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第2章 テラドラックの怒り
第68話 巻き起こる波風
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「えっと、つまり……ひと通りの案内が終わって暇だったから僕らの巡視船に乗り込んだと?」
ダリウスは眩しいくらいの笑みを向けて応えた。いくらなんでも任務中の船に乗り込むのは規則違反――のはずだが。
「どうしても会いたくてね」
彼には関係の無い話のようだ。
幸いにもキャプテンは潰れているし、検挙数も足りていない。この際だから彼の力を借りることにした。
「あ、アレは?!」
「ただの漁船だよ」
「あそこに怪しい人影が!!」
「有名な釣り人だよ。サカワさんって言うんだ」
どうやら、今日の成果もボウズ確定のようだ。
土地勘、いやこの場合は海勘というべきか。彼のソレはなかなかに鈍いようで。
「海の上での仕事は難しいねぇ」
「ダリウス……本当に何をしに来たんだよ」
思わず本音が漏れてしまう。
だが、彼はそれでも楽しそうに荒れた大海原を見回している。まぁ、陸勤務も長くストレスもかかる仕事だっただろうから、息抜きになったのなら良しとしよう。
そんなこんなで結局検挙は無く、時間も良い頃合いだったので本部に帰ろうとした瞬間、またしてもダリウスが何かを見つけたようだった。
「な、なんだアレは……」
先程までとは打って変わって焦りの表情を浮かべるダリウス。その視線の先には、波の谷間から大きな影が今にも海面に身を乗り出そうとしていた。
「下がって、ダリウス!」
海面が大きく盛り上がり、飛沫《しぶき》となって船を襲う。これほどの力《パワー》があるのは魔物しか考えられない。僕はすぐに戦闘体制をとった。
『久方ぶりだなバルトとやら』
音は聞こえていないはずなのに、脳に響くこの感覚。間違いなくあの時に感じたものと同じだった。
それは、魔物の群が海岸を埋め尽くしたあの日、その最奥で状況を見守っていた3体の上位種。
「リヴァイアサン、ですか」
『ああ、その通り。こんな時でなくば姿を現せんからな』
海の神と恐れられ、また讃えられた魔物《リヴァイアサン》は、確かにあの時僕に「貴殿とはまたすぐにでも会うことになろう」と言っていた。だが、再会がこれほどまで早いとは。
「ば、バルト……これは一体?」
「ダリウスも聞いているだろう? 僕が魔物を説得して遠ざけたと」
「あ、あぁ……聞いてはいたけど」
「その時に出会ったリヴァイアサンだ」
さも当然かのように理路整然と話す僕に対し、ダリウスは“開いた口が塞がらない”といった雰囲気だった。
『お友達がいたか。まぁいい。今回は忠告をしに来たのだ』
「忠告、ですか」
『魔物をこの海岸へ誘き寄せ、更に我々までもを召喚した闇魔法使いがこの国にいる』
闇魔法使い――それは、この世界の歴史ではそう古く無い昔に実在した禁じられた魔法を使い、人々を混乱の渦へと堕とした者のことを指す。
「その者がいるという証拠は?」
『無い。しかし、この国の中枢へ侵食を進めているのは確実だ』
“国の中枢”という言葉に、ダリウスは目を見開いた。
「いいや、騙されないぞ魔物め! 我々人類を混乱させようと企んでいるのだろう?!」
「ダリウス……」
「まさか君は信じているわけではないよな。ボクは騎士学校を卒業してから有りとあらゆる国の欠陥を見つけてきた。でも、闇魔法使いの存在なんて一度たりとも聞いたことはない!」
見たこともないほどの剣幕に、僕は少々たじろぎながらも、彼の本質を見てしまった。
きっと、彼がここに来た理由も全て――。
『疑うのは結構だが、これは覆せぬ事実。しかし、その心意気は良しとしよう』
リヴァイアサンは再び海中へ戻らんと波風を立てた。
