凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜

小林一咲

文字の大きさ
68 / 108
第2章 テラドラックの怒り

第68話 巻き起こる波風

しおりを挟む
「えっと、つまり……ひと通りの案内が終わって暇だったから僕らの巡視船に乗り込んだと?」

 ダリウスは眩しいくらいの笑みを向けて応えた。いくらなんでも任務中の船に乗り込むのは規則違反――のはずだが。

「どうしても会いたくてね」

 彼には関係の無い話のようだ。
 幸いにもキャプテンは潰れているし、検挙数も足りていない。この際だから彼の力を借りることにした。

「あ、アレは?!」
「ただの漁船だよ」

「あそこに怪しい人影が!!」
「有名な釣り人だよ。サカワさんって言うんだ」

 どうやら、今日の成果も確定のようだ。

 土地勘、いやこの場合はというべきか。彼のソレはなかなかに鈍いようで。

「海の上での仕事は難しいねぇ」
「ダリウス……本当に何をしに来たんだよ」

 思わず本音が漏れてしまう。
 だが、彼はそれでも楽しそうに荒れた大海原を見回している。まぁ、陸勤務も長くストレスもかかる仕事だっただろうから、息抜きになったのなら良しとしよう。

 そんなこんなで結局検挙は無く、時間も良い頃合いだったので本部に帰ろうとした瞬間、またしてもダリウスが何かを見つけたようだった。

「な、なんだアレは……」

 先程までとは打って変わって焦りの表情を浮かべるダリウス。その視線の先には、波の谷間から大きな影が今にも海面に身を乗り出そうとしていた。

「下がって、ダリウス!」

 海面が大きく盛り上がり、飛沫《しぶき》となって船を襲う。これほどの力《パワー》があるのは魔物しか考えられない。僕はすぐに戦闘体制をとった。

『久方ぶりだなバルトとやら』
 
 音は聞こえていないはずなのに、脳に響くこの感覚。間違いなくに感じたものと同じだった。

 それは、魔物の群が海岸を埋め尽くしたあの日、その最奥で状況を見守っていた3体の上位種。

「リヴァイアサン、ですか」
『ああ、その通り。こんな時でなくば姿を現せんからな』

 海の神と恐れられ、また讃えられた魔物《リヴァイアサン》は、確かにあの時僕に「貴殿とはまたすぐにでも会うことになろう」と言っていた。だが、再会がこれほどまで早いとは。

「ば、バルト……これは一体?」
「ダリウスも聞いているだろう? 僕が魔物を説得して遠ざけたと」
「あ、あぁ……聞いてはいたけど」
「その時に出会ったリヴァイアサンだ」

 さも当然かのように理路整然と話す僕に対し、ダリウスは“開いた口が塞がらない”といった雰囲気だった。

『お友達がいたか。まぁいい。今回は忠告をしに来たのだ』
「忠告、ですか」
『魔物をこの海岸へ誘き寄せ、更に我々までもを召喚した闇魔法使いがこの国にいる』

 闇魔法使い――それは、この世界の歴史ではそう古く無い昔に実在した禁じられた魔法を使い、人々を混乱の渦へと堕とした者のことを指す。

「その者がいるという証拠は?」
『無い。しかし、この国の中枢へ侵食を進めているのは確実だ』

 “国の中枢”という言葉に、ダリウスは目を見開いた。

「いいや、騙されないぞ魔物め! 我々人類を混乱させようと企んでいるのだろう?!」
「ダリウス……」

「まさか君は信じているわけではないよな。ボクは騎士学校を卒業してから有りとあらゆる国の欠陥を見つけてきた。でも、闇魔法使いの存在なんて一度たりとも聞いたことはない!」

 見たこともないほどの剣幕に、僕は少々たじろぎながらも、彼の本質を見てしまった。

 きっと、彼がここに来た理由も全て――。

『疑うのは結構だが、これは覆せぬ事実。しかし、その心意気は良しとしよう』

 リヴァイアサンは再び海中へ戻らんと波風を立てた。

『再度忠告をする。バルトよ、何者をも信じず、何者をも赦してはならない』

 そうして、リヴァイアサンは大きな飛沫となって消えていった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...