髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

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3章 大学入学編

鷲尾の家族に乾杯 1

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 桃ちゃんとの撮影が終わり、TwitterとInstagramのフォロワーが500万人を超えた頃。
 俺は『鷲尾の家族に乾杯』の撮影を行うため、京都に来ていた。

「凛さん。今日の撮影は知っての通り、ぶっつけ本番の旅番組です」

 矢上さんが簡単に今回の収録の説明をする。

 『鷲尾の家族に乾杯』とは、司会の鷲尾達夫さんとゲストの人が地元の人々と触れ合いながら旅をしていく台本なしの旅番組だ。

「詳しくは凛さんを出演を依頼した国枝和樹くにえだかずきさんに聞いてください」
「えっ!国枝さんが俺に依頼したんですか!?」

 国枝和樹さんはディレクターとして昔から活躍している方で、俺が子役として活動している時から面識があり、様々なテレビ番組で一緒に仕事をしていた。

(『読モ』の表紙を飾っただけの男に台本なしの旅番組を依頼する人って誰だろうと思ってたが、国枝さんだったのか)

 そんなことを思っていると、50代くらいの小太りな男性から話しかけられる。

「久しぶりだな!凛くん!」
「あ、はいっ!お久しぶりです!国枝さん!」

 そう言って俺は国枝さんと握手をする。

「まずは復帰おめでとう!凛くんが復帰するのを心待ちにしてたぞ!」
「ありがとうございます!」

 国枝さんも俺の復帰を待ってくれたんだと思い、嬉しい気持ちとなる。

「いやー、巷で噂の『読モ』の表紙が凛くんだった時は目を見開いて驚いたよ。『夏目レンが載ってる!』ってね」
「さすが国枝さんです。表紙を見ただけで俺が夏目レンだと気づいたんですね」
「当たり前だろ。何年間、凛くんと仕事してきたと思ってるんだ」

 そう言って笑った国枝さんが、突然顎に手を当てて真面目な顔となる。

「それにしても将来はイケメン俳優になると思ってが、まさかここまでイケメンになるとは……」

 ジーッと俺の事を国枝さんが見つめる。
 そんな視線に耐えれなくなった俺は話題を変えるため、国枝さんに感謝を伝える。

「きょ、今日は俺に依頼していただき、ありがとうございます」
「ははっ、気にするな。凛くんなら高視聴率を取れると思ったからオファーしただけだ。それに、台本なしの旅番組でも持ち前のイケメン力でなんとかしてくれるだろ?」
「も、持ち前のイケメン力というのは分かりませんが、旅番組なら何度も経験がありますから」

 子役時代に旅番組は何度も出演したことがある。
 その辺りも俺に依頼した理由の一つだと思っている。

 そんな会話をしていると、前方からテレビで何度も見かける鷲尾さんが近づいてくる。

「やぁ、君が夏目レンとして活躍してた夏目くんだね?」
「あ、はいっ!今日はよろしくお願いします!」

 突然、鷲尾さんから声をかけられた俺はビクッとなりつつも挨拶をする。

 鷲尾さんは現在70歳を超えており、若い頃から俳優や歌手として活躍された有名人。
 そんな人と共演できることに緊張してしまう。

「そんなに緊張しなくていいよ。今日は一緒に番組を盛り上げようね」
「はいっ!」

 鷲尾さんは俺と握手をしてから他のスタッフのもとへと移動する。

「さすがの凛くんも鷲尾さんの前ではガチガチだな」
「当たり前ですよ!誰もが知る有名人ですから!」
「ははっ!それもそうだな!」

 そう言って笑いながら俺に一枚の紙を渡す。

「これが今日の撮影スケジュールだ。基本的に好きなように動いてもらうから指示はないが、注意点はいくつか存在する。その紙に書いてあることは注意してくれ」
「分かりました!」

 俺の返事を聞いた国枝さんが別の場所へ移動する。
 その後ろ姿を眺めた後、俺はもらった紙に目を通して収録開始を待った。



 収録が始まり、カメラが回り出す。

「始まりました。鷲尾の家族に乾杯。今日は京都の街を旅しようと思います」

 鷲尾さんがカメラに向けて話し出す。

「そして今日、一緒に旅をされるゲストは6年前まで天才子役として活躍された夏目凛さんです」
「よろしくお願いしまーす!」

 鷲尾さんに紹介された俺はカメラに向けて挨拶をする。

「今日は京都の街での収録となりますが、夏目くんは京都に来たことありますか?」
「そうですね。ドラマの撮影で何度も来たことはあります。ですが観光はしたことないんですよ」
「なるほど。なら、今日は京都の街を楽しみながら色んな方たちと触れ合ってくださいね」
「はいっ!」

 俺は元気に返事をする。
 その後も鷲尾さんと軽快なトークを繰り広げ…

「じゃあ、良い旅を」
「はいっ!楽しんできます!」

 俺は鷲尾さんと別れ、数人のスタッフと街へ歩き出した。
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