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あきらめない男
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「必ずあなたを守り、幸せにする。ベタなセリフですが、それが僕の想いのすべて……」
言葉はいらない。希美は愛しい男に、キスで応えた。この温もりさえあればいい。
それだけで、希美は幸せを感じられる。
長い口付けを解くと、二人は見つめ合う。
今すぐ互いを貪りたいが、この場所は愛し合うのに相応しくない。
希美はソファの上にきちんと座り直すと、壮二のシャツや上着を整えてあげた。
仕立ての良いスーツは、彼の逞しい身体にしっくりと似合っている。
「それで、さっきの続き。あなたは南村壮太と赤の他人になったはずなのに、なぜここにいるのかしら。しかも、次期社長として」
希美は何となく察することができた。でも、驚かされたぶん、ちょっぴり意地悪になって彼を責めてみる。
「本当にすみません。びっくりしますよね、こんな展開。僕自身、予想もできなかったんだから」
「南村社長は、あきらめてなかったのね」
「はい」
壮二は今に至る経緯を語った。
「壮太さんは、僕のことをあきらめきれず調査していました。なぜノルテフーズに就職したのか、まずそこから僕の本意を探ることにしたそうです。だけどなかなか答えに辿り着けない。そうこうするうちに、希美さんと僕が付き合っているのがわかった。希美さんはノルテフーズの社長令嬢。つまり会社後継者というのが引っかかったそうで、彼は注意深く動向を見守っていました。もっと突っ込んだ情報が欲しい。そう思った矢先、海山商事がノルテフーズと資本提携すると知ります。その頃海山商事はグラットンに取引を持ちかけていたので、渡りに船というわけですね。彼は行くつもりのなかった細野家のパーティーに、出席することにしました」
希美は、南村壮太とパーティーで出会ったのは偶然だと思っていた。まさか、壮二のことを探る目的で声をかけてきたとは――
「知らなかった。彼はそんなそぶり、ちっとも見せなかったわ」
しかし、よく思い出してみると、気になるところはあった。希美のペアリングを見て険しい表情になり、それから、婚約者がどんな男性なのかと、興味ありげだった。
――北城家のお嬢さんともなれば、さぞかし立派な方をお選びでしょうな
――憎らしいほど素晴らしい女性だな、希美さんは
――案外、とんでもない大物かもしれないぞ
憎らしいというのは、壮二を奪った希美に対する壮太の本音だ。そして、彼に見込まれた壮二は、確かにとんでもない大物だったのだ。
「それで、南村社長は……?」
「希美さんと僕が婚約したと知り、接近する機会を窺っていたそうです」
「ということは、私のお父様に取引話を持ちかけたのも」
「そうです。壮太さんはノルテフーズに、何とかして関わろうとした。僕はもう、気が気じゃなかったですよ」
壮二が、グラットンの話が出るたび落ち着きを失くしたのは、そういうわけだったのだ。
「チャンスはじきに訪れました。SNSの炎上でノルテフーズが経営危機に陥った、その時です。壮太さんは早速戦略を練り上げ、まずはノルテフーズの財務部長に接触。好条件の買収話と、例の手紙を託したんです」
希美は緊張してきた。あの頃の危機感が、リアルに蘇ってくる。
言葉はいらない。希美は愛しい男に、キスで応えた。この温もりさえあればいい。
それだけで、希美は幸せを感じられる。
長い口付けを解くと、二人は見つめ合う。
今すぐ互いを貪りたいが、この場所は愛し合うのに相応しくない。
希美はソファの上にきちんと座り直すと、壮二のシャツや上着を整えてあげた。
仕立ての良いスーツは、彼の逞しい身体にしっくりと似合っている。
「それで、さっきの続き。あなたは南村壮太と赤の他人になったはずなのに、なぜここにいるのかしら。しかも、次期社長として」
希美は何となく察することができた。でも、驚かされたぶん、ちょっぴり意地悪になって彼を責めてみる。
「本当にすみません。びっくりしますよね、こんな展開。僕自身、予想もできなかったんだから」
「南村社長は、あきらめてなかったのね」
「はい」
壮二は今に至る経緯を語った。
「壮太さんは、僕のことをあきらめきれず調査していました。なぜノルテフーズに就職したのか、まずそこから僕の本意を探ることにしたそうです。だけどなかなか答えに辿り着けない。そうこうするうちに、希美さんと僕が付き合っているのがわかった。希美さんはノルテフーズの社長令嬢。つまり会社後継者というのが引っかかったそうで、彼は注意深く動向を見守っていました。もっと突っ込んだ情報が欲しい。そう思った矢先、海山商事がノルテフーズと資本提携すると知ります。その頃海山商事はグラットンに取引を持ちかけていたので、渡りに船というわけですね。彼は行くつもりのなかった細野家のパーティーに、出席することにしました」
希美は、南村壮太とパーティーで出会ったのは偶然だと思っていた。まさか、壮二のことを探る目的で声をかけてきたとは――
「知らなかった。彼はそんなそぶり、ちっとも見せなかったわ」
しかし、よく思い出してみると、気になるところはあった。希美のペアリングを見て険しい表情になり、それから、婚約者がどんな男性なのかと、興味ありげだった。
――北城家のお嬢さんともなれば、さぞかし立派な方をお選びでしょうな
――憎らしいほど素晴らしい女性だな、希美さんは
――案外、とんでもない大物かもしれないぞ
憎らしいというのは、壮二を奪った希美に対する壮太の本音だ。そして、彼に見込まれた壮二は、確かにとんでもない大物だったのだ。
「それで、南村社長は……?」
「希美さんと僕が婚約したと知り、接近する機会を窺っていたそうです」
「ということは、私のお父様に取引話を持ちかけたのも」
「そうです。壮太さんはノルテフーズに、何とかして関わろうとした。僕はもう、気が気じゃなかったですよ」
壮二が、グラットンの話が出るたび落ち着きを失くしたのは、そういうわけだったのだ。
「チャンスはじきに訪れました。SNSの炎上でノルテフーズが経営危機に陥った、その時です。壮太さんは早速戦略を練り上げ、まずはノルテフーズの財務部長に接触。好条件の買収話と、例の手紙を託したんです」
希美は緊張してきた。あの頃の危機感が、リアルに蘇ってくる。
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