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半年前、奈月は事故で死に、私は人生のすべてを失った。東京の喧騒も、原稿の締め切りも、意味をなさなくなった。
――だから逃げ出した、ロンドンへ。
文字数 6,740
最終更新日 2025.06.04
登録日 2025.06.04
児童相談所に配属された新人職員・岸本梓は、「子どもを守る」理想に胸を抱いて働きはじめた。
しかし現実は、書類に押しつぶされる日々、援助金のための数字合わせ、そして目の前の子どもたちがまるで“案件”のように扱われていく現場だった。
そんなある日、梓のもとに保護されたのは、柴田翔という無表情な少年。
彼は口をきかず、誰にも心を開かず、ただ古びた童謡を小声で歌っていた。
「ことりは とっても うたがすき……」
その声は、箱の中で息絶えようとする、かすかな命の声だった。
翔を助けたい。そう願えば願うほど、梓は自分の心の深いところが軋むのを感じはじめる。
「小鳥」とは、翔のことなのか? それとも――
社会の網目から零れ落ちた子どもたち。
その子どもを受け止めるはずだった“箱”は、誰を守り、誰を殺すのか。
静かな暴力と、見えない破壊が交錯する、現代社会の深層。
現場の沈黙を描く、壊れていく“心”のドキュメンタリー文学。
「助けたい」と思ったその瞬間、誰よりも脆く壊れていくのは、私自身だった
文字数 3,711
最終更新日 2025.05.31
登録日 2025.05.31
「普通がいちばん」と教え込まれてきた佐藤啓二は、日本の平均寿命である81歳で平凡な一生を終えた。
死因は癌だった。
癌による全死亡者を占める割合は24.6パーセントと第一位である。
そんな彼にも唯一「普通では無いこと」が起きた。
死後の世界へ導かれ、女神の御前にやってくると突然異世界への転生を言い渡される。
それも生前の魂、記憶や未来の可能性すらも次の世界へと引き継ぐと言うのだ。
啓二は前世でもそれなりにアニメや漫画を嗜んでいたが、こんな展開には覚えがない。
挙げ句の果てには「質問は一切受け付けない」と言われる始末で、あれよあれよという間に異世界へと転生を果たしたのだった。
インヒター王国の外、漁業が盛んな街オームで平凡な家庭に産まれ落ちた啓二は『バルト・クラスト』という新しい名を受けた。
そうして、しばらく経った頃に自身の平凡すぎるステータスとおかしなスキルがある事に気がつく――。
これはある平凡すぎる男が異世界へ転生し、その普通で非凡な力で人生を謳歌する物語である。
文字数 116,770
最終更新日 2025.05.30
登録日 2024.06.10
大手広告代理店に内定した主人公は、かつて夢見た「安定した将来」を手に入れたはずだった。しかし、その実態は、人員削減とAIへの置き換えが進む企業の最前線。配属予定のAIクリエイター部門は、人間の感性を教える名目で、若手を“教師”として搾取するだけの空虚な部署だった。
一方、政界では「新しい資本主義」や「未来投資強化月間」といったスローガンが繰り返され、テレビもネットも「夢と希望」で溢れている。だが、現実は物価高、就職難、そして漂う無力感。内定式で交わされる空虚な祝辞、駅前で叫ばれる熱のない演説、テレビに映る綺麗事の数々——それらはまるで、絵に描いた餅のように、人々の空腹を満たすことはない。
母と食べる夕食、友人との冗談、SNSの皮肉めいた呟き。その一つ一つが、未来を信じたいという微かな願いと、信じきれない現実の狭間で揺れている。
社会のなかで“夢”を売り買いする時代。果たして私たちは、何を信じて生きていけばいいのか。
『絵に描いた餅』は、現代日本に生きる若者の目を通して、政治、経済、働き方、そして「夢」という言葉の空虚さと重さを描き出す、風刺的現代短編。現代の"希望"が、どれほど儚く脆いものであるかを、静かに、そして鋭く突きつける。
文字数 1,431
最終更新日 2025.04.17
登録日 2025.04.17
坂本 湊(さかもと みなと) —— 35歳、日本人の旅人。
かつての旅で出会った友人・ルカに会うため、十年ぶりにフランス・パリを訪れる。
かつては旅を愛し、世界を巡ったが、今では日常に埋もれ、旅の記憶も遠いものとなっていた。
文字数 1,268
最終更新日 2025.03.15
登録日 2025.03.15
町の片隅にある小さな料理店に、それぞれ悩みを抱えた人がやって来る。
美味しそうな料理と、店主の感情にも注目です!
文字数 7,899
最終更新日 2023.04.07
登録日 2023.04.01
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