『再度忠告をする。バルトよ、何者をも信じず、何者をも赦してはならない』
そうして、リヴァイアサンは大きな飛沫となって消えていった。
ダリウスは眩しいくらいの笑みを向けて応えた。いくらなんでも任務中の船に乗り込むのは規則違反――のはずだが。
「どうしても会いたくてね」
彼には関係の無い話のようだ。
幸いにもキャプテンは潰れているし、検挙数も足りていない。この際だから彼の力を借りることにした。
「あ、アレは?!」
「ただの漁船だよ」
「あそこに怪しい人影が!!」
「有名な釣り人だよ。サカワさんって言うんだ」
どうやら、今日の成果もボウズ確定のようだ。
土地勘、いやこの場合は海勘というべきか。彼のソレはなかなかに鈍いようで。
「海の上での仕事は難しいねぇ」
「ダリウス……本当に何をしに来たんだよ」
思わず本音が漏れてしまう。
だが、彼はそれでも楽しそうに荒れた大海原を見回している。まぁ、陸勤務も長くストレスもかかる仕事だっただろうから、息抜きになったのなら良しとしよう。
そんなこんなで結局検挙は無く、時間も良い頃合いだったので本部に帰ろうとした瞬間、またしてもダリウスが何かを見つけたようだった。
「な、なんだアレは……」
先程までとは打って変わって焦りの表情を浮かべるダリウス。その視線の先には、波の谷間から大きな影が今にも海面に身を乗り出そうとしていた。
「下がって、ダリウス!」
海面が大きく盛り上がり、飛沫《しぶき》となって船を襲う。これほどの力《パワー》があるのは魔物しか考えられない。僕はすぐに戦闘体制をとった。
『久方ぶりだなバルトとやら』
音は聞こえていないはずなのに、脳に響くこの感覚。間違いなくあの時に感じたものと同じだった。
それは、魔物の群が海岸を埋め尽くしたあの日、その最奥で状況を見守っていた3体の上位種。
「リヴァイアサン、ですか」
『ああ、その通り。こんな時でなくば姿を現せんからな』
海の神と恐れられ、また讃えられた魔物《リヴァイアサン》は、確かにあの時僕に「貴殿とはまたすぐにでも会うことになろう」と言っていた。だが、再会がこれほどまで早いとは。
「ば、バルト……これは一体?」
「ダリウスも聞いているだろう? 僕が魔物を説得して遠ざけたと」
「あ、あぁ……聞いてはいたけど」
「その時に出会ったリヴァイアサンだ」
さも当然かのように理路整然と話す僕に対し、ダリウスは“開いた口が塞がらない”といった雰囲気だった。
『お友達がいたか。まぁいい。今回は忠告をしに来たのだ』
「忠告、ですか」
『魔物をこの海岸へ誘き寄せ、更に我々までもを召喚した闇魔法使いがこの国にいる』
闇魔法使い――それは、この世界の歴史ではそう古く無い昔に実在した禁じられた魔法を使い、人々を混乱の渦へと堕とした者のことを指す。
「その者がいるという証拠は?」
『無い。しかし、この国の中枢へ侵食を進めているのは確実だ』
“国の中枢”という言葉に、ダリウスは目を見開いた。
「いいや、騙されないぞ魔物め! 我々人類を混乱させようと企んでいるのだろう?!」
「ダリウス……」
「まさか君は信じているわけではないよな。ボクは騎士学校を卒業してから有りとあらゆる国の欠陥を見つけてきた。でも、闇魔法使いの存在なんて一度たりとも聞いたことはない!」
見たこともないほどの剣幕に、僕は少々たじろぎながらも、彼の本質を見てしまった。
きっと、彼がここに来た理由も全て――。
『疑うのは結構だが、これは覆せぬ事実。しかし、その心意気は良しとしよう』
リヴァイアサンは再び海中へ戻らんと波風を立てた。
『再度忠告をする。バルトよ、何者をも信じず、何者をも赦してはならない』
そうして、リヴァイアサンは大きな飛沫となって消えていった。
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