いで気持ちが悪い……」
そう言って、操縦桿にもたれ掛かるようにして目を閉じてしまった。
これは危機的状況だ。巡視艇のダリウス少尉を呼びつけるか、でも彼は彼で「今日はゆっくり回ろうかな」と言っていたし……どうしよう。
両手を腰に、がっくりと項垂れた瞬間だった。武器や装備を格納する倉庫の扉が「ガタン」と音を立てて開いたのだ。
キャプテンはアテにならないし、僕が戦うしか――
「よっこいしょっと」
「え?」
「よっ、バルト!」
満面の笑みを浮かべて出て来たのは、時の人ダリウスだった。
場所はインヒター王国王都、憲兵団本部。団長のラウル・カスティエは細く冷めたい目を落とした。
「まだ分からない。しかし、これが事実だった場合、我々はどんな手を使ってでも国王を阻止しなくてはならない」
「それでボクにスパイをしろ、と?」
若兵は睨むようにして団長を見上げる。
冗談じゃない。王室の人間をスパイするならまだしも、親友をなんて。
「これも仕事だダリオン。騎士学校時代から仲の良い君なら、何の疑いもされずバルト・クラストを監視できるだろう」
「彼は悪事に手を染めるような男では――」
「それを確かめるのが君の仕事だ。頼んだぞ」
まったく、何もわかっちゃいない。
◇◇◇◇◇
リラさんの裁判から、早くも2ヶ月が経とうとしていた。相も変わらずオーム領は平和そのもの。海洋騎士団のおかげか、海賊の往来も多少は減少しつつあり、僕も多少は貢献している。
未だに警備隊のひと枠は空席のままだが、ダリウス少尉がここ一ヶ月の間に50人もの海賊や密猟者を逮捕しているので、検挙数てきに問題は無いらしい。
僕も頑張らなければと思うのだが、教育期間が終わったので完全に個人戦状態。なかなか成績が伸び悩んでいた。
そんな時、海将が皆を集めた。
「本日の勤務前に新しく入団した者を紹介する」
「王都憲兵団から参りました。ダリオン・エルドリスと申します」
まさかまさかの新入りはダリオンだった。
お忘れの方もいるかもしれないので説明をしよう。彼とは騎士学校時代、寮で同室になったばかりか、何もしていないのに懐かれ、終わってみれば親友になっていた。と、まあ簡単に言えばこんな感じの仲だ。
朝礼が終わった後、僕は一目散に彼に声をかけようとした。しかし、横にいたキャプテンは僕の腕をグッと引き寄せ止めた。
「バルト、今はやめておけ」
いつにもなく真剣な眼差しで僕を見るキャプテン。その理由がわからず首を傾げて見せる。
「周りを見てみろ」
集まった他の団員らは何かぶつぶつと話し、訝しげにダリオンを見ていた。
「ちっ、憲兵団かよ。どうせ監査にでも来たんだろうよ」
後から聞いた話だが、憲兵団出身者はこうなる運命らしい。というのも、騎士団や他の公的機関を取り締まるのが憲兵団の役目だからなのだ。易い規則違反も見逃さず、それを本部に報告されると減給や謹慎などの罰則が与えられる。
「噂には聞いてたけどあそこまで嫌われているとは……」
「話すなら仕事終わりか、プライベートな時間を使え。バルトだから何もないとは思うが一応な」
「わかりました」
僕はダリオンに申し訳程度の会釈をしてから、今日の任務に向かった。
天候は雨、海はかなりの強風が吹いている。実績が豊富な先輩達は港周辺を巡航する程度で良いが、僕はそうも言っていられない。“おおしけ”なのは決して悪い事だけではない。大半の密猟は誰も居ない海で行われるからだ。
そして、何と言っても今日のバディはキャプテン・セリーナだ。彼女がいれば百人力――と思っていたのだが。
「何か見つけたら教えてくれ。二日酔いで気持ちが悪い……」
そう言って、操縦桿にもたれ掛かるようにして目を閉じてしまった。
これは危機的状況だ。巡視艇のダリウス少尉を呼びつけるか、でも彼は彼で「今日はゆっくり回ろうかな」と言っていたし……どうしよう。
両手を腰に、がっくりと項垂れた瞬間だった。武器や装備を格納する倉庫の扉が「ガタン」と音を立てて開いたのだ。
キャプテンはアテにならないし、僕が戦うしか――
「よっこいしょっと」
「え?」
「よっ、バルト!」
満面の笑みを浮かべて出て来たのは、時の人ダリウスだった。
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