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運命の瞬間
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武子が仕事休みの日、壮二はバイト帰りに寛人の車に乗せてもらい、彼らの家を訪ねた。
この前できなかった返事を、あらためてするのだ。
「お嬢様のために、ハイスペックへの道を断ったのかい」
南村壮太との顛末を報告すると、武子は信じられないという顔をした。
だけど、彼女はあきれることなく最後まで話を聞き、壮二の真剣な姿に笑みを浮かべた。
「生活費の援助も受けず、就職の世話にもならない。背水の陣ってわけだね」
「はい」
「生活費を稼ぎながら学校に通うなんて、口で言うほど楽じゃないよ。それを承知で、身体を鍛える覚悟ができてるんだろうね」
「もちろんです」
壮二の本気を確かめるように、武子が見つめてくる。
「ああ、嬉しいね。久々に鍛えがいのある男に出会ったよ。寛人、あんたも協力してよ」
「いいぜ。効果的なトレーニング方法に加えて、生活費を稼ぐコツを伝授してやるよ」
寛人はシャツの袖を捲り、力こぶを見せ付けた。
「アタシは格闘技を教えてやる。身体をいくら鍛えても、戦う術を知らなきゃお嬢様を守れないからね」
何だかすごいことになりそうだ。
張り切る二人を前に、壮二は緊張してきた。だが怖気づくことなく、かえってやる気が湧いてくる。
希美への想いがアドレナリンとなって彼を興奮させていた。
北城希美という女性を一目見た瞬間、壮二の中で劇的な変化が起こった。彼女のことを考えない日はない。突然、目覚めたという感じだ。
壮二はこれまで、まともに恋をしたことがない。クラスで気になる子がいてもさほど執着せず、学校を出たら頭から消えてしまうていどの淡い気持ちだった。
ところが希美は違う。初恋を自覚したあの日から、女神への憧れと情熱は燃え上がるばかり。
そして、男としての強い欲望を感じた。まるで、遅れてきた思春期という状態であり、身体が昂ぶっている。
「ところで壮二、具体的な計画は立ててるのかい?」
「えっ、計画?」
寛人がコーヒーを淹れて、リビングのテーブルに運んでくれた。砂糖を一杯入れてかき混ぜてから、武子が質問を続ける。
「大学を卒業したあとのことさ。普通のサラリーマンになるなら、どこの会社に勤めるとか……」
「ああ、はい。もちろん考えてます」
壮二は明るく答えた。
「僕は、ノルテフーズに就職します。そして、希美さんにプロポーズしてもらえるよう、社内一地味な男を目指すつもりです」
武子はカップを置くと、彼の率直な返答に深くうなずいた。
「正しい目標だね。もともとあんたは派手なタイプじゃないし、存在感の薄さが評判になれば、お嬢様のアンテナに引っかかるだろう。うまくいけば、プロポーズも夢じゃない」
「存在感の薄さが評判になるって、どういうこった」
寛人が面白そうに笑うと、武子がじろりと睨む。彼女は怖いくらい真剣だった。
この前できなかった返事を、あらためてするのだ。
「お嬢様のために、ハイスペックへの道を断ったのかい」
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「はい」
「生活費を稼ぎながら学校に通うなんて、口で言うほど楽じゃないよ。それを承知で、身体を鍛える覚悟ができてるんだろうね」
「もちろんです」
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「いいぜ。効果的なトレーニング方法に加えて、生活費を稼ぐコツを伝授してやるよ」
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「アタシは格闘技を教えてやる。身体をいくら鍛えても、戦う術を知らなきゃお嬢様を守れないからね」
何だかすごいことになりそうだ。
張り切る二人を前に、壮二は緊張してきた。だが怖気づくことなく、かえってやる気が湧いてくる。
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壮二はこれまで、まともに恋をしたことがない。クラスで気になる子がいてもさほど執着せず、学校を出たら頭から消えてしまうていどの淡い気持ちだった。
ところが希美は違う。初恋を自覚したあの日から、女神への憧れと情熱は燃え上がるばかり。
そして、男としての強い欲望を感じた。まるで、遅れてきた思春期という状態であり、身体が昂ぶっている。
「ところで壮二、具体的な計画は立ててるのかい?」
「えっ、計画?」
寛人がコーヒーを淹れて、リビングのテーブルに運んでくれた。砂糖を一杯入れてかき混ぜてから、武子が質問を続ける。
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