夫のつとめ

藤谷 郁

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運命の瞬間

3

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 その後4年間、武子と寛人という最強タッグの力を借りて、壮二はハードな毎日を過ごした。
 勉強も仕事も、理想的な身体作りも手を抜かず、ストイックな生活を続ける。くじけそうになると、北城希美の姿を瞼に映し、やる気を復活させた。
 

 一方、南村壮太は、たびたび父親の仙一に連絡を入れて、壮二の動向を探っていた。
 そして壮二の就職が決まると、かなりのショックを受けた。何しろ、同じ食品会社のノルテフーズである。

 だけど、なぜノルテフーズなのかは、どうしてもわからなかった。

 彼は壮二のことをあきらめきれない。しかし壮二の意思はかたく、壮太からの連絡には一切応じないよう両親に頼んでいた。

 南村壮太と南村壮二は赤の他人。誰に対してもそう答えてくれ――

 壮二の必死な様子に、両親は何も聞かず協力してくれた。
 その両親は、壮二が大学卒業間際に新しい商売を始めて、何とか生活を立て直した。彼らも壮太の援助を受けず、自力で道を開いたのだ。
 南村家はいつしか、壮太と疎遠になった。大学卒業を迎える頃、『お前のことはあきらめたようだ』と、壮二は父親から報告を受けた。


ノルテフーズに無事就職した壮二は、ついに北城希美と再会した。といっても、直接口をきくわけでもなく、同じ会社に通うだけだが……
 美貌の社長令嬢は男女問わず人気で、まさに高嶺の花。ごくたまに廊下ですれ違うと、思わず見つめてしまいそうになる。
 自分を抑えるのが大変だったが、目標達成のために壮二は必死で我慢した。

 営業二課に配属された壮二は、ガチマッチョの堀田課長や、イケメン営業部員の影にひっそりと存在した。
 仕事ぶりは地味で、営業成績は普通並み。皆が面倒がるような小さな得意先を引き受けては、地道に働く毎日。

 付いたあだ名は『営業二課の幻影』――

 不名誉な称号だが、壮二にとってはしてやったり。いずれその"評判"は、希美のもとに届くだろう。

 そして……
 希美に心を奪われたあの日から、8年の歳月が流れた。
 理想の夫の条件を満たし、理想の身体を作り込み、壮二は粘り強く待っていたのだ。その瞬間を――

「あなた、私と結婚しなさい!」

 桜咲く春の日、壮二の運命も花開いた。
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