髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部

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2章 芸能界デビュー編

『モリトーク』の撮影という名の修羅場 1

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 『モリタの秘境巡り』の収録が終わった翌週。
 俺は『モリトーク』収録のため、神里さんの運転で収録現場に向かっていた。

「お兄ちゃんの収録が見学できるなんて夢みたいだよ!」

 俺の隣に座る紫乃がワクワクといった様子で発言する。
 今回の収録を紫乃が見学したいと言ったため、神里さんを通して江本さんに許可をもらった。

「しかも生でモリタさんや萌絵ちゃん、愛華ちゃんにも会える!昨日は楽しみすぎて寝付けなかったよ!」

 と言っているが紫乃の目元にクマなどなく、いつも通り可愛い顔をしている。

「そういえば大学での反響はどうでしたか?」
「………講義を受けるのが難しいくらい大変な目に遭いました」

 俺は今日までの1週間を振り返る。
 俺に声をかけてくれる女子大生が増え、身動きが取れなくなることが頻回に起こった。
 講義を遅刻することはなかったが毎回遅刻ギリギリの着席となっており、いつも以上に疲れた。

「でもやっぱり嬉しいです。応援してくれる人がいるってことは」

 大変な大学生活だったが嫌な気持ちにはならず、余計頑張ろうと思えた。

「今日の収録も頑張ってくださいね」
「はいっ!」

 神里さんから励ましの言葉をもらい、俺は気合を入れた。



 収録場所に到着する。
 今日も江本さんがプロデューサーとなっているため、スタッフに挨拶をしつつ江本さんのもとへ向かう。
 ちなみに神里さんはやる事があるらしく、到着早々別行動となったため、紫乃を引き連れて歩く。
 その道中、芸能界で活躍してもおかしくないくらい可愛い紫乃が俺の隣を歩いているため、いつも以上に注目を集めていた。

「目立ってるね~。さすがお兄ちゃん」
「紫乃が隣にいるからだろ。いつもはこんなに注目されないぞ」

 しかも今日はいつも以上に男性スタッフの視線が多い気がする。

(街中を歩けば10人中10人が2度見するレベルの美少女だからなぁ。注目されるのも無理ないか)

 そんなことを思いつつスタッフたちへ挨拶をした俺は、江本さんのもとへ向かう。

「お、来たか、クロくん」
「おはよう、黒羽くん」
「「おはようございます!」」

 江本さんのもとへ向かうとモリタさんもいたため、俺と紫乃は2人へ挨拶をする。

「今日もよろしくな」
「黒羽くんとの仕事、楽しみにしてたよ」
「頑張ります!」

 前回の収録のおかげで程よい緊張感で臨むことができており、2人と問題なく会話できる。

「今日は妹の見学を許可していただき、ありがとうございます」
「気にするな。俺が白哉さんの娘さんに会ってみたかったからな」
「「ありがとうございます」」

 そう言って俺と紫乃は頭を下げる。
 その後、紫乃を交えた4人で他愛のない話をすると「おはようございます!」という声が聞こえてきた。

「お、萌絵さんが来たようだ」

 江本さんの発言を聞き、俺も声のした方を向く。
 そこには大人気ソロアイドル、岩見萌絵がいた。

 俺と同い年でプラチナブロンドの髪をツインテールに結んだ美少女。
 可愛らしい笑顔と踊った時に揺れまくる巨乳が特徴的で、小学生の頃は同じボイトレ教室に通っていた。
 昔はとあるアイドルグループに所属していたが、今はソロアイドルとして活動しており、アイドル業界では今現在、1番の人気を誇っている。

「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」

 俺たちのもとへ来た萌絵が元気よく挨拶をする。
 そして俺を見て眩しい笑顔を向けた。

「クロくん、久しぶりっ!」
「あぁ。久しぶりだな、萌絵」

 7年ぶりの再会なので俺のことを忘れているかもしれないと思っていたが、しっかりと俺のことを覚えているようだ。

「クロくんとの仕事、すっごく楽しみにしてたんだ!」
「俺も萌絵との仕事は楽しみにしてたぞ」
「ほんと!?嬉しいよっ!」

 そう言って可愛い笑顔を向ける。

「っ!」

 その笑顔に俺の心臓は“ドキッ”と跳ねる。

(その笑顔は反則だろ……)

 大人気アイドルである萌絵の笑顔に見惚れてしまい、萌絵から目を離せない。
 すると突然可愛い笑顔が曇り、不安そうな表情で萌絵が口を開く。

「そ、それで1つ聞きたいんだけど……ク、クロくんの隣にいる女の子は誰なの?」
「あ、あぁ、紹介してなかったな。妹の紫乃だ。双子だから歳は萌絵と同じだぞ」
「お兄ちゃんの妹の紫乃です!よろしくね、萌絵ちゃん!」

 萌絵に負けないくらい可愛い笑顔を見せる紫乃。

「クロくんの妹……良かったぁ……」

 そう言って安堵の表情をした萌絵が笑顔を見せる。

「よろしくね、紫乃ちゃん!」
「うんっ!」

 同い年ということで波長が合うのか、2人は仲良く話し始める。
 そんな萌絵にモリタさんが話しかける。

「いつも以上に楽しそうだね、萌絵さん」
「そっ、そうでしょうか?」

 モリタさんの指摘にどもりながら返答する萌絵。

「あぁ。何となく理由は分かるけどね」

 そう言ってチラッとモリタさんが俺を見る。

「………?」

 その様子に俺は首を傾げるが、モリタさんは俺の反応をスルーして話を続ける。

「2人は小学生の頃に通ってたボイトレ教室が同じだったんだね」
「はい。そこで萌絵と知り合いました」

 出会った頃はすでに萌絵は小学生で結成されたアイドルグループのメンバーとしてデビューしており、何度か萌絵が出演する歌番組の収録を見学したことがある。

(そういえばモリタさんが司会を務める歌番組の収録を終えた時に「アイドルを辞める!」とか言ってたなぁ。あの時は萌絵の歌う姿を見て感動したから辞めないよう説得したけど)

 その時の光景が蘇る。


『日に日に上達する萌絵を見て俺は歌のレッスンを頑張ろうと思った。きっと「家で努力してるんだ。俺も頑張らないと」と毎日のように思わされた。だから誰も私を見てないとか言うなよ。俺は萌絵の歌や踊りが大好きなんだからさ』


 今では恥ずかしくて堂々と言えないが、俺の言葉を聞いて萌絵は引退を撤回してくれた。

(懐かしい。あの時は俺も萌絵の努力に負けないよう歌の練習を頑張ってたなぁ)

 モリタさんと萌絵が揃ったことで懐かしい記憶を思い出した。
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