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追い打ち
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「ミズハラって、うちの子会社のか」
「そうです。冷凍食品の製造販売会社です」
甲斐が持参した書類を、利希は信じられないという顔で確認した。
「事前にわからなかったのか」
「芳しくない報告は受けていましたが、倒産は予想外でした。そもそもの原因は半年前に潰れた△△スーパーの売掛金を、与信枠ぎりぎりまで待った挙句、回収できなかったことです。しかし、これほどの影響があったとは……」
「何てことだ」
深刻なやり取りを見た壮二が、希美に小声で質問する。
「倒産した子会社の債務も、親会社が持つんですか?」
「ううん、商法では債務を負わないことになってる。でも、ミズハラ食品はノルテフーズのブランド名を借りて商売してるでしょ。つまり、ノルテフーズには名板貸しの責任があるの」
壮二はぴんときたようで、眉間に皺を寄せる。
「……会社法ですか」
これはとんでもない追い打ちだと希美は思った。親会社にどれくらいの責任が課せられるのか不明だが、ノルテフーズにマイナスイメージが付くのは間違いない。
「せっかく前の不祥事から立ち直ろうとしているのに、一体どうなってるんだ」
利希は声を震わせた。甲斐も唇を噛みしめている。
耐えられないほど重苦しい時間が流れていく――
「ノルテフーズの株は、またしても大暴落です。財務部も対策を練りますが、我が社の体力にも限界がありますよ」
甲斐の言葉は、冷たさを含んでいた。
「今回の件、経理をあずかる私もただではすみませんが、社長の経営者としての資質も問われます」
「何だと?」
「社長から従業員まで、大規模なリストラが必要になるでしょう」
利希は立ち上がり、甲斐に詰めよった。
「そんなことを簡単に言うな。私と君が責任を取るのは当然だ。しかし我々の失敗のつけを、従業員に払わせるつもりはない!」
また倒れるのではないかと、希美はハラハラした。薬で血圧を調整しているが、父の体は万全ではない。
「リストラがお嫌なら、別の方法をとるしかありませんね」
「別の方法?」
甲斐が希美に視線を走らせた。
「第2案の復活です」
「な……」
利希が甲斐の襟首に手をかけるのを、壮二が間に入って止めた。
「社長、落ち着いてください。財務部長も」
壮二の手を、甲斐は強く振り払った。切羽詰まった状況となった今、財務部長は穏やかな仮面を脱ぎ捨てている。
「私だって会社を守りたい。苦しいのはあなた方だけじゃないんだ!」
甲斐が出て行くと、利希が頭を抱えた。
希美はかける言葉もなく、それどころか、自分自身が青ざめている。
「希美さん」
支えてくれる壮二に、振り向くことができない。来週は結納式だというのに、どうしてこんなことになるのか。
第2案――それは、グラットンの傘下に入るという提案。
南村社長と希美の政略結婚を意味していた。
「そうです。冷凍食品の製造販売会社です」
甲斐が持参した書類を、利希は信じられないという顔で確認した。
「事前にわからなかったのか」
「芳しくない報告は受けていましたが、倒産は予想外でした。そもそもの原因は半年前に潰れた△△スーパーの売掛金を、与信枠ぎりぎりまで待った挙句、回収できなかったことです。しかし、これほどの影響があったとは……」
「何てことだ」
深刻なやり取りを見た壮二が、希美に小声で質問する。
「倒産した子会社の債務も、親会社が持つんですか?」
「ううん、商法では債務を負わないことになってる。でも、ミズハラ食品はノルテフーズのブランド名を借りて商売してるでしょ。つまり、ノルテフーズには名板貸しの責任があるの」
壮二はぴんときたようで、眉間に皺を寄せる。
「……会社法ですか」
これはとんでもない追い打ちだと希美は思った。親会社にどれくらいの責任が課せられるのか不明だが、ノルテフーズにマイナスイメージが付くのは間違いない。
「せっかく前の不祥事から立ち直ろうとしているのに、一体どうなってるんだ」
利希は声を震わせた。甲斐も唇を噛みしめている。
耐えられないほど重苦しい時間が流れていく――
「ノルテフーズの株は、またしても大暴落です。財務部も対策を練りますが、我が社の体力にも限界がありますよ」
甲斐の言葉は、冷たさを含んでいた。
「今回の件、経理をあずかる私もただではすみませんが、社長の経営者としての資質も問われます」
「何だと?」
「社長から従業員まで、大規模なリストラが必要になるでしょう」
利希は立ち上がり、甲斐に詰めよった。
「そんなことを簡単に言うな。私と君が責任を取るのは当然だ。しかし我々の失敗のつけを、従業員に払わせるつもりはない!」
また倒れるのではないかと、希美はハラハラした。薬で血圧を調整しているが、父の体は万全ではない。
「リストラがお嫌なら、別の方法をとるしかありませんね」
「別の方法?」
甲斐が希美に視線を走らせた。
「第2案の復活です」
「な……」
利希が甲斐の襟首に手をかけるのを、壮二が間に入って止めた。
「社長、落ち着いてください。財務部長も」
壮二の手を、甲斐は強く振り払った。切羽詰まった状況となった今、財務部長は穏やかな仮面を脱ぎ捨てている。
「私だって会社を守りたい。苦しいのはあなた方だけじゃないんだ!」
甲斐が出て行くと、利希が頭を抱えた。
希美はかける言葉もなく、それどころか、自分自身が青ざめている。
「希美さん」
支えてくれる壮二に、振り向くことができない。来週は結納式だというのに、どうしてこんなことになるのか。
第2案――それは、グラットンの傘下に入るという提案。
南村社長と希美の政略結婚を意味していた。
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